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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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大海の種族ディープ

 ジャコブの腹が立つ物言いにイライラしているとルシアが一歩前に出て睨み合いになった。

 するとジャコブの表情が一変する。笑みは消えて驚いた顔でルシアを見つめていた。


「お前は……いや、あなたはまさか……聖剣ブレイズキャリバー? 数年前に行方不明になった国宝がなぜそのような下賎な者たちと行動を共にしているのですか!?」


「他者をおとしめる発言は感心しませんね、執政官ジャコブ・ジャーファー殿。私はあなたがこの町でしてきた悪行の数々を目の当たりにしてきました。それと『アストライア王国』では国宝級アルムスの意見は執政官以上に重要視されるはず。私がこの件を白日の下に晒せば、如何にあなたと言えど無傷では済まないはずです」


「くっ、私を脅すつもりか? たかがアルムスの分際で生意気な……!!」


「執政官の中にそのような差別的な考えを持っている人がいるのは悲しい事です。だからこそ、私はあそこでは自分の使命を全うできないと思ったのです」


「使命だと? 武器となって他者を傷つける事しか出来ないお前にどんな高尚な目的があるというのかね?」


「あなたの様な悪徳に染まった者からか弱き者を守り、そして世界を混乱に導く魔人を打ち倒すという使命です。あなたにも民衆を守るという義務があったはず。それなのに逆に苦しめるなんて……あなたは最低です!!」


 ルシアの声には怒気がこもっておりジャコブを叱責した後は肩で息をしていた。あの穏やかな彼女がここまで怒るのは珍しい。相当頭に来たのだろう。

 一方、ジャコブは正論を言われて何も言えず額に青筋を立ててこっちを睨んでいた。


 俺はルシアの肩に手を置いて首を横に振った。


「ルシアがこれ以上何を言ったってあのおっさんには響かないよ。君が怒るだけ損だ。俺たちはやるべきことをやったんだし先に進もう。騎士団は放っておけばそのうち救助がくるだろうし」


「アラタさん……ごめんなさい、見苦しいところを見せてしまって」


「見苦しいことなんてないよ。真剣だからこそ怒ったんだろ。それは俺も含め皆分かってるから大丈夫」


 ルシアがおずおずと皆の方を見ると全員頷いており彼女は安堵の表情を見せる。

 一件落着したところで踵を返しここから去ろうとすると、今度はジャコブではなく若い女性の笑い声が聞こえて来た。


「うふふふふ、さしもの執政官もあそこまで正論を言われては反論できなかったみたいですわね」


「誰だ!?」


 それは不思議な声で自然と聞き入ってしまうような魅力を持っていた。

 その美声にそこはかとない危機感を覚えつつ周囲を見回すと声の主はジャコブのいる半壊した騎士団船の近くに姿を現した。

 海の中から現れた少女は濡れた長い髪をやんわりと手でかきあげながら騎士団船に乗り上げる。

 

 その姿の全貌を目の当たりにして俺は驚きの声を上げてしまった。

 なぜなら少女は上半身は胸の部分に布面積の少ない水着のような物を身に着けているのだが、下半身は魚の尻尾のような形になっていたからだ。


「あれは人魚じゃないの?」


「アラタ様、あれは亜人族の一種のディープです。普段は海の中で生活していて、海の支配者と言われる種族です。あのように見た目は美しいですがディープは基本的に残忍な性格をしていて大変危険です。それと余談ですがディープは海のゴブリンとも言われています」


「説明ありがとう、アンジェ。ところでなんでまたディープはゴブリンと比較されてんの?」


「ゴブリンと似た生態系を有しているからです。ゴブリンはオスしかおらず子孫存続の為には人間の女性を必要とします。一方、ディープは女性と男性がいますが同種族同士では子孫を残すことが出来ません。それ故、それぞれ他種族の異性を拉致し無理矢理交配するという手段を取ります」


「なるほど理解した。めちゃくちゃヤバい種族じゃないか。確かに海のゴブリンという二つ名に相応しい行動だな」

 

「その通りです。ちなみにゴブリンもディープも大変な性欲旺盛で知られています。アラタ様の劣化版ですね」


「……俺を魔物と一緒のくくりで比較しないで」


 俺たちの話が聞こえていたのか、ディープの少女は明らかに不機嫌な表情で俺とアンジェを見つめ口を開いた。


「随分と失礼な方々ですわね。ディープを魔物扱いするなんて」


 確かに思わずディープをゴブリンと同じ様に言っていた。謝ろうかと思った時、海の中から騎士団船に二体の怪物が乗船した。

 見た目は四肢があり人間と同じなのだが皮膚は鱗に覆われていて手や脚にはひれが生えている。

 それに首の辺りにはえらのようなものがあり、呼吸をするように小さく開いたり閉じたりしている。

 何より特徴的なのはその頭部だ。形は魚の頭そのもので大きく黄色い目はギョロリと周囲を見回していて大変不気味だ。


「また何か出て来たぞ。今度は半魚人……かな?」


「あれがディープの男性です」


「はぁぁぁ!? 男と女で見た目が全然違うじゃないか。こんな事言うのは失礼だと思うけど、ディープの男は魔物感ハンパないな」


「実際のところ、海の中で生活しているディープは他種族との交流がほとんどない事もあってか知性が低い傾向があります。その点も大体ゴブリンと同レベルと言われていますね」


 この状況下において喉元まで出かかっていた謝罪の言葉を俺は無意識に飲み込んだ。

 だって、ディープは知れば知るほど魔物臭を凄く感じるんだよ。あれはもう魔物そのものと言って差し支えないのではないだろうか。申し訳ないけど。

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