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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第五章 冒険者として人として

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衝撃の乱入者

 ガミジンがデスサイズを出して俺たちの方へにじり寄って来る。そんな中、俺を守るようにアンジェとトリーシャが前に出てそれぞれの武器を構えた。

 

『ふん、確かに痛手を負わされたけど今の状態でも君たち程度なら十分全滅させる事はできるんだよ。――じゃあね、愚かな異世界人、そして人工生命体ども』


「――その言葉、そっくりそのまま返すよ。じゃあな、ガミジン」


 俺は上空をちらっと見て皮肉たっぷりの笑みを見せながらガミジンに言った。アンジェ達も同じようにうっすらと笑みを見せる。

 そんな俺たちの行動を奇妙に思ったのか、ガミジンは中々距離を縮めようとはしなかった。


『何だ……何が可笑しい? 貴様ら気でも狂っ――ぎゃあああああああああああっ!!』


 遥か上空から急降下してきた<マナ・ライガー>の拳がガミジンの身体を砕き、ヤツの絶叫が響き渡る。

 全身骸骨の身体は左半身が粉々になり、その破片が地面に散らばった。


『遅くなって悪かったな。一応パーティーには間に合っただろ?』


『これでも急いで戻って来たんだよ。あのカラスみたいなアンデッド、中々しつこくて倒すのに時間がかかっちゃったよ』


「ははっ、ありがとな二人ともナイスタイミングだ」


 <マナ・ライガー>からロックとレオの軽快な声が聞こえ、敵を真っすぐに見据える。

 半身を砕かれたガミジンはふらつきながら後退していく。無事だった右腕で損傷した部分を労わるようにしている。


『き……貴様等、生きていたのか!?』


『ったりめーだろ。あの程度の敵にやられるかよ。それにてめえの骨をすり潰すっていう目的を果たしていなかったからな。それを今実行させてもらうぜ!』


 <マナ・ライガー>がガミジンに止めを刺すべく向かって行く。誰もが勝ったと思った瞬間、森の奥から突然の乱入者が現れた。

 そいつは二人の間に割って入り、<マナ・ライガー>の打撃を受け止めた。

 その姿は獅子の頭部に筋骨隆々の人間の身体を組み合わせた様な外見をしていた。


『な……そんな……し、師匠……?』


「久しぶりだな、ロック。鎧闘衣マナギアをここまで操れるようになったか、大したものだ。……だが!」


 乱入者の肘打ちが<マナ・ライガー>の腹部に入り身体がくの字に曲がる。

 すると敵は<マナ・ライガー>の後頭部を鷲掴みにしてそのまま地面に思い切り押し付けた。

 その力は凄まじく頭部は岩のような硬い地面に埋まり、その周囲に亀裂が入る。


『が……はぁ……!』


「何度も言ったはずだぞ。戦場に置いて油断は禁物、何時如何なる時にも即座に対処できるように気を張り巡らせておけとな」


 <マナ・ライガー>の顔面を地面に押し付けたまま、その獅子顔の男は諭すようにロックに言う。

 その会話内容からすると男はロックと知り合いのようだ。


「あんたは何者だ! ロックとレオから離れろ!!」


「俺か? 俺の名は十司祭が一人、アロケル。異世界人である貴様の敵だ」


 獰猛な肉食獣の目が俺を睨み付ける。現在眼球が存在しないガミジンとは違って、戦意に満ちた武人の目だ。

 これだけでもこの男が只者ではない事が分かる。こいつは強い。


『アロケル……だって? ガイ……それは何の冗談さ。悪を憎み弱者を助ける。それが獅子王武神流の現継承者である君の生き様だったんじゃないのか!?』


「レオ……俺は以前と何も変わってはいない。今も悪を滅ぼすために戦っている。――そう、人間という悪とな」


 レオの悲痛な叫びが聞こえる中、アロケルは表情を全く変える事無く言い放った。


「獅子王武神流の現継承者って……それってつまりロックの師匠じゃないか。そんな人がどうして魔人なんかに……十司祭なんてものになるんだよ!」


「何度も言わせるなよ、異世界の少年よ。俺は自分が悪と認めた者と戦っているだけだ。『アビス』には情報提供の引き換えに力を貸しているだけにすぎん。故に今回も独断行動をしていたガミジンをアスモダイの指示で見張っていただけだ。しかし、命令に背いて異世界の少年に接触した挙句に返り討ちに遭うとは情けなさすぎて笑えんな。そう思わんか、ガミジンよ」


『く……!』


 アロケルに言われてガミジンは何も言い返せないようだった。落ち着いた雰囲気を見せてはいるが、その挙動には隙が無く物凄い圧迫感が俺を襲う。

 同じ魔人とは言え、こいつはガミジンとは全く違うタイプ……本物の武人だ。厳しい修行の末に身に着けた真の実力者の風格を持っている。

 

「…………」


 敵のプレッシャーを前に一歩も動けないでいると、アロケルが一瞬笑みを浮かべたような気がした。


「なるほど、中々に面白い。まだまだ伸びしろがあるようだ。――ロック、レオ、死にたくなければ、今後はその者たちとは関わるな。今回は見逃すが次にあった時、お前たちがあの少年の傍らにいた場合は手加減はせん。我が全力を持ってお前たちを排除する。分かったな?」


『し……しょう……どうして人間が悪なんですか? それに何故魔人なんかになったんですか!?』


「……お前には関係の無い事だ。忠告はしたぞ。それに従えば二度と会うことはあるまい。――行くぞ、ガミジン」


『ちっ、分かったよ。じゃあね、アラタ、それに伝説のアルムス達。次に会った時は必ず殺すから』


 そう言ってガミジンとアロケルの足元に魔法陣が展開されると二人は消えた。


「一瞬で消えた!?」


「恐らく空間移動系の魔術を使用したのだと思います」


「そんな便利なものがあるのか。俺たちもああいうのが使えたら移動が楽でいいんだけどな」


「――私も似たようなものなら使えますよ」


「そうなの!?」


「はい。ダンジョン内のようなマナが濃い場所では使えませんが、マーキングを施した場所であれば一瞬で移動が可能です」


 アンジェが非常に便利な魔術を使えたことに驚いたが、これで今後の移動が滅茶苦茶楽になる。

 彼女の説明では遠くに移動するにつれて消費する魔力が大きくなるらしいが今後重宝する事に変わりはない。


 初めての十司祭との戦いに確かな手応えを感じつつも、最後は別の十司祭アロケルの乱入でうやむやになってしまった。

 十司祭の二人が消えた後、<マナ・ライガー>の変身が解け二人に分かれるとロックとレオは意気消沈していた。

 ロックの師匠だったアロケルが敵の組織の人間になっていた事実を前にして二人のショックは大きかった。無理もない。


 この後アンジェとセレーネに治癒術を掛けてもらった俺たちは当初の予定通りに森の第二層を抜け第一層も難なく通過した。

 空が暗くなる頃には『ニーベルンゲン大森林』を脱出し、『ファルナス』へと戻ることが出来たのだった。

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