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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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ウェパルの嘲笑

 崩壊しつつある騎士団船の上にはジャコブを始めとする『アストライア王国』騎士団関係者が何人もいる。

 彼等の直ぐ近くに今しがた海から出て来たディープの三人がいる状況だ。

 その中心にいるディープの少女は何やらジャコブと知り合いの様だが、一体何をしにここに来たんだ?

 嫌な予感しかしないのだが。


「――ところでジャコブさん、この状況をあなたはどうやって収める気ですの? クラーケンを使って遊んでいた事がばれてしまったのでしょう?」


「それは……」


「あたくしがここに来たのは、あなたにお別れを言いに来たからですの。どうやらあなたがこの町でしてきた悪事の数々が王都側に知られたみたいでして、あなたを捕らえよとの命令を受けた勇者がこっちに向かっているらしいですわ」


「なん……ですって!?」


 ジャコブは膝を折って座り込むと両手を地面に付いて身体をわなわな震わせていた。

 意気消沈したジャコブを見つめるディープの少女は目を細めて楽しそうにしている。


「そう言えばあなたは元々王都で色々とやらかして追いやられた過去がありましたわね。それに加えて今回の件――よくて執政官として地位の剥奪、悪ければ……死罪もあり得るでしょうね」


 ジャコブは突っ伏した状態で身体をビクンと震わせるとそのまま泣きわめき出した。その姿を一通り見た後、少女は俺たちの方に視線を向けた。

 魚の尻尾の如き下半身は急速に形を変えヒューマと同様の二本足になった。これで見た目は水着姿のヒューマそのものだ。

 彼女はゆっくりと立ち上がると水色のロングヘアをたなびかせて騎士団船の上から俺たちをじっと見ている。


「クラーケンを倒すなんて中々やりますわね。話に聞いていたより実力があるようですわ」


「そうか、クラーケンはあんたの差し金だったわけか。魔物をペットにするなんてとんでもない事をするもんだ」


 こいつは一体何者だ。今の口ぶりだと以前から俺たちの事を知っていた様な感じだ。まさか――。


「数少ない陸地を様々な生物で住み分けるあなた方と違って、この広大な海は我々ディープが支配しています。海に住まう生物は魔物を含めディープの支配下にあり、それはつまり世界の全生物の多くは我々が支配しているという事に繋がりますわ」


 腰に手を当てながらディープの少女は得意げに世界は自分たちが支配していると豪語している。

 突拍子もない発言に呆然としてしまう。


「これはまたぶっ飛んだ思想の持ち主が現れたわね」


「何だか楽しそうに生きてる人だね」


 トリーシャとレオは乾いた笑いを見せている。そんな俺たちの反応を見て向こうは『やれやれ』と言った感じで首を横に振っていた。


「頭の回転が悪い人たちですわね。まあそれもしょうがないかもしれませんわね。ガミジンを退けて得意になっているような方々ですし」


 相手が聞き覚えのある名前を口にした瞬間、俺たちは思考を一気に戦闘モードに移行した。


「どうもきな臭い殺気を感じると思ったらヤツ等の関係者だったか」


 いつでも戦いに応じる事ができるように構えているとディープの少女はクスクス笑いながら自己紹介を始めた。


「そう言えば、自己紹介がまだでしたわね。あたくしは魔人の軍勢『アビス』、その十司祭の一人ウェパルと申します。以後お見知りおきを」


「十司祭のウェパル……」


 まさかとは思ってはいたが、こんな人魚の姿をした少女が魔人とは信じがたかった。しかも十司祭ってことはガミジンと同レベルの実力者なはずだ。

 どういう手を使ってくるのかは分からないが、先手を打って流れを作りたい。


「……アンジェ、戦いが始まったらグランソラスでいくよ。敵の懐に一気に入って無影斬を叩き込む」


「了解しました。いつでも撃てるように準備をしておきます」


「頼む」


 ウェパルに視線を向けたままアンジェと小声で打ち合わせをする。相手の能力が分からない以上、どんな状況でも対応できるグランソラスが有効だろう。

 睨み合いが暫く続くと、ジャコブが突然立ち上がりふらついた足取りで俺たちの方に歩き始めた。

 目の焦点は合っておらず見るからに様子がおかしい。


「貴様等のせいだ。……貴様等が余計な事をしてくれたお陰で私の計画が……王都に返り咲いて更なる権力を手にするという夢が滅茶苦茶になってしまった」


「あんたみたいなクズの計画が成就されるとは思わないけど、俺たちが関わった事で事前にぶっ壊す事ができたのなら良かったよ。あんたの存在は一般人にとって害でしかないからな!」


「小僧が……! こうなれば貴様等も道連れにしてやるぅ!!」


「あんた一人で何ができるってんだ。逆に逃げられないように捕まえてやる。そして相応しい場所で裁かれろ!」


 ジャコブを取り押さえる為に動き出そうとすると、笑みを浮かべたウェパルが間に入った。

 彼女の意外な行動に俺たちもジャコブも動きを止めてしまう。

 

「ふふふふ、ジャコブさんったら本当に面白い人ですわ。訓練も受けていない人が仮にも魔人を倒した冒険者に勝とうだなんて冗談が過ぎます。……でも、そのやる気を見込んであたくしがチャンスをあげますわ。


 ウェパルは指先に魔力を集中して足の甲を切った。

 彼女は近くに置かれていた箱に座ると脚を組んでジャコブに傷つけた足を差し出す。傷口からは黒色の血液が流れ始めていた。

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