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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第四章 鎧闘衣――マナギア

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漆黒のマナギア マナ・オライオン

 ふと目を開けると周囲は光に包まれた空間になっていて、目の前にはアンジェがいた。

 同時にこれまで彼女が経験してきた戦いの記憶が、今まで以上に鮮明に俺の中に流れ込んで来る。

 彼女が今まで内に秘めて来た痛みがはっきりと分かった。だからこそ、俺は再び彼女に言う。


「アンジェ、俺も一緒にこの痛みを背負っていく。――だから、一緒に行こう!」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。マスター、あなたに私の全てを委ねます」




 俺たち二人の心と身体が一つになり、再び目を開けると前方にはガーゴイルがいた。どうやら、さっきの不思議な空間から意識が戻ったらしい。

 すると、ここで違和感に気が付いた。いつもより視線が高い位置になっている。身長がいくらか高くなったような感じだ。


 それに変わったのはそれだけじゃない。全身の隅々にまで魔力がみなぎっている。明らかに普段の自分の身体とは違う感覚だ。

 自分の変化に戸惑いながら手を見てみると色が真っ黒くなっていて指先が尖っている。さらに全身の皮膚は鎧のような硬い物質に変化していた。


『そうか……これが鎧闘衣マナギア。今、俺の身体は生きた鎧みたいになっているのか』


『その通りです。これが私、グランソラスの鎧闘衣――<マナ・オライオン>です。アラタ様、私の計算では現状この形態を維持できるのは五分程度が限界です。制限時間内にガーゴイルを仕留めきれなければ我々は全滅します』


 いきなり自分の中からアンジェの声がしたので驚いたが、俺は今彼女と融合している状態なので当然といっちゃ当然か。

 現在の俺たちの状況は控えめに言って崖っぷち。それなのに不思議な感じだ。追い詰められているにも関わらず負ける気がしない。


『了解だ、アンジェ。制限時間内にガーゴイルを倒すぞ』


 鎧闘衣となった俺たちを見てガーゴイルは驚愕していた。呆けたように突っ立っているので、かなりショックを受けているのだろう。


『そんな……バカな! 漆黒の鎧闘衣<マナ・オライオン>……戦いの中で第二段階に覚醒するとは。――いや、しかしそれは失策ですよ。鎧闘衣は魔力コントロールが難しいはず。最初は歩く事すらままならないと聞いたことがあります。新しい力に賭けたのでしょうが、とんだ失敗だったみたいですね。ふふふふふふはははははははは、ぐはぁっ!!』


 ガーゴイルが隙だらけで笑っていたので、とりあえず顔面を殴ってみると思い切り吹き飛んで岩に衝突した。その衝撃で岩は粉々に砕ける。

 敵を殴った拳に痛みは無く、確実にダメージを与えたという確かな手応えを感じる。それと同時に自分とガーゴイルの力量差が分かった。


『ぐ……くっ、ありえない。初めて鎧闘衣になったはずなのに、どうしてそこまで動ける?』


『そんなの知るか。出来るからやっているだけだ』


 ガーゴイルはその場で立ちあがり、歪んだ笑みを浮かべていた。


『こちらの想定以上にやれるようですがそんなに長くは戦えないはず。その間、私が耐えきればあなたはもう戦えない状態になる。そしたら手足を一本ずつもいで恐怖の中で止めを刺してあげますよ!!』


『本当に性悪なヤツだな。今の俺が鎧闘衣を維持できるのは約五分。けどな、お前を倒すのに五分もいらねえ、三分以内にぶっ潰す!!』


『やれるものならやって見ろ、小僧ォォォォォォォ!!』


 ガーゴイルが翼を羽ばたかせ上空に飛ぶ。時間稼ぎかと思ったが、ある程度の高さまで上がると俺へ目がけて急降下を開始した。

 どうやらヤツは五分間逃げの一手で行くつもりはないらしい。


『向こうから来るなら好都合だ。アンジェ、グランソラスを使うよ』


『かしこまりました。エナジストが埋め込まれていない以外使い勝手は通常時と変わりありません。全力でお使いください』


 黒いオーラが収束し漆黒の魔剣を構築する。普段はつばに埋め込まれているエナジストが無くなっているが、それ以外はいつものグランソラスと何ら変わりはない。

 ちなみにアンジェの深紅のエナジストは、現在<マナ・オライオン>のコアとなって絶賛フル稼働中だ。


 グランソラスを右手に装備しガーゴイルに向かって地面を蹴り跳び上がる。

 空中で俺と灰色の魔人は激突し、互いの魔力が干渉して火花が散った。ガーゴイルは落下速度を利用して攻撃力を高めているが、それと互角に渡り合う。


『なっ、私と互角だと!? ちぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』


『それで全力か、ガーゴイル? それならそろそろ攻守交替といこうか』


 剣でガーゴイルの剛腕を斬り払いつつ身体を横に逸らすと、全力で突進していたアイツは凄い勢いで地面に突っ込んだ。

 普通なら自滅してもおかしくない衝撃だったが、それで済むような相手じゃない事は分かっている。

 俺は地上に急降下し土煙の中にいるガーゴイル目がけて突撃した。鎧闘衣となった今では魔力感知能力が高まっていて、相手の位置が手に取るように分かる。

 そこに目がけてグランソラスを横薙ぎに振い土煙ごと敵を斬り飛ばした。


『があああああああああっ!!』


 灰色の強靭なボディから黒血を吹き出しながらガーゴイルは地面に叩き付けられ、よろめきながら起き上がる。


『くそっ、くそっ、くそっ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 何故だ、何故私があんなガキにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!』


 怒りで身体を震わせこれまでにない形相で俺を睨んでいる。完全に頭に血が上っているようで紳士的な口調が消えていた。

 敵が冷静さを欠いているのを見ると逆にこっちは冷静になり、勝利への戦術を練っていく。


『アンジェ、次のガーゴイルの攻撃を凌いだらエグゼキューション形態フォームで一気に勝負を決めるぞ』


『了解しました。今の私たちであれば問題無く発動できます。決着をつけましょう』


 作戦がまとまりアンジェは鎧闘衣の奥の手である執行形態の準備に取り掛かる。俺は予想通り怒りに任せて飛びかかって来たガーゴイルの攻撃に対応する。

 

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえぇぇぇぇ!!』


 我を忘れたガーゴイルの連続パンチが次々と俺に放たれるが、精細さを欠いた攻撃は単調で見切り易く簡単に回避できる。

 これだけ打ち込まれた攻撃が全く当たらない事にさらに苛つき、ガーゴイルの打撃はますます雑になっていった。


『アラタ様、執行形態の準備が完了しました。いつでもいけます』


 アンジェの準備も完了し、これ以上こいつの攻撃に付き合う必要もない。

 パンチが繰り出されるタイミングに合わせてグランソラスでガーゴイルの左腕を肘から斬り飛ばした。


『ぎゃああああああああああ!! 私の腕があああああああああ!!!』


『ぎゃあぎゃあうるさいんだよ、このクソ魔人! これで一気に勝負をつける。――アンジェ、行くぞ!!』


『了解です。<マナ・オライオン>リミッター解除、執行形態――モード黒獅子くろじし、発動します!』

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