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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第五章 冒険者として人として

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非情のネクロマンサー

「十司祭の……ガミジンだって!? どうしてこんな所に……?」


 ガーゴイルが死に際に言った魔人の軍勢『アビス』とその組織において十人の幹部から成る十司祭。

 そんな強敵がこんなにも早く俺たちの目の前に現れた。

 

 リクルートさんの話ではガーゴイルの件に関しては一部を除いて事実を伏せて公表していたはずだ。

 それなのに『アビス』の重鎮であるこいつがここにいるのはただの偶然か?

 ガーゴイルがやられたと知って、たまたまここを訪れていただけなのだろうか?


「どうして僕がここにいるのか不思議で仕方がないって顔をしているね。当然、ガーゴイルを倒した異世界人と魔人戦争で大活躍した四人のアルムスの顔を見に来たのさ。異世界人なんて初めて見るからどんなものかと思っていたけど……案外普通なんだね」


「どうしてそれを知って――!?」


 俺がそこまで言いかけるとガミジンはその無垢な顔立ちからは予想できない歪んだ笑みを見せ、腹を抱えて笑い始めた。


「くくくくっ! 駄目じゃないか、そんな簡単に引っかかっちゃあ。駆け引きのし甲斐が無いなぁ」


「こいつ……かまをかけたのか!?」


 やられた。簡単に俺が異世界人だとばらしてしまった。それにしてもどうして十司祭に俺たちの事がばれているんだ。


「混乱している君たちを見ているのも面白いけど、そんな調子じゃこれから始まるショーに集中してもらえないからね。少しネタばらししてあげるよ。僕が知っていたのは君たちがガーゴイルを倒したってところまで。君が異世界人である事については可能性が高かっただけで確証はなかった。だから一応確認しただけさ。ガーゴイル討伐に関しては情報を隠蔽していたようだけど、知られて残念だったね。僕たちの情報収集能力を甘く見ちゃダメだよ」


「なるほど、確かに甘く見過ぎていたようですね。まさかこんなに早く私たちの事があなた側に知られるとは思ってもいませんでした。千年前よりも組織的な行動がとれているようですね。それだけで敵が以前よりも危険だという事が分かりました。――わざわざ知らせに来ていただきありがとうございます」


 アンジェが感謝を述べるようにガミジンにお辞儀をする。その丁寧な所作には、たっぷりの皮肉が込められていた。

 ついさっきまで笑っていたガミジンの表情に怒りが浮かび上がる。


「……言ってくれるじゃないか。確か君は魔剣グランソラスだったね。さっきの戦いを見ていたけど、君が使えるのは闇の魔力だろ。同じ闇の加護がある者同士、君の攻撃は僕や僕の眷属たちには効果は薄い。口は達者なようだけど実力が伴っていないんじゃ話にならないね!」


「ええ、そうですね。確かに私の力はあなたに対して効果的ではないでしょうね。――ですが、アラタ様とルシアの組み合わせであれば話は別です。光と炎系統に対して闇系統やアンデッドでは相性は悪いはず。自分の力だけで足りない部分は仲間との連携で補い合うのが私たちの戦い方です」


「……ちっ!」


 口喧嘩ではアンジェが勝利した。ガミジンは口では勝てないと悟ったのか、舌打ちをするとそれ以上余計な事を言わなかった。

 その代わりに詠唱を始めると地面に三つの魔法陣が展開され、そこから一体の巨大なライオンのような魔物と武装した二人の人間が現れた。


「こいつらは僕が造ったアンデッドだ。特にそのライオンをベースにした〝キメラ〟は僕のお気に入りでね。魔物の死体を組み合わせて一体の魔物として造り上げたんだ。格好いいだろう?」


 キメラと呼ばれたアンデッドはライオンを基本として尻尾が蛇でコウモリを彷彿とさせる巨大な翼を胴体から生やしていた。

 四本足の爪は大型化していて見るからに攻撃力がありそうだ。

 

 それに比べるとキメラと一緒に出現した人型のアンデッドは印象が弱い感じだ。

 だが、そんな俺の甘い考えはガミジンが次に発した言葉によって打ち砕かれる事になる。


「そうそう、キメラと一緒に出した二人は以前僕が手に掛けたヒューマの冒険者でね。確か銀等級で夫婦の間柄だったはずだよ。男が瀕死の女を庇って『彼女だけは助けてくれ』って泣きながら懇願してたっけ。……まっ、可哀想だから一緒に殺して僕のコレクションに加えてあげたんだけどねぇ。あはははははははっ! 僕ってやーさしー。僕のお陰で二人は永遠に一緒なんだからねぇ。君たちもそう思うだろう?」


 笑い転げながら話すガミジンに対して俺たちは沸々と怒りが湧き上がってくるのを感じていた。

 ガミジンが言っていた瞬間を想像しただけで目の前にいる二人がどれだけの絶望と恐怖の中で最期を迎えたのか、どれだけ無念だったのか伝わって来る。

 こんな最低なヤツには今まで出会った事が無い。こいつは……許せない。


「お前みたいなクズを優しく思う訳ねえだろうがっ! ふざけるなよ……ルシアッ!!」


『はいっ! 既に術式展開と魔力の充填は終了、すぐに撃てます!』


「これでぶっ飛べぇぇぇぇ! エクス……プロージョンッッッ!!」


 ルシアが予め用意してくれていたお陰で俺は瞬時にエクスプロージョンをガミジンに向けて発射する事ができた。

 巨大な火球は猛スピードで黒マントのクソガキに向かって行く。その時、女性のアンデッドが大型の盾を構えながら間に入りエクスプロージョンを受け止めた。

 おびただしい量の火の粉を周囲にまき散らしながら火球は急激に小さくなっていき消滅した。


『そんな! エクスプロージョンがディスペルされた!?』


「残念だったね。彼女の持っている盾は魔術に対して高い耐性を持っているんだよ。その上、盾自体の耐久性も申し分ないから破壊するのは容易じゃない。……さあどうする?」


 どう攻めるか考えていると、いつの間にかもう一人のアンデッドが大剣を装備して接近していた。

 大きく振りかぶって振り下ろされた刀身は俺を捉えていたが、ロックが間に入り左腕の盾でその斬撃を受け止めた。

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