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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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炸裂、斬光白牙

 ジャコブは血しぶきを上げながら海面を転がって行き、避難中の兵士たちから引き離す事ができた。


『へへっ、楽勝だな。ガミジン戦と比べればこんなヤツ大したことないぜ』


『油断するなよ。戦い方が素人だからこそ予想できない攻撃をする時もある』


 ロックの言うように魔物化したとはいえジャコブからは大した強さを感じない。

 しかし、あのウェパルとかいう魔人の血を取り込んで無事だったヤツがこのまま終わるとも考えられない。

 そして、その予感は的中する。


『こんな……所で死んでたまるか! この力で私の邪魔をする者を全て排除し、支配し、我が世の春を築くのだぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 ジャコブは触手を海の中に突っ込むとゴクンゴクンと音を立てて海水を飲み始めた。それに応じてヤツの身体が徐々に巨大化していく。


『おいおい、嘘だろ!? 海水を取り込んで巨大化していくだと。こんなのありかよ!』


『これはまずいよ、ロック。あいつは取り込んだ海水を体内でマナに分解してエネルギー源にしてる。こんな調子でマナを取り込み続けたら手が付けられなくなるよ!』


 ただでさえ魔物と化したジャコブは再生能力や耐久性が高い。その上生命力であるマナが蓄えられ続けたらどうなるか分かったもんじゃない。

 今すぐどうにかしないといけないが、その為にはあの異常な生命力を一気に刈り取らなければならない。つまり超火力でぶっ飛ばす必要がある。

 

『……アンジェ、アレを使うよ』


『アレですね。実戦で使うのはイビルプラント戦以来ですが、今の我々なら問題無く撃てます。あの再生能力を無視して一撃で倒せるはずです』


 俺たちの会話を聞いていたロックとレオが作戦に乗って来た。


『それってお前等が練習していたあの技のことか。確かにあの破壊力ならいけるかもしれないな』


『それならオイラ達は敵の注意を引いておくよ。その間にアラタとアンジェ姉ちゃんは攻撃の準備を』


『了解した。準備が完了したら合図を出すから二人は全速で退避してくれ』


『『了解!』』


 <マナ・ライガー>が膨れ上がって行くジャコブに接近し攻撃を始める。連続パンチやキックを与えていくが、傷ついた箇所は瞬く間に再生されていく。

 更に触手が増殖していき圧倒的な数で<マナ・ライガー>を襲う。その多さに回避しきれずロックは盾防御でやり過ごしていた。

 

 ロック達が時間稼ぎをしてくれている間に俺たちは魔力を練り上げ高めていった。


『アンジェ、最大出力でいくぞ!』


『承りました。リミッター解除、エグゼキューション形態フォームモード黒獅子、発動します』


 <マナ・オライオン>のリミッターが解除され出力が大幅に向上する。

 リアクターが最大稼働する事で体内がオーバーヒート状態になる為、装甲各部が開いて放熱が開始された。

 後頭部で行われる放熱時の光景はまるで赤いタテガミのようであり、前頭部の剣状角は漆黒のオーラに包まれ一回り巨大になった。


『……よし、このパワーなら十分やれる! 闇と光系統の魔力を同時に最大まで引き上げる。はああああああああああああっ!!』


 グランソラスに闇と光の魔力が集中する。

 相反する力が反発し合って魔力コントロールが不安定になるが、これに関しては何度も訓練してきたので以前ほど苦労しなくなった。

 そして、一定値を超えたあたりで反発していた二つの力が混ざり合い膨大な破壊のエネルギーへと変化した。


『魔力値安定を確認。撃てます』


『ロック、こっちの準備は出来たぞ!』


 ジャコブの攻撃を食い止めていた<マナ・ライガー>がその場から急速離脱する。

 それと入れ替わるようにして俺は魔力を極限まで込めた一太刀を振った。


『いっけええええええええ!! 光と闇の必殺闘技――斬光ざんこう白牙びゃくがァァァァァァァァァァァ!!!』


 光と闇の魔力が一体となり純粋な破壊エネルギーと化した斬撃波は巨大な魔物になっていたジャコブに直撃した。

 ヤツの再生速度を凌駕し膨れ上がった身体を斬り裂き消滅させていく。その斬撃の威力はそれだけに止まらず海をも斬り裂いた。

 

