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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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アーガム諸島到着


 あれから数日が経過し、現在俺たちは『ティターンブリッジ』の中間点に差し掛かっていた。もう少しで異世界人たちが残した建造物がある『アーガム諸島』が見えてくるはずだ。


 『ティターンブリッジ』での旅は非常に平穏だった。どれだけ平和かと言うと魔物とのエンカウントがゼロという一言に尽きる。

 橋の周囲には魔物除けの結界処理が施されていて魔物の方からわざわざ仕掛けてくることは皆無なのである。

 この時点で魔物が跋扈ばっこするこの『ソルシエル』において十分平和だと言えるのに、『ティターンブリッジ』は幅が約一キロメートル、長さが約二千キロメートルで橋の上には町が幾つもある為、立派な生活環境が整っている。


 この橋の上で生活すればするほど、この世界で一番の安住の地なのではないかと思っていたら、実際にこの橋で生まれて生涯を全うする人が結構いる事実を知った。

 俺ぐらいの年齢になると外の世界を知りたいと言って橋から出て行く者もいるのだが、何せ外の世界は魔物がうようよしている危険地帯なので割とすぐに出戻って来るらしい。

 但し『ティターンブリッジ』上に新しく住みたいと思うと、とんでもない金額が必要になるのでここに居を構えているのは先祖代々暮らしている家系だけなのだそうだ。


「この橋で生まれ育った人は人生の勝ち組だな。魔物が出ないから安全だし、仕事も観光業で儲かってるみたいだし。非の打ち所がない」


 俺が羨ましそうにつぶやくとルシアも笑顔で賛同してくれた。


「そうですね。『ティターンブリッジ』に点在する宿屋は何処も掃除が行き届いていてサービスが充実していますし、食事も美味しかったです。元宿屋の従業員としては大変勉強になりました」


「宿屋かぁ。そう言えばマーサさんは元気にしてるかな。あの人の事だから大丈夫だとは思うけど」


「そうですね、マーサさんは元気がモットーの人ですから心配ないと思いますよ」


 『マリク』での日々を思い出しながら装備している軽鎧型ローブ〝ダークブルーヴェル〟に手を添える。

 マーサさんにはローブの他にも色々と世話になりっぱなしだった。落ち着いたらお土産でも持って顔を出してみよう。

 

 歩いていると段々と人が多くなってきた。人気観光地である『アーガム諸島』が近づいてきた証拠だ。

 一部人だかりが出来ており何だろうと思い行ってみると建物の壁に大きなポスターが貼ってある。

 みんなそれを見て喜々としているようだ。近づいて見てみるとポスターには剣を持って走っている人物の絵が描かれていた。


「えーと……『一年に一度の最高のレース、けい魔闘士まとうしレムール祭開催』って書かれてるな。マラソンみたいなものかな? ……って賞金一千万ゴールド!?」


 レースという言葉やら人が走る内容からして最初に頭に浮かんだのはマラソンだ。でもポスターに描かれている人物は剣を持っている。

 ただのマラソンではないという事かな?

 俺が疑問に思っているとトリーシャが知っていたらしく説明してくれた。


「競魔闘士っていうのは言葉の通り魔闘士が走るレースの事よ。『アーガム諸島』で頻繁に行われている人気の催しで、特にこのレムール祭っていうレースは一番大規模で物凄い盛り上がるらしいわ」


