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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第四章 鎧闘衣――マナギア

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魔人ガーゴイル

 彼等の装備を見るからに冒険者で間違いない。陣形を組んで魔物と戦い次々に撃破していく。

 それぞれがかなりの手練れであると同時にチームワークにも優れた魔闘士たちである事が分かる。

 

「アラタ様、上空から魔物の増援が来ました。いかがいたしますか?」


 上を向くとポイズンビーの群れがやってくる。この森に入ってから幾度となく戦っているのでいい加減辟易する。

 だが、連中の毒攻撃は非常に危険だ。毒を受ければ短時間で死に至る。地上で戦っている冒険者たちにポイズンビーを迎撃する余裕は無さそうだ。


「セレーネ、アイシクルビットで一気に叩き落とすよ!」


『分かりましたわ。アイシクルブレードパージします』


 ドラグネス本体から分離した七つの氷刃とシンクロし蜂の魔物に向けて飛翔させると、群れの中で縦横無尽に暴れさせて瞬殺した。

 そんな俺たちの乱入に冒険者たちと謎の怪物の双方が気が付く。ふと冒険者たちを見るとその中に俺が知っている人物がいた。

 近くにいる魔物を倒しながらその人物に近づいて行くと、相変わらず厳つい顔をした爺さんが俺を見ていた。


「リシュウの爺さん! まさかこんな所で再会するなんて思わなかったよ」


「おめえはアラタじゃねえか。そうか、『ファルナス』に無事到着していたんだな」


 リシュウの爺さんはイビルプラント討伐後に調査隊の一員として『試練の森』にやって来た冒険者だ。

 年齢は七十歳と中々の高齢だが、筋骨隆々のその身体は衰えを感じさせない。実際に他の若い冒険者たちの中にいて一際存在感が大きい。


「『ファルナス』には昨日到着して、今朝冒険者登録を済ませて来たところ。そしたらダンジョンブレイクが起きてさ」


「そんな冒険者のひよっこがどうしてこんな所にいやがる。仲間と一緒にさっさと街に戻れ!」


 爺さんは俺をちらりと見るとそう言って魔物を斬り倒していく。しかし、この状況でそんな余裕はないはずだ。

 この状況において戦いを見物している異形の存在がいるのだから。あの灰色の怪物は両腕を組んで、この戦いを見物している。

 石像みたいな無機質な身体である一方で表情は楽しそうに生き生きしている。あいつは他の魔物とは次元が違う魔力を持っている。

 あいつと戦うのなら一人でも戦力は多い方がいいはずだ。


 そう思っていると、近くにいた男性が声をかけて来た。褐色の肌をした初老の男性だ。この人物もリシュウの爺さんに引けを取らない程に筋肉が凄い。

 

「あなたがアラタ殿ですね。お話はリシュウから聞いています。私は『クロスレイド』のコウガイと申します。彼が言った様に仲間と一緒に一刻も早くここから離れてください。あの灰色の者は〝魔人〟です。今回のダンジョンブレイクは、あの者の仕業です。あなた方はこの情報を持って急いで『ファルナス』に戻ってください」


「でも――!」


 言いかけて気が付いた。コウガイさんも他の冒険者たちも、そしてリシュウの爺さんも覚悟を決めた表情をしている。


「アラタ様、ここはリシュウ様やコウガイ様の言う通りに即時撤退を提案します」


「なっ! 爺さんたちを残して俺たちだけで逃げろって言うのか!?」


 アンジェの提案に反論すると彼女の表情がいつになく真剣にそして険しくなる。


「その通りです。コウガイ様の仰る通りあの灰色の怪物は魔人です。この魔力の質と圧迫感を間違えるはずはありません。今のアラタ様ではあの者には勝てません」


「でも、皆で力を合わせれば何とかなるかもしれないじゃないか!」


「アラタさん、それでどうにかなるならアンジェちゃんもこんな事は言わないです。それだけ危険な相手なんです。だから少しでも生存の可能性を高くするためにこんな選択をするしかないんです。リシュウさん達も同じように考えたから私たちに早く逃げる様に言ってるんですよ」


「そんな……」


 アンジェもルシアもトリーシャも悔しそうな表情をしている。武器化しているセレーネからも同様の感情が伝わって来る。

 そして伝わって来る感情の中には恐怖もあった。


「セレーネ?」


『何度やっても慣れる気がしませんわね。魔人を前にするとどうしても身体が震えますわ』


 どうすればいい? 今の俺の力ではあいつには勝てない。何度も魔人と戦ったアンジェたちがそう言うのだから間違いないのだろう。

 このまま戦えばアンジェたちを無謀な戦いに巻き込むことになる。リシュウの爺さん達は死ぬのを覚悟して戦おうとしている。

 俺はどうすればいいんだ。


『……随分と懐かしい顔ぶれがそろっていますねぇ。本当に驚きましたよ』


 悩んでいるとやたらと穏やかな男性の声が聞こえて来た。驚いて声の主を辿るとそれは灰色の魔人のものだった。

 黄色い双眸を細めてアンジェたちを懐かしそうに見ている。


『竜剣ドラグネス、神刀神薙ぎ、聖剣ブレイズキャリバー、そして魔剣グランソラス。魔人戦争を終結に導いた高名なアルムスの方々がこれだけ揃っているとは圧巻ですね』


「あいつ……私たちを知っているの!?」


 トリーシャを始めアンジェやルシアも驚きを隠せない。それに武器化状態のセレーネを一目見てドラグネスだと判断したことにも驚く。

 

『ええ、よく存じていますよ。当時私もあの戦場にいましたから。私は〝ガーゴイル〟、魔人化する前はアルムスだったんです。大した力の無いちんけな存在だった私にとって魔人と互角に渡り合うあなた方は女神のようだった。私もいつかはあなた方のようになりたいと思ったものです』


「それがどうして魔人なんかになるんだよ。アンジェ達のようになりたかったんじゃないのか!?」


『私が彼女たちのようになるのはそもそも不可能なんですよ。アルムスという人工生命体は創られた時、既にその性能が決められているんです。コアであるエナジストの質、身体を構成する金属の種類、その他にも様々な機能の有無によってね。――金属の頂点に立つオリハルコン製の武器の前では石のような武器などゴミ同然。私はね生まれながらにしてゴミとしての運命を背負わされていたんですよ』


 灰色の魔人は黄色い目を俺に向けて笑っていた。だがその笑いは俺に対してではなく自分自身を嘲笑っていた。

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