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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第三章 風の神刀と氷なる竜剣

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ポーションで24時間戦えますか?

 俺は風の逆噴射によって減速し地面にゆっくり着地した。

 地上に落ちたボンバーホークの所に行くと、落下地点には巨大なクレーターが出来ていて衝撃の強さを物語っている。


『私を装備して間もないにしては上出来ね』


「神薙ぎの感触は日本刀そのものだったから扱いやすかったし、あの高速戦闘は俺好みだ」


『……私はあなた好みに扱いやすい女じゃないんだからね!』


「誰もそんなこと言ってねーよ!」


 このツンデレドMに早くも慣れつつある自分が怖い。まさかとは思うが俺にはサディスティックな一面があるとでもいうのか。

 日本の片田舎で穏やかな日々を送っていた頃とそんなに変わった気はしないのだが。

 ボンバーホークの落下地点に光る物が見え拾ってみるとそれは魔石だった。回収しているとアンジェたちが迎えに来たので合流する。


 冒険者になって初めての依頼ではアダマントータスとボンバーホークという巨大魔物を討ち取った。

 少々アブノーマルな出だしだったが結果オーライだろう。多分。




 魔物の群れは掃討され冒険者たちは安堵の表情を浮かべている。激戦ではあったものの被害は少なかったみたいだ。

 『ファルナス』北門で一休みしていると冒険者ギルドの受付嬢数名と一緒にやたら貫禄のある男性がやって来た。

 髪の毛は短く整えられ髭は剃られていて清潔感のある中肉中背の男性だ。背筋がピンと伸びていて冒険者ギルド職員の制服を着ている。


「冒険者の方々、お疲れ様でした。此度の緊急依頼に参加し魔物の群れを討伐してくれたあなた方はこの『ファルナス』の誇りです」


 いきなりめっちゃ褒められた。この四十代程のダンディーな男性に称えられた冒険者たちはまんざらでもないといった表情だ。

 

「あの男性は冒険者ギルド『ファルナス』支部の支部長リクルートさんよ」


 トリーシャがダンディーの正体を教えてくれた。

 リクルートさんは四十代の男性で細やかな気配りとしっかりした観察眼を持った人だそうで、冒険者の相談にも色々と乗ってくれる有名人らしい。

 そんな著名人が難しい表情を冒険者たちに向ける。それはある事情が関係していた。


「今回ダンジョンブレイクを引き起こした『ニーベルンゲン大森林』の調査のために現在『クロスレイド』のメンバーが同ダンジョンに侵入したとの情報が入りました。しかし、急な戦いであったために彼等は十分な物資を持っていません。そこで、前線で戦う彼等に補給物資を届ける緊急依頼を発行致しました。この依頼をあなた方のいずれかにお願いしたいと思っています」


 これは中々に厳しい内容だ。さっきの戦いで皆体力をかなり消耗しているはずだ。こんな状態でこれからダンジョンに行くとなるとさすがに危険すぎる。

 この場にいる誰もがそれを理解している。依頼説明をしているリクルートさんも同じだろう。


 この無茶な依頼に対して手を挙げる者はいなかった。

 そんな皆の反応を予想していたリクルートさんはある物を用意していた。

 持参したカバンの中から取り出したのは掌サイズのガラスのような透明の瓶だ。その中には水だろうか、透明の液体が入っている


「先の戦いで皆さんが疲弊しているのは重々承知しています。その解決策として錬金ギルド特製の最上級のポーションを用意しました。これを使用すれば疲労、傷、魔力を大幅に回復する事が可能です。それとこの依頼を引き受けてくれた方には当ギルドより相応の報酬を考えております。依頼達成の際には更なる追加報酬もあります。どなたか引き受けてくれる方はいませんか?」