「レムール祭……ねぇ。これはトリーシャと何か関係があるのかい?」


「さぁ……。でも『ティターンブリッジ』って私たちの元マスターが作ったらしいし、私たちに関連する言葉がこの辺りの土地に残っていてもおかしくはないわよね」


「なるほど」


 レムールとはトリーシャこと神刀神薙ぎの鎧闘衣マナギア形態の名前だ。それが使われているあたり、かつての異世界人と何かしら関係がありそうだ。

 期待に胸を膨らませながら軽い足取りで先に進んでいくと海上に島々が見えて来た。


「あれが『アーガム諸島』ですね。あそこに元マスター達が残した建造物があるんですね。アラタ様が地球に帰る方法が分かるといいのですが」


 アンジェが微笑みを浮かばせながら俺の顔を覗き込んで来る。

 この旅が始まる前に地球に帰る方法が判明しても当分帰る気はないと伝えてからは安心したようで、基本クールな中に笑顔が多く見られるようになっていた。


「そうだね。その他にも皆の元マスター達が戦後どんな生活をしていたのかも分かるかもしれない。俺としてはそこも楽しみなんだよね」


 そう言って笑っているとセレーネが溜息を吐いて苦笑した。


「あの碌でもない人たちの事ですからどうせ碌でもない事をしていたに違いありませんわ」


「そこまで言うか」


 武器化したアルムスとマスターは意識を共有する。そのアルムスであった彼女たちが満場一致で碌でもないと言う辺り相当変わった人たちだったのだろう。

 それはそれで面白そうではあるのだが。


 更に先に進み島々がある区域に入ると分かれ道が現れた。看板には『この先『ミスカト島』』と書いてある。


「ここを進めば『アーガム諸島』の中心の島である『ミスカト島』に到着するみたいだな」


「リクルートさんの話だと『ミスカト島』の冒険者ギルドに立ち寄って例の建造物まで案内してもらうんだよね。よーし、レッツゴー!」


 ロックとレオが我先にと走って行ってしまった。まあ、目指す場所は一緒なんだし放っておくか。

 周囲を見てみると俺たちと同様に魔闘士らしき人物が多い事に気が付く。

 もしかしてさっきのポスターに書いてあったレムール祭というのに出場するつもりなのだろうか?


 暫く歩くと陸地が見えて来た。


「やっと着いた。ここが『アーガム諸島』の中心『ミスカト島』か」


 周りを見渡すと高級な菓子や衣類、アクセサリーを始めとした如何にも高い品を扱っていそうな店が沢山立っている。

 今まで立ち寄って来た町とは明らかに違う。昔テレビで観た南国リゾートの街並みを思い出す。


「わぁー、どのお店も素敵ですねぇ」


「本当ですわ。あそこに飾ってある服とっても可愛いですわぁ」


 ルシアとセレーネが目をキラキラ輝かせて店を物色している。そういえば、俺の姉さんもショッピングの時には同じ反応をしていたのを思い出す。

 経験上、このままにしておくと長時間のショッピング地獄に発展する危険性がある。そんな事をしていたら日が暮れてしまう。


「あのさ、ルシアにセレーネ。お店に行くのは後にして今は冒険者ギルドに――」


 二人を止めるべく声を掛けようとすると、視界の端でトリーシャがふらふらと勝手に歩いて行く姿が見えた。

 その先にあるのは串焼きの屋台だ。肉を焼く『ジュワァァァ』という音と煙と共に漂って来る匂いが食欲をそそる。

 そう言えばそろそろ昼飯時で腹も空いてきた。あんなのが目の前に現れたら食い意地が張っているトリーシャでなくても吸い寄せられてしまうだろう。

 いや、でもここは我慢だ。しょっぱなからこんな調子でいたら目的地にいつまでたっても到着しない。我慢するんだ!


 それから数時間後、俺たちは目的地の冒険者ギルドミスカト支部前に到着した。

 そこには先行していたロックとレオが待っていたが、俺たちの姿を見ると顔を引きつらせていた。


「お前等……ここに来るまでにどれだけ時間が掛かってんだよ。昼前には『ミスカト島』に入ったはずなのに、もう少ししたら夕方になっちまうぞ」


「オイラ達ずっとここで待ってたんだよ。それなのに自分たちだけで楽しむなんてずるいよー!」


「……ごめんなさい」


 非難されるのも仕方がないと思う。何故ならこの時の俺たちは散々ショッピングを楽しみ大量の買い物袋を抱え、屋台をはしごして食べ歩いた後だったのだから。

 俺の右手には串焼きが握られており、醤油ベースのタレが地面に落ちていった。

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