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異世界召喚

 戦いは終わり、アンジェは人の姿へと戻った。公園広場には無影斬による斬撃の跡が残っており、その威力を思い出して思わず自分の手を見る。

 凄い力だった。あれが俺とアンジェ、二人の力が合わさった時のパワーなのか。その時オークが最後にいた所で何か光る物を見つけた。

 拾ってみると、それは掌に収まるサイズの半透明の緑色の石だった。


「何だこれ……宝石? どうしてこんな所に落ちていたんだろう」


「これは魔石ですね。さっき倒したオークの体内で熟成されたもののようですね」


「へぇ~これが魔石か。こんなに綺麗な物があんな怪物の中にあったのか」


 俺は魔石を一通り観賞した後アンジェに手渡した。それを見て彼女は不思議そうにしている。


「アンジェのお陰でオークに勝てたからね。だから君が持っていてくれ。売れば多少はお金になると思うし」


「……売ったりなんてしません。アラタ様との思い出としてずっと持っています」


 アンジェは愛おしそうな目で魔石を見ている。その姿に俺はなんだか気恥ずかしい気持ちになる。

 そんな時、見覚えのある青白い光が発生した。昨晩真っ暗になった公園の中で見た光、オークをこちらの世界へ召喚した魔法陣の光だ。

 あの時と同じ光景が広がっていく。ついに彼女が元の世界へ帰る時が来たんだ。オークを倒せばこのような事になると思っていた。

 分かっていたはずなのに、いざその時が来ると後悔してしまう。あんなオークなんて放っておけば良かったんじゃないかと思う自分がいる。

 でもそれは彼女をこの世界に繋ぎとめておきたいと思う俺の我儘なんだ。


「どうやらお別れの時が来たようです」


「そうだね。元気でな、アンジェ」


「はい。アラタ様もお元気で」


 お互いに交わす言葉は少なかった。これ以上何かを喋ると感極まってしまう気がしたから最小限の言葉で彼女を送り出す。

 魔法陣の光が広がっていき、その中にアンジェは溶け込むように消えていった。これで良かったんだ。これで――。




 眩い光が消えていき目を開けるとそこには――アンジェがいた。


「……あれ?」


「……あら?」


 ついさっき別れの言葉を交わしたばかりだったというのに、早々に俺たちは再会した。というか彼女はその場から動いていない。

 まさか元の世界へ帰れなかったのだろうか。


「もしかして元の世界へ帰れなかったの?」


「……そうではないと思うのですが」


 何やらアンジェの様子がおかしい。彼女にしては珍しく会話の歯切れが悪い。


「アラタ様、まずは深呼吸をしましょう。それからゆっくり周囲を観察してみてください」


 よく分からないが、とりあえず彼女の言う通りに深呼吸をしてから周りを見回してみる。

 どうやら俺たちは森の中にいるみたいだ。特にさっきまでと変わった印象は無いと思う。でも何だか違和感があるような気もする。

 その時、俺たちの頭上を人より巨大な鳥が飛んでいくのが見えた。あんな大きな鳥は見たことがない。


「凄い! 近所の公園にあんな大きい鳥がいたなんて知らなかった。アンジェ、ほらあれ凄いよ」


 すると同じ鳥が何羽も空を飛んでいく様子が俺の視界に入る。その異様な光景を前にしてさすがに俺は声を失った。

 巨大鳥たちは真っ青な空の果てに消えて行った。そこで俺は違和感の正体に気が付く。さっきまで夜だったのにいつの間にか昼になっていたのだ。

 それに周囲をよく見てみると、ここは公園ではなく見たこともない森の中だ。おまけに遠くの方では手足を生やした木が歩いて行く様子が見える。

 あんなもの日本には、というか地球にはいないと思う。もしかしてここは――。


「もしかして俺、『ソルシエル』に来ちゃった?」


「どうやらそのようです」


 そういうわけで俺は異世界『ソルシエル』へと飛ばされてしまった。これから俺にどんな運命が待ち受けているのかそれはまだ分からない。

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