不死鳥となって
『シャドーセイバーを破壊した……だと!? まあいい。どのみちそんなぼろぼろの状態じゃ、そう長くは持たないだろうからね』
『それなら試してみろよ。俺たちが限界を迎えるのが先か、お前が倒されるのが先か。……とりあえず、一瞬で地獄に送ってやる!!』
強気な言葉で自分を奮い立たせる。実際問題もうそんなに長く持たないため短期決戦を仕掛けるしかない。
ガミジンに向けて飛翔するとヤツはまたしてもアンデッドを召喚した。そいつの外見は巨大な黒い双頭の犬で尻尾が蛇になっている。
見るからにキメラと同じくガミジンによって改造された魔物だろう。
『このオルトロスはキメラ同様に凶暴な僕のペットだ。僕と戦いたかったら、まずはこいつを倒すんだね』
『安心したよガミジン。時間稼ぎなんてせこい手を使うって事はお前も追い詰められているって事だよな』
オルトロスはオークよりも一回り以上は大きく、如何にも耐久に優れているのが分かる。そうでなければこのタイミングで盾役として引き合いに出されるわけがない。
――けれど相手が悪かった。
『邪魔だ、そこをどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
俺は身体を回転させながら双頭の犬の魔物に突っ込む。向こうもパワーでねじ伏せようと正面から向かって来る。
衝突する瞬間、炎の翼の出力を最大にして回転しながら翼から伸びる炎でオルトロスに何度も斬りつけた。
全身を炎の翼で焼き斬られ、オルトロスの身体の至る所が炎上し咆哮を上げる。
ダメージで怯んでいる敵の双頭をブレイズエッジで斬り落とし、胴体に剣を突き刺してそのままガミジンに向かって行った。
『散歩が終わったからお前に返すよ。はああああああああああああっ!』
オルトロスを体内から燃やしガミジンに向かって斬り飛ばす。そしてアンデッドの魔物はガミジンの目の前で爆発炎上した。
その炎に飲まれまいと上昇するガミジン。そこに向かって俺は残りの力を全て乗せた攻撃に打って出た。
『やるぞ、ルシア! <マナ・フェネクス>最大の闘技を見せてやるっ!!』
『はい、炎の翼最大出力、突貫します!』
<マナ・フェネクス>の全身が燃え上がり炎に包まれる。そして炎の不死鳥と化してガミジンに突撃する。
『『いっけええええええええええええ!! フェニックスリアクターーーーーーーーー!!!』』
『くっ、そんな物でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
ガミジンが魔力障壁を何層も展開し防御に力を全振りしてきた。そこに俺とルシアは躊躇せずに突っ込む。
障壁を一枚破るごとにフェニックスリアクターの勢いが徐々に弱まっていく。それでも俺たちは余力を振り絞って前へ前へと突き進んでいく。
『馬鹿な! 僕の障壁を突破してくるだと!? ……く、来るな……来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ガミジンの狼狽する声が轟く中、最後の障壁を壊してにっくきネクロマンサーに届いた。
ガミジンの身体にブレイズキャリバーを突き刺し不死鳥の炎で焼き尽くしながら地面へ向けて急降下していく。
障壁は全て破壊したものの、それにより炎の威力がかなり殺されてしまった。その火力不足を大地への突撃で補う。
『このまま地獄の底に叩き落としてやるっ!!』
『や、止めろ! そんな事をすればお前たちもただじゃ済まないぞ!!』
『そんな事は百も承知です! 私たちにはそれだけの覚悟があります。ガミジン、あなたは私たちが倒します!!』
俺たちに迷いが無いことを悟ったガミジンは必死にもがいて抵抗を見せるが、この炎と急降下の力の前では身体を上手く動かせない。
『ち……チクショオオオオオオオオオオオ!!!』
『くたばれ、この骸骨ヤロォォォォォォ!!』
ガミジンは断末魔の悲鳴を上げながら地面に叩き付けられた。その衝撃で爆発が発生し周囲の地面が破壊されてへこみ巨大なクレーターとなった。
<マナ・フェネクス>は爆発によって空中に吹き飛ばされ、爆心地から離れた場所に落下すると鎧闘衣形態が強制解除された。
満身創痍の俺たちのもとへアンジェ達が駆け付けると、アンジェとセレーネがヒールを掛けてくれた。
そのおかげでおぼろげだった意識が少しずつはっきりしてくる。
「ありがとう、アンジェ、セレーネ。……あいつは……ガミジンはどうなった?」
「アラタ様とルシアの頑張りで地面に叩き付けられました。あの爆発と衝撃ではただでは済まないはずです」
「そうか……」
『――そうだね、確かにただじゃ済まなかったよ』
「――!?」
安堵したのも束の間、聞き覚えのある声が聞こえてその方向に目を向けると全身がズタボロになったリッチがそこにいた。
纏っているローブのほとんどは焼け落ちていて骨の多くにヒビが入っている。大ダメージを負ってはいるがヤツは健在だった。
「そんな……嘘でしょ、あれだけの攻撃を受けて無事なんて……」
「とんだ化け物ですわ……」
『化け物とは言ってくれるじゃないか。けどね、お前たちアルムスだって十分化け物なんだよ。体内にエナジストを宿し半永久的に生き続けるお前たちは、身体の構成的には魔物に近い……いや、それ以上に奇怪な存在なんだよ!』
「「「「――っ!!」」」」
ガミジンの言葉にアンジェ達は押し黙ってしまう。その様子を見ていた言動の張本人はケタケタ笑っていた。
『あはははははは! その様子だと自分たちでもそう思っていたんだろう。――そうだよ、体内にあるのが魔石かエナジストという違いがあるだけで、お前たちは魔物同然の怪物なんだよ。くくく……あはははははははっ!!』
「うる……せーよ!!」
回復途中で身体が思った様に動かないが、そんな事はどうでもいい。彼女たちを……アルムス全員を侮辱するこいつが許せない。
「アラタ様……まだ動いては……」
「大丈夫だ。アンジェとセレーネが回復してくれたお陰でだいぶ楽になった。――ガミジン、お前にアルムスをどうのこうの言う資格はないんだよ。命の重さを……尊さを理解せず玩具にするお前なんかに……この世に生きる全ての生物を愚弄する権利なんてない!!」
『……言いたいことはそれだけかい? 立っているのもやっとの様だし、そろそろ終わりにしようか』




