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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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冒険者ギルドミスカト支部にて

 俺たちが来るまでにずっと待ちぼうけだったロックとレオはご立腹だった。

 しかし、二人の為に買っておいた串焼きを渡すとたちまち機嫌がよくなった。凄くチョロかった。


 うちのパーティメンバーの約半分がチョロい性格だと判明し先行きが少し不安になったが、気を取り直して冒険者ギルドの建物に入る。

 冒険者ギルドの内装は、ほぼ同じに統一されているので見慣れた景色に少しほっとする。

 安堵しつつ受付で事情を説明すると二階の支部長室へと案内された。


「支部長、例の冒険者の方々をお連れしました」


「どうぞ中へ通して」


 ドアが開けられ部屋の中へ入ると支部長席に四十代くらいの女性が座っていた。リクルートさんと同じ支部長用の制服に身を包んでいて眼鏡をかけている。


「どうも初めまして、ここの冒険者ギルド支部長を務めておりますハル・クラフトと申します。『アーガム諸島』へようこそ」

 

「初めまして、俺たちは――」


 自己紹介を終え握手を交わすとハル支部長と俺たちは来客用ソファへと座り早速本題に入った。……のだが、ハル支部長は両手を合わせて謝って来た。


「本当に申し訳ない。実はあなた方を例の建造物へ案内する事が出来なくなりました」


「ええっ! どうしてですか!?」


「建造物があるのは『アーガム諸島』最南端にある『インスマース』という島なのですが、数日前からそこは立ち入り禁止になってしまったんです。『インスマース島』はディープの居住地になっているのですが彼らが突然我々に敵対行為を取ってきまして、そのため安全面を考慮してそのような処置を取りました」


「ああ……」


 そういう事かぁ。時期的にそれ俺たちが関わっていますわぁ。

 俺たちはディープと対立する事となったジャコブの件についてハル支部長に説明することにした。




「――なるほど。そのような事があったのですね。それはまた災難でしたね」


 話し終えるとハル支部長は苦笑していた。眼鏡をくいっと指で上げて用意された紅茶を飲む。

 ティーカップがテーブルに置かれると話を再開する。


「ははは、そのまあ中々に大変でした。あの、やっぱりこれって大問題ですよね。状況が状況だったとはいえ王国の執政官を手に掛けたんですから」


「そこはあまり深刻に考えなくて大丈夫だと思います。ジャコブ執政官は王都で問題を起こして『カボンバ』に左官された過去を持ち、その後も周囲の冒険者ギルドに圧力をかけるなど問題行為を繰り返していましたから。その処罰の為に近々勇者が派遣されるという噂も聞いていましたし」


「そう言えばウェパルもそんな事を言っていたような……」


 俺がウェパルの名を出すとハル支部長は両手を組んで深刻な表情をした。


「問題はそのウェパルというディープの姫が魔人……それも『アビス』と呼ばれる組織の幹部であったという事実です。これで今回のディープの敵対行為が一時的なものではなく計画的なものであった事が分かりましたから。彼らが支配する海に面した場所では警戒レベルを最大にしないといけませんね。それに……」


「どうかしたんですか?」


「これを機にディープ殲滅の気運が高まっていく事でしょう。近々どこかの国が彼等に対し戦争を仕掛けるはずです」


 随分急な話だ。もう少し様子を見る期間を設けてもよさそうなものなのに。

 俺の困惑した表情から意図を察したアンジェが説明を加えた。


「アラタ様、ディープの問題行為は今に始まった事ではないのです。千年前の魔人戦争の際にもディープは魔人側の味方となって陸上に侵攻しました。その後も彼らは種の保存の為に人間、特にヒューマの女性を好んで襲う行為をしてきました。彼等は基本的にこちらの言葉に耳を貸そうとはしない事からも亜人族ではなく魔物として捉えている人は沢山いるのでしょう」


「そう言えばそうだったな。ディープは同じ種族同士じゃ子供を作れないんだっけか。だから他種族の異性を襲う。その生態系がゴブリンと似てるから海のゴブリンって言われてるんだよね」


 ゴブリンはオスしか生まれないから納得するしかないけど、ディープはちゃんと男性も女性もいるのに何でこんな事になってんだろ。

 ディープのそういう歪な生態系から端を発した行為をよしとする者がいるはずもなく、正当な理由さえあればすぐに絶滅の為に動き出すという訳か。


「そうなるとますます『インスマース島』には行けないな。せっかくここまで来たってのに」


「私たちで島に乗り込んでディープを襲撃するという手もありますが」


 アンジェが顔色一つ変えずしれっと言うと、俺を含む全員が驚きの声を上げる。


「さすがアンジェ、発言が過激だね」


「痛み入ります」


「褒めてないから。……いや、でもどうしようも無ければ見つからないように『インスマース島』に乗り込むのもありかなぁ?」


 目的地への道が閉ざされどうしようかとあれこれ悩んでいるとハル支部長が口を開いた。


「今の情勢では冒険者がディープに挑発行為をするのは避けた方がいいでしょう。下手をすれば冒険者としてのライセンス剥奪という事態にもなりかねませんから。――それに、『インスマース島』に行く方法が全く無いという訳でもないのです」


「本当ですか!」


 まさに暗雲立ち込める空から一筋の光が差し込んだような気分だ。可能性がゼロでないのならその方法にすがるしかない。

 前のめりになってその方法を訊いてみるとハル支部長が続ける。


「皆さんは競魔闘士という催しをご存知ですか?」


「それってポスターに書いてあった……確かレムール祭っていうのをやるんでしたよね。賞金が一千万ゴールドだったはず」


「その通りです。レムール祭に優勝すると他にも報酬があります。一つはここ『ミスカト島』にある一流宿屋のスイートルーム利用パス、そして最後が『アーガム諸島』全島散策許可証です」


 それってつまり言葉の通り『アーガム諸島』内の島を自由に見て回れるという事じゃないか。


「その許可証が手に入れば『インスマース島』に行っても大丈夫なんですか?」


「その通りです。それさえあればディープとの緊張状態にある現状でも『アーガム諸島』に認められた者として問題無く入島できます。それを所有していれば『インスマース島』で何が起きても他国は口を出せないはずです」


 全島散策許可証の効力スゲーな。これ遠回しに島に行ってディープをボコボコにしてもいいよと言われているようなものじゃないか。

 こうなればこの手に乗らないわけにはいかない。やるしかない。皆も頷き同意している。


「レムール祭に出場して優勝すればいいんですよね。他に方法も無さそうだしやってみます」


「……分かりました。それでは詳細を説明します」

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