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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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アストライアの勇者スヴェン③

「ククククッ、誰かと思えばこんな小さなガキが乗り込んで来るとはナ。お前もそこらへんに転がっている兵士と同様に腹に三ツ穴を開けてやル!!」


 ディープが口にした『小さい』という単語に対しスヴェンは身体をピクッと震わせ反応した。


「……俺が小さい……だと? この……半魚人共がよくも言ってくれたな!!」


 次の瞬間、スヴェンを取り囲みつつあったディープの集団が一斉に吹き飛ばされた。

 ある者は甲板に叩き付けられ、ある者は海面に吹き飛ばされ、他にも仲間同士で激しくぶつかりその衝撃で絶命した者もいる。

 そんな敵の死骸を冷たい目で見下ろすスヴェンは掌に魔力を集中し魔法陣を展開すると魔術を行使した。


「……一匹一匹相手をするのも面倒くさい。一網打尽だ――グラビティ!」


 スヴェンが指定した一定範囲内の重力が増加し、範囲内にいたディープ達は立つこともままならず膝を折りそして突っ伏していく。


「皆殺しにすると息巻いていた割にはだらしがない連中だな。これ以上は時間の無駄だ。世界の重みに屈し膝を折り、絶望しながら――圧死しろ!!」


 スヴェンがグラビティのパワーを上げると横たわっていたディープ達は次々に潰れていき、船上にいた敵は全て物言わぬ骸へと変わり果てた。

 

「雑魚共が。残りの敵は……!」


 魔力を張り巡らし周囲の敵の気配を読むとスヴェンはバックステップでその場から離れる。するとさっきまでいた場所の床が破壊され真下から何かが姿を現した。


「やれやれ甲板にいた者は全滅カ。お前は他の兵士共よりも歯ごたえがありそうだナ」


 その者は他のディープよりも身体が一回り以上巨大な個体であった。

 筋肉が膨れ上がり分厚くなったそれはまるで鎧の様であり、対峙する少年とは著しい体格差がある。

 それでもスヴェンは顔色一つ変える事無くマッシブなディープを睨んでいた。


「そういう貴様も他の半魚人共とはレベルが違うようだ。さしずめこの群れを統括するリーダーといった所か?」


「如何にも、俺がこの襲撃部隊のリーダーをしていル。お前には部下を殺した報いを受けてもらうゾ!」


 ディープリーダーは三又の槍を構え魔力を高めていく。そのプレッシャーに『アストライア王国』の兵士たちは震えあがっていた。

 その中にあってスヴェンだけはポーカーフェイスを崩すことなく立っていた。


「ほぅ、大した魔力だな。半魚人でなければ騎士団に欲しいぐらいだ」


「小僧がよく言ウ」


 二人が一触即発の雰囲気になる中、兵士たちの救助を行っていたルイスは沈んだ声で任務が終了した事を告げる。


「スヴェン、出来る限りの事はやったわ。……結局助けられたのは三人だけだった」


「……そうか。ならば元凶を撃つ。力を貸せルイス」


「了解よ、マスター!」


 ルイスの胸元に紫色の紋章が出現し輝き出すとスヴェンはそこに触れ魔力を込める。


「マテリアライズ、聖槍ブリューナク!」


 ルイスの身体は光の粒子となり一本の槍へと変化した。穂先は両刃の剣に近い形状と長さで美しい光沢を見せる。その姿は美術品の如き絢爛けんらんさがあった。

 穂先と柄の接合部では紫色のエナジストが輝き魔力の波動を周囲に放つ。

 その力を感じ取ったディープリーダーは気圧されさっきまでの余裕が表情から消える。


「何だ……この力ハ……!?」


 スヴェンはブリューナクの先端を敵に向けその場から跳び出した。


「貴様に格の違いというものを見せてやる!」


 二人の槍がぶつかり合い火花が散るとそれを皮切りに激しい攻防が始まった。目にも止まらぬ刺突と斬撃の応酬が繰り返され、その余波が木製の船体を傷つけていく。

 だがこの攻防戦は長くは続かず早々に主導権を握ったのはスヴェンであった。


 終始敵の攻撃を華麗に捌きカウンターを次々と叩き込んでいく。一分とかからずディープリーダーの身体はぼろぼろとなり血液が甲板に飛び散った。


「がはっ、強い……強すぎル! このままでハ……」


「言っておくが許しを請おうが貴様の死は確定事項だ。確実に殺す。――元々は貴様等が皆殺しと言って始めた戦いだ。当然自分たちも皆殺しに遭う覚悟はしていたんだろう?」


「な……何を言っテ……」


「戦いにおいて相手の命を奪っていいのは奪われる覚悟のある奴だけだ。その覚悟が無いのなら戦場に出る資格はない!」


 スヴェンの気迫に気圧されたディープリーダーは後ずさりしながら携帯していた小瓶を手に取った。

 小瓶の中には少量の黒い液体が入っており、蓋を外すと躊躇なくそれを口内に流し込む。

 

「ヤツは一体何を飲み込んだんだ? ポーションではないようだが」


『黒い液体の様だったけど。……まさか!?』


 直後、ディープリーダーは身体を激しく痙攣させた。手に持っていた槍と小瓶を握り潰し、元々巨大だった体躯は更に膨れ上がっていく。

 瞬く間に倍近い巨躯になったディープリーダーは眼下にいるスヴェンを見下ろしニヤリと笑った。


『ククククッ、小さい……小さいなァァァァァ。こんなちんけな生物に俺が負ける訳が無イ! 死ねェェェェェェェェェ!!』


 鋭い爪でスヴェンを襲撃するが、その攻撃は目標ではなく船の甲板を斬り裂いた。 

 ジャンプで攻撃を躱したスヴェンはそのまま落下し魔力と力を込めた斬撃をお見舞いする。

 

「ふん、更に化け物らしい姿になったな。……だがっ!」


 ブリューナクによる一撃はディープリーダーの左腕に浅く食い込んだのみで斬り落とすまでには至らなかった。


「なっ……!?」


『馬鹿メ。死ねッ!!』


 予想以上の敵のパワーアップにスヴェンは驚き目を見開く。その直後フリーになっていた右腕のパンチが直撃し、スヴェンは騎士団船の船橋に殴り飛ばされた。

 船橋はその衝撃で半壊し、戦いを見守っていた『アストライア王国』の兵士たちは勇者の敗北と自分たちの死の予感に絶望するのであった。

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