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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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あたくしの足を舐めなさい

「――舐めなさい。魔人であるあたくしの血液を摂取すれば、人を超えた力を手に入れる事が出来るかもしれませんわよ。普通ならショック死してしまうでしょうけど、あなたの様な内にどす黒いモノを抱えている人であれば魔人に近い存在になれるかもしれない。このまま終わるより自分の可能性に賭けてみません?」


「……本当にこれを飲めば私は強くなれるのか?」


 ジャコブはウェパルの手前まで来るとゆっくりと腰を下ろして跪いた。そして震える手で彼女の足を手に取った。


「全てはあなた次第です。あたくし、これでもあなたを相当買っているんですのよ。紳士気取りの仮面の内に秘めた貪欲な野心と憎悪……十分に魔人の適性があると思いますわ」


 その言葉を聞いたジャコブはウェパルの足の甲を舐め彼女の血液をごくりと喉を鳴らして飲み込んだ。

 するとたちまち一心不乱になって再び足を舐め始める。血液の一滴すら逃すまいと舌を縦横無尽に動かしていく。


「何だこの味は? 美味い、美味すぎる! 今まで味わったどんな料理よりも、どんな美酒よりも美味い。身体に染みわたり細胞の一つ一つが喜んでいるのが分かる! それと同時に快感が全身を貫いていく。これまでに抱いたどんな美女よりも最高の悦楽をもたらしてくれるぅぅぅ!! なんとイウ、素晴ラシい感覚ナノダ。マルデ生マレ変ワッタ様ナ気分ダ!!」


「あらあら、そんなにあたくしの血が気に入りましたの? しょうがないおじ様ですわねぇ」


 ウェパルは桜色に染まった頬に手を添えて自分の足を舐めまわすジャコブを見下ろしていた。

 そこには嫌悪感は無く、まるで愛おしい存在を見るように目を細めている。


 ウェパルの血液を取り込んだジャコブの身体から突然ボコボコと言う音と何かが軋むような音が聞こえて来た。

 それと同時にジャコブの身体が沸騰するように波立ち、煌びやかな服が破けていった。


「何だあれは!?」


「ジャコブ執政官の身体が……変化しているみたいです!」


 ジャコブの生白い肌は深い青色に変化し髪の毛は肌と同じ肌質の触手へと変わっていき、その間も身体が巨大化していく。

 四肢は太くなり所々に魚のひれの様なものが生えていった。

 顔は触手となった毛髪に覆われて見えなくなり、最早頭部全てが触手になっている状況だ。

 身体の表面にはフジツボの様なものがびっしりと固着していて海中生物の雰囲気を醸し出している。

 

 ウェパルの血液を取り込んだ『アストライア王国』の執政官ジャコブ・ジャーファーは一瞬で怪物へと変化した。

 

『ヴウオアアアアアアアアアアアアッ! 殺してやるぞ、小僧どもおおおおおお!!』


 その異形の身体から殺気と魔力をたぎらせジャコブであった魔物は咆哮した。


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」


「し、執政官が魔物になった!?」


 騎士団船にいた兵士たちが魔物になったジャコブに恐れをなし悲鳴を上げ逃げようとする。

 そんな周囲の反応を目の当たりにし、ジャコブは触手を使って自分を身体の変化を確かめ始めた。


『……これは……素晴らしい。素晴らしいぞ、身体の奥底から力が溢れてくる! これならば相手が冒険者だろうが勇者だろうが相手ではない。高潔な存在に生まれ変わった私を化け物呼ばわりするとは……愚か者が!!』


 ジャコブは触手の先から水を噴射すると、それは鎧ごと兵士を貫通した。更に周囲に魔法陣を展開するとハイドロップを大量に発射し船上にいた兵士全てを吹き飛ばした。


『何という力だ。私にこのような力が……!』


 部下であった騎士団の兵士たちを虐殺したジャコブは自分の力に酔いしれるだけで、ついさっきまで部下だった者たちを殺めた事に対し全く動じる気配が無い。


「これは予想以上の成功ですわね。それではあたくしは高みの見物をさせてもらいますわ。さあ、ジャコブさん。生まれ変わったあなたの力をあたくしに見せてくださいまし」


 ジャコブに力を授けたウェパルは微笑みを見せながら騎士団船から飛び降り海中に潜った。彼女の後を追って一緒いたディープ二名も海の中へと姿を消した。

 こうして、この場には変わり果てた姿のジャコブと俺たち、そして海面を漂いながら逃げ惑う騎士団の兵士たちが残った。


「行くぞ、アンジェ! あいつは自分の部下を平気で殺す。急いでこの場から引き剥がさないと被害が増える」


「了解です、アラタ様。こちらの準備は出来ています」


 アンジェの胸元に深紅の紋章が浮かび上がり、俺はそこに手を触れた。


「マテリアライズ――魔剣グランソラス!」


 黒色のオーラに包まれたアンジェは漆黒の魔剣グランソラスへと変身し俺は剣を手に取り魔力を伝わらせる。


『マスターからの魔力伝達確認。リアクター出力上昇――いけます!』


 グランソラスのつばに収められている深紅のエナジストが輝き周囲を淡い光で照らす。俺は漁船から跳び上がり一気にジャコブに接近した。


「一撃で仕留める! 闇の闘技、無影斬むえいざんッ!!」


 グランソラスの刀身から発生した闇の魔力の塊を斬撃波としてジャコブに叩き付けた。直撃した瞬間にヤツの触手が何本も千切れて吹き飛んでいくのが見える。

 無影斬が消えるとジャコブもまたその場から消失していた。


「やったか!?」


『海中より魔力増大反応あり、危険です!』


「ちいっ!!」


 真下からの殺気と魔力を感知し跳び退くと、ついさっきまでいた騎士団船がバラバラに吹き飛び、中から更に巨大化したジャコブが姿を現した。

 その大きさはクラーケンに及ばないまでも感知できる魔力は更に強大なものだった。

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