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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第五章 冒険者として人として

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生きていた冒険者

 第三層に入ってから魔物と遭遇することなくしばらく歩いていると、トリーシャがケモミミをピクピクと動かし始めた。


「これは……水が流れる音だわ。近くに川があるみたい」


「それは助かりましたわ。そこで水を補充しましょう。わたくしの魔術が生活用水代わりにされるのはいい加減疲れましたわ。これでやっとまともに休めます」


 川があれば水場として使えるかもしれない。休憩中、水道代わりにされていたセレーネは心底嬉しそうだ。

 はやる気持ちを抑え周囲に警戒しながら進んでいくと大きな川が流れていた。見た感じ水は透明度が高く綺麗だ。セレーネが水質を確かめると飲み水として問題ないとのことだった。


「もう少ししたら日も暮れるし今日はこの辺りでキャンプをしよう」


「賛成です。それじゃバッグから必要な道具を出しますね」


 今日はここで休もうと提案すると皆が満場一致で賛成した。ルシアがインベントリバッグからキャンプ道具を出し、手分けして本日の休憩所を作っていく。

 俺は魔物除けの結界を張る護符を幾重にも設置し、魔物が苦手とするお香を焚いた。これで余程のことが無ければ魔物は近づいてこない。

 第三層のオーク種多発区域に入り縄張りが変わったことでレッドキャップの出現確率も低下したはず。

 動きの速い敵が少なくなったので、仮に魔物が襲って来てもこちらは戦闘態勢を整えやすい。今日は幾らかゆっくり休めそうだ。

 

 テントの設置も終わり夕飯の準備をしていると近くに何者かの気配と微力だが魔力を感じた。

 アンジェ達もその気配に気が付き全員で目配せをする。近づく気配は状況的に敵である可能性が高い。

 

「気配は一つ……いえ、二つですね。気配と魔力を抑えているところを見ると中々の手練れだと思われます」


「そうみたいだね。向こうは奇襲するつもりのようだけど、逆に返り討ちにしよう。アンジェ、いくよ。マテリアライズ――魔剣グランソラス!」

 

 アンジェは漆黒の魔剣へと変身し、俺はその剣を手に取ると気配がする方へ向かう。

 ルシア達はテントの裏に姿を隠し奇襲に備える。敵と思われる気配は動く様子はない。

 それならこちらから打って出るまでだ。


『アラタ様、敵は思ったよりも慎重なようです。戦い慣れしている可能性もあります。ご注意を』


「分かった。敵を視界に入れたら即座に白牙びゃくがを叩き込む。――いくよ!」


 呼吸を整え意を決して休憩エリアから出ると気配のする方向を正面に据えて魔力を集中した剣を構える。


「そこにいるのは分かっている。俺たちを襲うつもりなら相手になるぞ。とっとと出て来い!」


 大声で挑発すると前方にある大きな岩の裏から二つの人影がゆっくりと姿を現した。

 最初は暗がりにいたため二つの影が手を挙げていることぐらいしか分からなかったが、それだけでもどうやら俺たちと戦うつもりはないという事が分かり警戒を少し緩める。

 その二人はゆっくりと俺の方へと歩いて来て日の当たる場所までやって来た。


 それは二人の男性だった。一人は俺と同じぐらいの少年で動きやすさを重視した軽鎧タイプのローブを身に纏っている。

 髪は茶色い短髪で一見ヒューマに見えるが耳は尖っていてエルフみたいだ。恐らく何かしらの亜人族なのだろう。

 もう一人は小学生から中学生ぐらいに見える少年だ。小柄でちょっと生意気そうな雰囲気がある。

 俺と同じ黒髪だが少し長めで所々ツンツン尖っている。

 ローブは上がパーカーのようなフード付きの物で下はゆったりした半ズボンをはいている。


 二人共ローブは所々汚れており、お世辞にも清潔感があるとは言えない。そんな男子二名を一目見て俺は非常に驚いた。

 彼らは俺たちが探し求めていた二人だったからである。そんな二人が一ヶ月以上も森の中にいたと思えない元気さで話しかけて来た。


「急に押しかけてすまない。久しぶりに他の冒険者にあったもんだからつい。俺の名前はロック・オーガン。それと隣にいるちっさいのは、俺のパートナーのアルムスでレオっていうんだ。初対面の人にいきなりこんな事を言うのも何だが……すまん、何か食べ物があったら恵んでください!」


「オイラからもお願いします。もう一ヶ月以上、味付けのしていない魔物の肉や川魚、それに特に味の無い果物ばっかり食べてて……。何か味のある物を食べさせてください!」


 生死不明の二人が突然目の前に現れて最初に口にしたのは食べ物の話だった。魔物が凶暴化した、こんな危険な森の中で会った同業者に求めるの……そこなんだ。


「何か心配して損した気分だな。めっちゃ元気そうじゃないか」


『どうやら私たちの夕食の匂いにつられてここまでやって来たようですね。まさかこのような形で依頼達成になるとは思いませんでした』


 俺とアンジェが呆気に取られているとレオが俺が持っている漆黒の剣に気が付いた。みるみる顔が青くなっていき汗が吹き出るのが見える。

 そのような体調が悪そうな様子でレオは恐る恐る質問してきた。


「あの……もしかしてその剣……アンジェ姉ちゃん?」


『どうやら気が付いたようですね。久しぶりですね、レオ。千年ぶりでしょうか?』


 アンジェは武器化を解いてヒューマの姿に戻った。ただその姿を見てレオは釈然としない様子だ。


「え……あれ……? 本当にアンジェ姉ちゃんなの? 話し方も何か違うし服装もメイド服だし……もしかして偽物なんじゃ……」


「……あなたが誕生して間もない頃、工房で悪さをしていたのを止めたのは誰でしたか?」


「ひえっ! やっぱり本物だ。疑ってごめんよ。アレだけは勘弁してよぉ」


 レオの挙動不審は異常だ。アンジェが本物だと分かると全身を震わせ表情が重い。よほど怖い目にあったのだろう。

 アンジェが弟に何をしたのか気になるけど、本人は教えてくれ無さそうだ。

 レオからしてみればこの再会は良い事なのか悪い事なのか分からないが、とにかく二人共無事だったので結果オーライといったところだろう。

 攻撃に備えていたルシア達も相手が敵ではない事に気が付き姿を現す。かつての仲間が出て来たのでレオは目を丸くしている。


「ええっ!? ルシア姉ちゃんにセレーネ姉ちゃん、それにトリーシャ姉ちゃんまでいる。――一体どうなってんの?」


「立ち話もなんですし二人に中に入ってもらいましょう。詳細はそこでお話します。とにかく無事で何よりです」


 一ヶ月以上行方不明だったロックとレオが無事だったと分かりルシア達は嬉しそうだった。

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