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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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クラーケン討伐開始

「とうとう現れやがったな! しかし騎士団の連中はどうする? 結構な人数が海に投げ出されたようだが」


 ロックが指さす先には真っ二つになった船から海に落ちた騎士団の人々がもがいている姿が見える。

 船の素材である木の板に掴まって浮いている者も何人もいる。


「あの人たちは民衆を救う為に普段から鍛えているんだから大丈夫だよ。自分の事は自分で何とかするだろ。――それにこんな冴えない冒険者に助けられたとあっちゃ彼等のプライドが傷つくだろうし」


「……お前……さっき言われたこと根に持ってんだろ」


『このご主人様は本当に人として器が小さい男ですわね』


 皮肉たっぷりに言ってやるとロックは呆れた顔で俺を見ていた。武器形態のセレーネからもロックと同じく呆れたという感情が流れてくる。


 ああそうですよ、そうですともさ。さっき人の事を散々嘲笑った連中ですよ。冴えないって言葉を何度も何度も復唱してくれたアホ共ですよ。

 おまけに俺を殺しても構わないとか言ってたし。

 相手が一般市民だったならどうするか少しは悩んだだろうけど、向こうは騎士団の人たちだからね。放っておこうそうしよう。


「騎士団を放っておくのは確かに私情もあるけど実際問題構っていられないってのが本音だよ。目の前で敵にあんなに暴れられたら被害が増える一方だからな」


 現在進行形でクラーケンは騎士団船を攻撃し続けている。真っ二つにされた船体の後方側に取りつき巨大な触手のような足で羽交い絞めにして砕いている。

 このままあいつを野放しにしておけば騎士団船はものの数分で完全破壊されるだろう。


「確かにアラタの言う通りね。ここは救助に回るよりも元凶の息の根を止めた方が被害拡大を抑えることになるわ。本人の小物臭は置いておくとして、ね」


「……悪かったな小物で。俺は無理して大物気取りをするぐらいなら自分に正直に生きると決めたの」


「はいはい、分かったわよ。それじゃさっさとクラーケンを倒しましょう。騎士団が囮になってくれてるお陰でこっちの被害は今のところ無いし絶好のチャンスだわ!」


 そう言うトリーシャの目に曇りは無く後ろめたさのかけらも無い。悪びれる様子も無く騎士団をまき餌にする割り切り方は凄い。


「……よし! 色々とイレギュラーはあったけど、ここからは作戦通りにクラーケン討伐を開始する。敵は今騎士団船に取りついてるから、そこを足場にさせてもらおう」


 皆が頷き漁船から一斉に飛び降り既にボロボロの騎士団船に乗り移る。

 そこにはクラーケンと真っ向勝負をしようとする兵士はおらず、どいつもこいつも我先にと逃げ出している有様だった。

 その様子を見て正直呆れた。民衆を守るはずの騎士団がその役目を果たそうとせず、いざ魔物が出現したらまともに戦おうともしない。


 はっきり言ってこんな連中が魔人と戦えるわけがない。こうなって来るとやっぱり俺たちが頑張ってあの怪物共とやり合わないといけないのかなぁ。

 不幸な未来を想像し辟易していると巨大なイカ足が船底を突き破って来た。その穴から浸水してきたのを見てアンジェが冷静に状況分析する。


「この調子ですと、船はそう長く持ちませんね。早急に倒す必要がありそうです」


「確かにあまり時間はかけていられないな」


「それならまずは俺たちが行くぜ!」


 言うと同時にロックが巨大足に向かって行き拳を叩き込んだ。衝撃で足は海面に一旦倒れ込むがすぐに起き上がり反撃してくる。

 敵の怒りを買ったようで数本の足がロックを狙い、その猛攻を回避と盾防御で捌いている。


「敵は軟体生物……どうやら打撃系の攻撃はあまり効かないようですね」


「それなら斬撃や魔術で対処するしかない。ロックはそのまま敵の注意を引き付けてくれ。その間に俺たちでダメージを与える」


「分かった。なるべく早くしてくれよ」


 ロックが回避に専念し敵のヘイトを集めている中、俺たちは攻撃を開始した。

 アンジェはシャドーダガーで中距離から援護、トリーシャはインビジブルスピアで斬り込み、ルシアもフレイムソードで接近戦を仕掛ける。

 

「こっちも行くよ!」


『合点承知ですわ!』


 ドラグネスに魔力を送り込むとエナジストが青く光り、刀身を氷の刃であるアイシクルブレードが包み込み氷の大剣へと姿を変える。

 氷の衣を纏ったドラグネスで近くの巨大足を斬り落とす。切り口は凍りついたが本体側の残った足がピクピクと微妙に動いているのが気持ち悪い。

 他のみんなも次々に巨大イカ足を斬り落とし、見るからにこっちが優勢だ。


 その時海面の一部が大きく盛り上がり中からクラーケンが顔を出した。その姿はまさに巨大なイカそのものだ。

 大きな目で俺たちを見下ろし敵意を向けているのが分かる。


『クラーケンの体内で魔力増大を確認。何か仕掛けて来るつもりですわ』


「了解、注意するよ」


 クラーケンは海中から新たに数本の足を出すとその周りに幾つもの魔法陣を形成する。間もなく魔力が充填され魔法陣が淡く輝き始めた。


「こいつ、魔術が使えるのか!?」


『――来ますわ!』


 魔法陣から一斉に放たれたのは人の大きさ程の水の玉だった。それが幾つも空中にばら撒かれ俺たちに向かって落下してくる。

 あれに攻撃力があるとは思えないが……。


『いけませんわ! あれの直撃を受けたらヤバいですわ。ここから離れてください!!』


 セレーネが切羽詰まった感じで忠告したので俺たちは急いで水玉から距離を取る。そして船体に落下した瞬間、水玉の群れは連続で爆発した。

 爆発に巻き込まれた場所は粉々に粉砕され、細かくなった木片が俺の足元に転がって来る。


「何だあれ、思いっきり爆発したぞ!!」


『今のは水系魔術のハイドロップですわ。一見大きなだけの水玉に見えるのですけど、衝撃を受けると周囲を巻き込む爆発をするんですの』


「それってつまり爆弾と一緒じゃないか! あんなの直撃したらひとたまりもないぞ!!」


 しかもクラーケンはハイドロップを複数同時に発射してくる。連続で爆発に巻き込まれたらさすがに危険だ。

 俺たちならあれを躱せるとしても騎士団の兵士たちは激しく揺れる船上ではまともに身動きが取れない。

 

 どうするか考えあぐねているうちにクラーケンは再び魔法陣を展開する。ハイドロップの第二波が来るまで時間は残されていない。

 

「……あの水爆弾の処理は俺たちがやる。皆はクラーケン本体を攻撃してくれ」


「分かりました。アラタさん、セレーネちゃんよろしくお願いします!」


 ルシア達は崩壊しつつある船体を跳び移りながらクラーケンの頭部に向かって行く。

 俺は頭上から投下準備をしている水爆弾に対処する為に迎撃態勢を整えることにした。

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