 条件としてはかなり良いとは思うが誰も依頼を受けようとしない。その時ある冒険者がリクルートさんに返答した。


「リクルートさんよ。それは余りにも無茶ってもんだぜ。今の『ニーベルンゲン大森林』はダンジョンブレイク直後で大量の魔物が徘徊してるんだぜ。先行した『クロスレイド』が魔物を倒していたとしても危険度が通常の比じゃねえ。この依頼難易度は最低でも金等級だ。けど、ここにいるのはせいぜい銀等級に成りたてか銅等級の連中ばかりだ」


 他の冒険者も「そうだそうだ」と賛同する。こうなっては誰も依頼を引き受けはしないだろう。

 このままじゃ、『クロスレイド』は孤立無援になって全滅してしまうかもしれない。

 そうなれば都市最大のクランを失った『ファルナス』は危険な連中の集まるクラン『ブラッドペイン』によって滅茶苦茶にされる可能性が高い。


「アンジェ、ルシア、トリーシャ、セレーネ……まだやれそうか?」


 問いかけると彼女たちは余裕そうに笑みを見せる。


「今回の戦闘では私はあまり戦っていないので問題はありません。それにアラタ様が危惧している様に『クロスレイド』を失うのはこの都市にとって大きな損失だと思われます。私の意見としては援護に行くべきかと」


「私たちの実力なら補給物資を運ぶ依頼ぐらいなら問題ないと思います。それに五人パーティならある程度の不足の事態にも対処可能です」


「この依頼を成功させれば冒険者ギルドにも『クロスレイド』にも私たちのパーティを強く印象付けられると思うわ。そういう観点からしてもこの依頼は引き受ける価値があると思う」


「わたくしもアンジェと同じで魔力は大して消耗していませんわ。ダンジョン内の戦闘が激化していればわたくしの治癒術が役に立つと思います」


 俺たちの意志は固まった。手を挙げるとリクルートさんを始めとする全員の視線が俺に集中する。


「おい、あいつはさっきアダマントータスを倒したヤツじゃないのか?」


「えっ、ボンバーホークを倒したのを俺は見たぞ」


 ざわつく冒険者たちの言葉を聞いて状況を理解したリクルートさんが俺に近づいてくる。


「あなたは先程冒険者ギルドに登録したばかりの方でしたね。それにあのアダマントータスとボンバーホークという上級の魔物を倒したとか。それを考えればこの中でもっとも消耗しているのはあなた方だと思いますが、本当に依頼を引き受けてくれるのですか?」


 リクルートさんは真剣な眼差しで俺を見ている。この依頼は間違いなく危険度が高い。冒険者になりたての俺に任せていいのか悩んでいるんだろう。


「うちのパーティ全員で話し合って決めました。この依頼は俺たちが引き受けます。それにこの街で一番のクランにも興味ありますし、報酬も大盤振る舞いみたいだし」


「分かりました。それでは依頼を引き受けていただく報酬の一つとしてあなた方のパーティ全員の等級を一段階引き上げます。その他の報酬については無事帰還された後に話し合いましょう」


「分かりました。それで結構です」


 こうして俺は冒険者として鉄等級から銅等級へと上がった。普通なら一ケ月以上かかる道のりをたった数時間で達成したことになる。

 

 リクルートさんから補給物資が詰まったインベントリバッグを預かり、用意されていたポーションを飲むことになった。

 滋養強壮に効果のある飲み物として冒険者ご用達のアイテムだ。ガラスのような透明の瓶の蓋を開けて中に入っている液体を飲み干していく。

 ほんのりと甘い炭酸水が乾いた喉を潤してくれる。思ったよりもジュースに近い味だったので美味しかった。

 ポーションを飲んで数秒程経過すると身体の疲労感が消えていくような感じがした。それに身体の細かい怪我や魔力が回復している。


「ポーションって初めて飲んだけどここまではっきりと効果が分かるものなんだね。栄養ドリンクの強化版みたいな感じなのかな」


「そうですね、特に魔力が回復するのは大きいです。これがあれば二十四時間戦えそうです」


「……いつの時代の企業戦士の話!?」

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