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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第五章 冒険者として人として

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トリーシャの嫉妬

 死神の鎌は役目を終えると黒いオーラは消えて形状が元の魔剣へと戻った。


「これで雑魚はあらかた片付いたな。あとは――」


 俺の目の前にいるオークとハイオークは全滅し、残りは二体のオーガだけになった。こいつらは外見的にはもう豚顔ではない。

 額からは二本の角、口からはハイオークと同じく二本の大きな牙、その顔面はまさに鬼のようだ。

 三メートルはある巨躯は膨れ上がった筋肉でゴツゴツしていて、まるで大きな岩が立ち塞がっているかのように見える。

 おまけに何処から調達してきたのか大きななたのような武器を持っている。あれの直撃を受けたら無事では済まないだろう。


『グルァァァァァァァァァ!!』


 一体のオーガが真っすぐに俺に向かってくる。足場の悪い岩場をものともせず全速力で走って来る。

 さすがにここは自分たちのテリトリーだけあってこの地形に慣れているらしい。

 大きな身体に似合わず結構足が速いがレッドキャップのスピードに慣れている俺にとってオーガの動きは遅く感じる。


「でやあああああああああああっ!」


 オーガの周囲を高速で移動し斬撃を浴びせていく。

 敵は俺の動きを捉えられないみたいでやけくそ気味に鉈を振うが、そんな苦し紛れの攻撃に当たるはずもなくカウンターを叩き込んで黙らせる。

 そこから全身を斬り刻みオーガは息絶えて地面に突っ伏した。


「まずは一体……あと一体!」


 残り一体に意識を向けるとそいつは俺の背後に回り込み持っていた棍棒で殴りかかろうとしていた。

 気配察知と魔力の流れで敵の動きを把握すると振り向きざまにグランソラスでオーガの棍棒を斬り払う。

 パワーで圧倒出来ると思っていたオーガは逆に力負けした事実に驚き目を大きく見開いていた。


「悪いけどパワーもこっちの方が上なんだよ!」


 そのまま間髪入れず縦一文字に剣を振いオーガは左右に真っ二つになった。

 これで俺が担当していた敵は全滅しロックの状況を見ると向こうもそろそろ終わるところだった。


「おらおらおらおらおらおらおらぁっ!!」


 ロックが連続パンチをオーガの腹にお見舞いすると、その衝撃で敵の身体が宙に浮く。その間に右腕に魔力を集中させ腰を落として力を溜める。


「これで決めるっ! 獅子王ししおう武神ぶしんりゅう――破砕はさいしょう!!」


 落下してきたオーガの腹に魔力と力を込めた掌底を打ち込むと敵は血しぶきを上げながら何十メートルも吹き飛び、最後は地面に叩き付けられて動かなくなった。

 敵を全滅させたロックは両腕を腰の辺りで構えて深呼吸をしている。


「すぅー、はぁー……よし、終了ッ!」


 この場にいたオークの群れは俺とロックで全滅させてしまったので、今回トリーシャ達は傍観者になっていた。

 何もやる事が無かった彼女たちは若干複雑そうな表情をしていたが、その分ロックの戦い方をじっくり観察できたようで彼の実力を高く評価していた。


「瞬発力と高い打撃力を主とした格闘術か。籠手型の防具に変身するレオとの相性は良いみたいね」


「まあね、ガキの頃に師匠の所に転がり込んで数年間修業したんだ。師匠から教えてもらった獅子王武神流の前に敵はいないぜ」


『まったくそうやって調子に乗って。そんなんだからガイに外の世界を見て来いって言われて奥義伝授前に修行の旅に出たんだよ。忘れたの?』


「う……分かってるよ」


 レオに釘を刺されてロックはばつが悪そうな顔をしている。そのガイって人が獅子王武神流を教えてくれた師匠みたいだ。

 

