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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第四章 鎧闘衣――マナギア

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マテリアライズチェンジ

「くっ、一撃が重い上にそれを連続で繰り出すなんて!」


『弱音を吐かないっ! 集中を乱せば一気に刈り取られる。丁寧に一撃ずつさばいて反撃のチャンスを待つしかないわ』


 そうだ……敵の動きが速いからといって焦って目だけで追っていたら限界が来る。

 相手の殺気や細かい挙動から先を読めと、小さい頃から親父に何度も言われてきたじゃないか。

 実際に今まで実践してきた技術だ。相手が格上だからって委縮していたんじゃ目も当てられない。

 親父に叩き込まれた力をここで出し切らないで何時いつ出し切るっていうんだ。


「負けるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ガーゴイルの鋼の拳による一発一発を確実に刀身で受け流す。最初は圧倒されていた敵の動きに少しずつ順応していくのが分かる。これなら――。


『ちぃっ! 動きが変わった。私の攻撃に追いついてくるだと!?』


 一瞬、ガーゴイルの動作が鈍った。今ならいける。


「そこだっ!!」


 上段から刀を振り下ろして斬るとすかさず横薙ぎの一太刀を浴びせる。そこから袈裟懸けに追撃を入れて風を纏わせた刺突攻撃を入れる。

 

『今のはいい攻撃でしたが残念でしたね』


 神薙ぎの刃先はガーゴイルの身体の表面に少し刺さっただけだった。その前に繰り出した斬撃もヤツの表面に傷をつけただけでダメージになっていない。


『そんな……どうして!?』


『あなた方の風は柔すぎるんですよ。そんな軽い斬撃ではいくらやっても私に致命傷を与えられませんよ!』


 ガーゴイルの拳が俺の頬をかすめると皮膚が裂けて血しぶきが上がる。


「くっ!」


『顔面を狙ったはずですが……いい反応ですねぇぇぇぇぇぇぇ!!』


 一旦距離を取ろうとバックステップをするとガーゴイルは俺にぴったりとくっついて離れようとしない。


『いつまでそうやって躱していられますかね!』


 そこからヤツの拳や蹴りが次々と繰り出され、俺は回避と防御で何とかしのいでいく。防御の上から少しずつダメージが蓄積し、身体のあちこちが軋んでいく。


「くそっ、このままじゃ――!」


「アラタさん! 今度は私を使ってください!!」


 声が聞こえた方に目を向けると先程ガーゴイルに吹き飛ばされたルシアがいた。ダメージが回復しているところを見るとセレーネの治癒術を受けたらしい。


『悔しいけど、私じゃあいつの動きに付いていけてもダメージを与えられないわ! アラタ、ここはルシアに任せましょう』


「分かった! マテリアライズチェンジ――聖剣ブレイズキャリバー!!」


 ルシアが炎に包まれ俺の手に収まり紅蓮の聖剣へと変身した。入れ替わるように風の刀は金髪ケモミミ少女の姿へと戻る。


『今度は聖剣を装備しましたか。やはり、あなたはっ!!』


「ルシア! ノータイムでぶっ放すぞ!!」


『はい! リアクター最大出力、刀身に魔力集中します』


 ブレイズキャリバーの刀身に高密度の炎が集中し火柱のような刃を形成する。


「食らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、バーンスラッシュ!! これで燃え尽きろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


『なんとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』


 巨大な炎の斬撃をガーゴイルに浴びせるとヤツの身体は激しく燃え上がり炎の中に消えていった。

 

「はぁ……はぁ……くっ……直撃したはずだけど……」


『――!! 炎の中に高密度の魔力反応ッ!』


 炎が一瞬で爆ぜて中から灰色の魔人が姿を現す。身体のあちこちが焦げたりススだらけになってはいるが、相変わらず余裕の表情をしている。


「くそっ! なんてヤツだ」


『さすがは全アルムスの中でもトップクラスの火力を誇る聖剣。一瞬だけヒヤリとしましたよ。実際、身体のあちこちを火傷してしまいました。まぁ、この程度のダメージならすぐに自己修復されるんですけどね』


『そんな……私の攻撃でもこの程度しかダメージを与えられないなんて』


『確かにあなた方ハイアルムスの性能は高い。でもマスターが未熟なせいでその力を引き出せていないのですよ。あなた方は契約してから日が浅いようだ。同調率が第一段階の状態ではそれが限界。残念でしたね』


 ガーゴイルが腕部に魔力を集中すると、そのエネルギーを俺に向けて撃ち出してきた。弾速が速くて躱すのは無理だ。防御するしかない。

 魔力をブレイズキャリバーに集中して刀身でエネルギー弾を受け止める。


「くっ……ぐうううううううううううう!!」


『くぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』


 全力で防御しているにも関わらずエネルギー弾は消滅せずに留まっている。気を抜けば持っていかれる。

 俺とルシアの意識が防御に集中していたためガーゴイルが接近していることに気が付かなかった。

 

『これはおつりです。どうぞ』


 ガーゴイルの拳がエネルギー弾に打ち込まれ爆発を起こす。その衝撃でルシアの武器化が解けて、俺と彼女は爆風で吹き飛ばされ地面に叩き付けられた。


「ちく……しょ……」


「う……くぅ……」


 頭を上げるとボロボロになったルシアが近くで横たわっているのが見える。その向こう側にはゆっくり歩いてくるガーゴイルがいた。

 このままじゃ、ルシアがやられてしまう。


「ここから先には行かせません!」


「やらせないわよ!!」


 アンジェとトリーシャがガーゴイルに接近戦を仕掛ける。だが戦力差は歴然で二人の攻撃はほとんど効果が無く、圧倒的な反撃に晒される。

 

「く……このままじゃ……皆がやられる。俺が何とかしないと……」


「まだ動いては駄目ですわ。すぐに回復します。――ヒール!」


 駆け付けつけたセレーネが俺とルシアに治癒術を掛けてくれた。そのおかげでダメージが回復していく。


「ありがとうセレーネ。ルシアを頼んだよ」


「ご主人様、いくら傷を治したとは言えあなたの身体は既に限界ですわ。これ以上無理をすれば――」


 セレーネが今にも泣き出しそうな顔で俺を見ている。そんな彼女に俺は笑って見せる。


「大丈夫だよ、セレーネ。これからあいつをぶっ飛ばす。そしたら皆で『ファルナス』に帰ろう」


 セレーネは泣きそうな顔を袖で拭うと精一杯の笑顔で頷いた。俺はピンチに陥っているアンジェとトリーシャの方へ全力で走る。

 

「二人共離れろ!」


 アンジェとトリーシャがガーゴイルから離れ、そこに間髪入れず白零びゃくれいを連続で撃ち込む。

 俺は白い光弾を何度も放ちながら敵に向かって接近する。予想通り大したダメージはないみたいだが、二人が離脱できたので十分だ。


 すると、ガーゴイルから一旦離れたアンジェが俺に向かって飛び込んで来るのが見えた。


「ちょ、アンジェ!」


 慌てて受け止めると、彼女は俺に真剣な眼差しを向けていた。


「アラタ様、あなたと一緒に戦わせて……私を使ってください!」


 左腕でアンジェの細い腰を抱えると彼女の胸元に深紅の紋章が浮かび上がる。俺とアンジェの視線が交わり二人同時に頷く。


「俺もそのつもりだよ。アンジェ、力を貸してくれ! マテリアライズ――魔剣グランソラス!!」


 俺の腕の中で彼女は漆黒の魔剣へと姿を変える。俺はその魔剣グランソラスを手に取り正面に佇むガーゴイルに向かって行った。

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