『こんな、こんな事があってたまるか! 私は死なん、死なんぞ! 私は……私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ぎゃああああああああああああああ!!!』

 

 白と黒が入り混じった光に抱かれジャコブは絶叫しながら完全に消滅した。

 斬り裂かれた海は傷を癒すようにクレバスになった部分に海水が流れ込んで元の状態へと戻っていった。


『敵の完全消滅を確認。執行形態解除します。――お見事です、アラタ様』


『アンジェのサポートのお陰だよ。斬光白牙……何とかものになったな。技の発動にちょっと時間が掛かるのが難点だけど実戦で十分使えそうだ』


 斬光白牙に関しては魔力コントロールが難しくて、イビルプラント戦以降ずっと訓練していた。

 その甲斐あって魔力コントロールはかなり得意になったので結果的には自分の成長を促すいい機会になったと思う。 

 そしてようやく実戦で使えるレベルになった。俺が使える闘技と魔術の中で最大の破壊力を持つ必殺技がようやく完成したのだ。




「大した威力でしたわね。あの耐久力を無意味なものにする斬撃……見ていて中々痺れる一撃でしたわ」


 声のする方向に目を向けるとそこにはウェパルがいた。

 自分の存在をアピールするかのように海面から高くジャンプし水滴を夕陽の光に反射させながら海にダイブする。

 再び姿を現したのは俺の近くの海面だった。驚いてバックステップで距離を取るとウェパルは唇に白魚のような指を当てて悪戯な笑みを見せつける。


『いつの間に接近したんだ。気配も魔力もまるで感じなかったぞ』


『私の方でも接近を察知できませんでした。敵はそれらを感じさせずに近づく能力に長けていると思われます』


 ガミジンの時は異常な殺気と魔力がだだ漏れになっていたからその存在にすぐに気が付いたけど、ウェパルの場合は姿を見せた瞬間まで全然気が付かなかった

 まるでレーダーをかいくぐって接近する潜水艦のようだ。

 そんな俺の焦りを見透かしたかのようにウェパルは口を開く。


「そんなに焦らなくてもここで取って食べたりはしませんわ。今日はほんの挨拶のようなものです。それと一つ忠告しておこうと思っただけですわ」


『忠告だって?』


「ええ、そうです。あなた方はガミジンを退けましたが、それで十司祭に通用すると思ったら大間違いだと思いまして。ガミジンの長所は無限にアンデッドの兵を作る事が出来るという点です。ですが単体としての実力は十司祭の中でも最弱……それを相手にあなた方は苦戦を強いられた。その意味が分かりますか?」


『……つまり俺たちの力は他の十司祭には通用しないって言いたいのか』


「まあそんなところですわ。……さてと、用事は済みましたのであたくしはこれでお暇させていただきます。それではごきげんよう」


 ウェパルは別れの言葉と同時に人魚の尻尾を翻し海面を叩いた。水しぶきで彼女の姿が遮られたと思ったら次の瞬間にはその場から消えていた。

 

 ウェパルは連戦で消耗していた俺たちを敢えて見逃してこの場から去った。その真意は定かではないが、『アビス』にとって俺たちの存在は脅威とは考えられていないらしい。


『見逃されたか。俺たちは眼中にないって事かな』


『どうやらそのようですね。このお礼は後で何倍にもして返してあげましょう』


『そうだな。とにかく今は漁港に戻ってロッシさん達に事の成り行きを説明しよう』


 クラーケン退治からは始まった戦いは、執政官ジャコブ・ジャーファーの魔物化とその討伐という事態に発展し収束した。

 太陽は水平線に向かって沈みかけており空は綺麗なオレンジ色に染まっている。そんな黄昏時の中、俺たちは漁港へ戻って行った。

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