「奥義をまだ教えられていないって事はロックの技はまだ完全じゃないって事か?」


「まあな。元々、獅子王武神流は頑強な肉体を持つ獣王族秘伝の武術なんだ。そこを無理言って教えてもらった訳。だから俺はもっと強くなっていつか師匠から奥義を伝授してもらうんだ。そして『ソルシエル』最強の武闘家になるのが俺の夢なんだよ」


 今の状態でさえオーガをフルボッコする程の強さなのに、更に強力な技を覚えたらどれだけ強くなるのだろう。

 でも『最強』の二文字は男として誰しも一度は憧れる称号だよなぁ。

 

「最強……ねぇ……。そういう所に固執するあたりあなたもまだまだ子供ね」


 トリーシャが両腕を身体の前で組んで呆れたような目つきをロックに向ける。それに対しロックはイラッとしたようで強い口調で反論した。


「何だよ、最強を目指して何が悪いんだよ。誰よりも強いって何かこう……凄いだろ!?」


「別に悪いなんて一言も言ってないわよ。ただ子供っぽいって言っただけ。って言うか、あなた自身最強に対するイメージがぼやけてるんじゃない?」


「んだとっ!」


 ロックとトリーシャが言い合いを始めたので皆で仲裁に入る。

 まだダンジョン脱出に向けて行動を開始したばかりだってのにパーティ内の雰囲気が悪くなるのは困る。


「落ち着けよ、二人共。トリーシャは一々突っかかるような言い方をするんじゃないよ。男って生き物は最強の存在に憧れを持つ生き物で、俺も中学二年の頃は――」


「ふーん、アラタはそっちの肩を持つんだ。何だかんだで男同士でかばい合うのね」


「ええ……、何でそうなるのぉ……?」


 仲裁しようと思ったら俺も目の敵にされてしまった。心なしかトリーシャはロックと言い争っていた時よりも機嫌が悪いように見える。

 彼女たちと行動を共にすることになって多少は女性に慣れたかと思っていたのだが、やはり女心は難しい。

 問題解決の方法が分からず立ちすくんでいると、このパーティ最大の良心である彼女が救いの手を差し伸ばしてくれた。


「トリーシャちゃん、そんな言い方をしては駄目ですよ。以前マーサさんが言っていたのですが、男性は生涯少年の心を持っているらしいんです。だから子供っぽい言動や思考は当たり前なんですよ。可愛いじゃないですか」


「そんな事言ったって……アラタが……まるで私が悪者みたいに言うんだもの」


 ルシアが優しく諭すように声を掛けるとトリーシャは拗ねているような様子で下を見ていた。

 ケモミミはぺたんとなり尻尾は力なくうな垂れている。その姿からは怒っている感じは見られない。


「何だか元気がないみたいだな」


『アラタ様が自分の味方をしてくれなかったのが面白くなかったのでしょうね』


「それってもしかして、ツンが……デレているということか……?」


 まさかこの俺が女の子から嫉妬される日が来ようとは。不謹慎かもしれないけどちょっと……いや、かなり嬉しい。

 でも嬉しがっている訳にもいかない。俺がトリーシャを傷つけてしまったのは事実なのだから。


「トリーシャ、俺の言い方が悪かったよ。ごめんよ……でも、ルシアの言うように男っていつまでも子供っぽい部分があるみたいなんだ。大目に見てくれると助かる」


 トリーシャに謝りながら彼女の頭を軽く撫でると、彼女は顔を真っ赤にして後ずさりする。


「ちょ、何するのよ。女性の頭を撫でるとかアラタのくせに生意気よ!」


「あ、すんません。調子に乗り過ぎました」


 無意識にやってしまった行為をちょっと反省したが、トリーシャは怒り口調であるものの尻尾は千切れんばかりに縦横無尽に揺れている。

 どうやらまんざらでもないらしくホッとした。


 そんなこんなでパーティ内の雰囲気は前よりも良くなったようでトリーシャとロックの間のわだかまりも解消されたようだ。

 そして第二層へと続く道を進もうとした時、その先から大勢のゴブリン達が姿を現したのであった。

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