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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第六章 ティターンブリッジ

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野心深き執政官

「はぁ~、高純度の魔石は本当に美しいですわねぇ。これが魔物の体内にあった物だなんて信じられませんわ」


「……ウェパル様のお陰でこの地での私の地位は盤石なものになりました。本当に感謝しています。そちらは此度の献上品になります」


「本当にあなたもとんだ悪者ですわね。『アストライア王国』に仕える執政官が魔人、しかも十司祭の一人と裏取引をしているなんて。この事実が知られたら無事では済まないでしょ?」


 ウェパルが魔石を眺めながら悪戯な笑みを浮かべると、それに負けない怪しい笑みをジャコブは見せながら口元で両手を組む。 

 表情こそ笑ってはいたがその目だけは憎悪の炎が燃えていた。


「もし露見するような事があればディープの姫と個人契約をしていたと言うだけです。王都の連中の言い分などいくらでも突っぱねる事は可能ですよ。――ところで現在力を貸していただいているクラーケンなのですが」


「この町の漁船だけを標的にして漁師たちの苦しむ姿を見たい……でしたかしら? あなたの余興に巻き込まれた彼等が哀れで仕方がありませんわね。それで何か変わったことがありましたの?」


「ええ、実は今日この町を訪れた冒険者パーティが漁師に肩入れしてクラーケンを討伐する作戦を立てているようなのです。近くの冒険者ギルドには関わるなと釘を刺しておいたはずなのですが、どうやらその冒険者は個人的に動いているようでして、一応報告しておいた方がいいと思いまして」

 

 ウェパルは「ふぅん」と興味が無さそうに別の魔石を眺めていた。


「全くとんだバカがいたものですよ。その者たちは漁師たちに特に報酬請求をするでもなくほとんど無償で事に当たるようです。そのリーダー格が蒼黒い軽鎧型のローブをまとった若い男だそうです。まあ、青臭いガキの偽善行為といったところでしょうな。ははははは!」


 それまでずっと魔石を弄っていたウェパルの指がぴくっと止まり視線をジャコブの方へと向ける。

 

「……そのパーティには他にどのようなメンバーがいますの?」


「――え? あー、確か他には女が四名、男が二名、いずれも十代半ばから二十代前半ほどの若い連中だということですが、それが何か?」


「……ガミジンの報告にあったメンバーと一致しますわね。ここに来たという事は目的地は、『アーガム諸島』もしくは西大陸に渡るつもりか……何だか楽しくなってきましたわね」


 ウェパルが独り言を言いながらクスクス笑っているのを見てジャコブは困惑を隠せない。

 彼女とは取引相手としてそれなりに長い間関係を持っているが、それでも理解できない部分が多い。


「あ、あの……ウェパル様、その冒険者たちは如何いたしましょうか? 今なら騎士団を動かして捕まえる事も可能ですが……」


「放っておきなさい」


「……え?」


「放っておけと言ったのです。どのみちここの騎士団レベルでどうこう出来る相手ではありませんし、下手に関わるとあなた――身を滅ぼしますわよ?」


 忠告を述べた際に漏れ出たウェパルの魔力によって執務室に飾られていた調度品などが次々に割られていきジャコブを悲鳴を上げながらその場でうずくまった。

 ソファから立ち上がったウェパルはそんな彼を見下ろし最後の忠告をする。


「こうなりたくなかったら大人しくしていた方が身のためですわよ。それと、あたくしこれから忙しくなりそうなので暫くここには来れなさそうです。それではごきげんよう」


 そう言い残すとウェパルは護衛の二人と共に部屋から出て行き、その場には半壊した執務室と床に這いつくばるジャコブだけが取り残されていた。

 驚異の存在である彼女がいなくなったのを確信した後、ジャコブは怒りの形相で拳を床に思い切り叩きつける。


「くそっ! どいつもこいつも俺を見下しやがって!! ……ふん、まあいいさ。既に俺の地位は揺るがない。金もある権威もある。俺の支配する町でたかが冒険者風情に好き勝手にやらせるものか。見ていろよ小娘、お前など既に俺にとって何の必要も無いという事を教えてやる!!」


 立ち上がったジャコブは怒声を上げながら騎士団の招集命令を出すのであった。





 ロッシさん達が用意してくれたのは十人乗りの木製の漁船だった。かなり頑丈そうな造りだけど本当にこれを使っていいのだろうか?


「あのー、ロッシさん。これ本当に使っていいんですか? まず間違いなく破壊されるんでもっと古い物とかで十分なんですけど」


「皆さんが我々の為に危険な敵と戦ってくださるんです。少しでも壊れにくい物の方がいいと思いまして。遠慮なさらず使ってください」


 ロッシさん達の意志は固かったのでありがたく用意された船を使う事になった。

 船の使い方を教えてもらっていて驚いたのは、漁船にエンジンとなる動力炉があった事だ。

 魔石をエネルギー源としてスクリューを回転させて進むらしい。クラーケンと戦う前に余計な体力を使わずに済みそうだ。


 漁港の人たちに見送られる中、俺たちは船を大海原へと出港させた。と言ってもやる事をやったらとっとと戻って来る予定だ。


「ロッシ様たちの話によれば、もう少し進めばクラーケン頻出ポイントです。いつでも戦えるように準備をした方がよさそうですね」


 船首付近で前方を警戒するアンジェがそろそろ敵が現れる場所であると告げ、俺たちは準備に入った。


「そうだね。準備はいいかセレーネ?」


「わたくしはいつでもいけますわ」


「よし、それならいくよ。マテリアライズ――竜剣ドラグネス」


 セレーネの胸元で青色の紋章が輝くと彼女は大型の七支刀へと変身し俺の手に収まった。

 ロックもレオが変身した魔甲拳グレイプルを装備し戦いに備える。

 準備は万全と思った時、思わぬ乱入者が現れる。『カボンバ』の別の港から巨大な船が出港し俺たちの船へと近づいてきたのだ。

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