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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第五章 冒険者として人として

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ロック VS キメラ

 地上に降りてガミジンに向かい合うとその空虚な眼窩が俺を睨み付けていた。

 

『あの数のシャドーボールを斬り落とすなんてやるじゃないか』


『子供の頃、親父に似たような訓練をやらされていたからな。連続豪速球のゴルフボールを正確に打ち返すという意味不明の地獄訓練……あれに比べればソフトボールサイズの玉を斬るなんて易しいもんさ』


『そんな事を幼少の時にやっていたんですか? アラタさんのお父様って一体……』


 それは俺も疑問に思っている。小さい時はどの家庭でも同じような事をやっているものとばかり思っていたが、いざ実家を離れてみるとその異常性が分かった。

 俺の父親は普通のサラリーマンだったはずだが、実際に働いているところを見た訳じゃないので今思えば怪しさ満点だ。


 そして俺はそんな怪しい家庭で育てられ、日常生活で役に立つこともない剣術や武術を叩き込まれて育ったのだ。

 異世界に飛ばされて戦いに身を投じるようになった今としては、その経験が滅茶苦茶役に立っているのだが。


なまっていた腕も実戦続きでピーク時に近い感覚に戻って来た……今なら!』


 地面を蹴って全速力でガミジンに接近し剣を振うがまたしてもデスサイズで斬撃を受け止められる。

 しかし、この展開は予想通りだ。


『ちぃっ、生意気な……!』


『ガミジン、さっき一度打ち合って分かった事がある。――お前、接近戦が得意じゃないな』


『そう言うのは負け惜しみって言うんだよ。僕を動揺させようとしても無駄だよ!』


『……お前がそう言うんなら別にそれで構わないさ。――それよりも脇が開いてるぜネクロマンサー。それじゃ斬撃が大振りになる』


 デスサイズの刃を弾くとガミジンは大きくモーションを取って横薙ぎにしてくる。

 バックステップで死神の鎌の攻撃範囲ぎりぎりで躱して再接近し、ブレイズキャリバーを敵の腹部に突き刺して刀身からヤツの体内に炎を流し込んだ。


『があああああああああっ!? 異世界人がよくもぉぉぉぉぉぉ!!』


『だから言っただろうが、攻撃が大振りだって。長く存在していると言っても、ずっと研究ばっかりで身のこなしは大した事ないみたいだな。――お前は俺を怒らせた。その意味をこれから嫌って言うほど教えてやる!』





 アラタがガミジンと戦う中、ロックはキメラと決着をつけるべく肉弾戦に身を投じていた。

 

『どっせぇぇぇぇぇい!!』


 ロックとレオが融合した<マナ・ライガー>の体当たりで巨大な体躯を誇るキメラが吹き飛ぶ。優勢に戦いを進めるロックは横目でアラタ達の戦いを観察していた。

 アラタとルシアが融合した姿である<マナ・フェネクス>は、ガミジンが出現させた無数のシャドーボールを全て斬り伏せ接近戦にもつれ込んでいる。

 『アビス』の幹部である十司祭を相手に互角の状況にロックもレオも驚いていた。


『あのガミジンって言う魔人……魔神化ゴエティアできるだけあってかなりのレベルだよ。千年前の戦争で戦った連中と比較しても上位に入るぐらいの……』


『そんなのを相手に互角に戦っているアラタもまた相当な手練れって事か。あれが異世界人……か』


『アラタは千年前に姉ちゃん達と契約した兄ちゃん達とも何か違う。あの兄ちゃん達は『ソルシエル』に来るまで特別な訓練なんて受けていない一般人だった。こっちに来てから物凄いスピードで魔闘士として成長していったんだよ。――でもアラタのあの技術は多分、小さい時からの血の滲むような訓練でしか身に付かないものだよ』


『異世界人のいた世界はこっちよりも平和な所って話だったよな。それじゃあ、あいつは何の為に……何と戦う為にそんな修行をしたんだろうな』


 ロックは答えが出るはずの無い疑問を抱きながら、鋭い爪と牙を駆使して襲って来るキメラの攻撃を左腕の盾で捌き右腕から放たれる打撃でカウンターを決める。

 この流れを何度も繰り返してはいるが、複数の魔物が組み合わさって誕生した規格外の魔物は異常な耐久性で戦闘を続けていた。

 その打たれ強さにロックは忌々しいと思いながらも感嘆の感情も抱いていた。

 そんな折、レオが先程ロックが抱いた疑問に対しある可能性を述べる。


『――昔、姉ちゃん達とある可能性を考えた事があったんだ』


『可能性だって?』


『うん。オイラ達が住む『ソルシエル』と異世界人が暮らす『地球』はコインの裏表のような間柄でお互いに影響し合っている。そして稀にお互いの世界にゲートと言われる門が開いて人や物とかが行き来しているんだ。だから『ソルシエル』には『地球』の文化や技術とかが流れ込んでいるんだよ。それと同じように『地球』にもオイラ達の世界の何かが流出しているんじゃないかって話した事があるんだ』


『向こうは平和な世界なんだろ? 魔物だらけの物騒な『ソルシエル』から何が行くってんだよ?』


 キメラの口から吐かれた火球を盾に傾斜をつけて空中に弾くと暫くして遥か頭上で爆発が起こる。

 その爆風を背中に受けて加速した<マナ・ライガー>は、両腕に魔力を漲らせ正面にいる敵に突っ込んでいった。


『これで決める! 獣王武神流――破砕連撃掌ッ!!』


 間合いに入ると同時に地面に足を踏み込み、自重と腰の回転と魔力を合わせた掌底を連続でキメラの身体に打ち込んでいく。

 それによりキメラは少しずつ宙に浮かせられながら体内に蓄積したダメージが限界を超え、遂に崩壊を迎えた。

 蛇の尾が弾け飛び、巨大なコウモリの翼が千切れ、ライオンの体躯は爆発したように吹き飛び周囲に肉片が飛び散った。


 その壮絶な最期を迎えた敵に対しロックは同情の念を感じていた。


『やっと終わったか。思えばこいつもあのガミジンって野郎に身体を改造された哀れな犠牲者だったんだよな。――それで、レオ。『ソルシエル』から『地球』へ何が行ったって?』


『その答えはさっきロックが言っていたよ。向こうに何かしらの魔物が行って『ソルシエル』とは異なる進化を遂げた可能性がある。――もしかしたら、アラタに戦術を仕込んだ父親ってそういうのと戦っていたんじゃないかな?』


『なるほどな。真実を確かめる方法はないから白黒つけらんねえけど、そう考えるとあいつの強さに合点がいくな。……とりあえず、この話はここまでだ。アラタ達の加勢に行くぞ!』


『合点承知ッ!』


 キメラを完封した<マナ・ライガー>は地面を蹴り上げ、空中戦に移行した<マナ・フェネクス>とガミジンへと向かって行った。

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