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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第三章 風の神刀と氷なる竜剣

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竜剣ドラグネス

 魔物もほとんど倒され街に帰ろうとした時、遠くから鳥の鳴き声が聞こえた。空を見上げると巨大な鳥が飛んでくるのが見える。


「あれは鳥かな? ってか……デカすぎないか」


「ちょっと待ってください。あれはもしかしてボンバーホークではありませんか?」


 セレーネが血相を変えて口にした物騒な名前の魔物は巨大な鷹のような魔物だ。

 ミサイルのような魔力の弾を発射し眼下にいる全てを破壊して回る危険な存在で、空高く猛スピードで飛んでいるので倒すのが非常に難しい。

 出現したらいなくなるまで耐えるしかないと言われる非常に厄介な魔物で知られている。

 

「面倒な相手が現れましたね。ボンバーホークを倒すのは至難の業です。私もルシアも空を高速で移動するあの魔物を倒すのは難しいと思います」


 アンジェがボンバーホークを倒すのは現状不可能に近いと判断した。他の冒険者も悔しそうな表情で頭上を素早く飛び回る巨鳥を見ている。

 するとボンバーホークから地上にいる冒険者たちに向けて魔力弾が発射され始めた。皆が必死で逃げ回る中、敵は安全な位置から好き放題攻撃を続ける。


『グァーーー! グァッグァッグァッ!!』


 時々聞こえるその鳴き声は反撃する術を持たない俺たちを嘲笑っている様に聞こえる。


「あいつ絶対に笑ってるな、腹立つわぁ~! 何か方法は無いのか」


「方法はあります」


「本当か、アンジェ」


「はい。それはアラタ様とトリーシャが契約を結ぶことです。風の魔力を操るトリーシャであれば空を高速で飛ぶボンバーホークにも対応可能です。ただし、それは彼女が武器化した状態――神刀しんとう神薙かみなぎであればこそです」


 それを聞いて俺はトリーシャを見る。彼女もまた俺を見ていた。お互いそれは無理だろうと言う顔をしている。

 俺は既にアンジェ及びルシアと契約している。ただでさえ魔剣クラスのアルムスとの契約は一名が限界と言われているのに、現在二人と契約している状況なのだ。


 トリーシャは神刀神薙ぎと呼ばれる魔剣や聖剣クラスのアルムスだ。そんな彼女と契約できる能力が俺にあるのだろうか。

 それに可能だったとしても契約するにはお互いが認め合っていなければならない。

 彼女と出逢って一日も経っていないのにそこまでの信頼関係が互いに築けているとも思えない。

 

 そんな俺とトリーシャの心情を考えてかルシアが助言をしてくれた。


「これは私の感覚なんですけど、アラタさんにはトリーシャちゃんを受け入れるだけのキャパがあると思います。私たちアルムスは契約した際に、マスターの精神の器のようなものが感覚的に分かります。アラタさんの場合それがとても大きく感じました。だから私は大丈夫だと思います」


「私もルシアと同じ考えです。だからこそ、この提案をしました。後は二人の信頼関係次第だと思います」


 アンジェとルシアに背中を押されトリーシャと向き合う。俺はまだ彼女のことをよく知らない。

 ただちょっとツンデレっぽいのと義理堅いと思っているぐらいだ。

 逆を言えばトリーシャだって俺のことをよく知らないだろう。互いの情報が不足している状態では信頼以前の問題ではないのだろうか。

 まずはお互いを知る事から始めた方がよいだろう。但し敵の攻撃が始まっているので迅速に。


「ご……ご趣味は……」


「どうしていきなり趣味なんて訊いているんですの?」


「いや、だって信頼関係を築くにはまず相手を知らないと……」


「こんな状況で……バカ……なんですの?」


 このメンバーの中で一番馬鹿っぽそうなセレーネに言われてイラッとしてしまった。それがとんだミラクルを引き起こす。


「他人をバカと言うヤツがバカなんだよ」


「それは聞き捨てなりませんわ! わたくしがバカだと言いたいんですの!?」


「だからそう言ってるんだよ。今俺はトリーシャと話してるの、君は黙ってなさいよ!」


「いいえ、黙りませんわ! わたくしは栄誉ある竜の眷属たる竜剣ドラグネスです。それを掴まえてバカバカバカと……ムカつきましたわ! ……表に出なさいな!」


「残念でした。もうとっくの昔に表に出てますぅ! 前から思っていたけど、セレーネってお嬢様口調で喋っているけど、どうも話し方が変だよな。そのお嬢様設定、絶対後付けだろ!!」


「な……なっ……なんで……!」


 おや? やっこさん、わなわな震えながら口をパクパクさせているぞ。適当なことを言ったのだがもしかして図星だったのか?

 そして恐ろしい事態が起きた。セレーネの胸元に青い色の紋章が浮かび上がったのだ。

 え……うそ……これってもしかして。


「…………マテリアライズ――竜剣ドラグネス」


「はへっ!?」


 テンション低めに俺が唱えると、呆けた声を出しながらセレーネの身体は水の渦のようになり俺の手に収まった。

 そして彼女は左右から三つずつの刃がせり出した七支刀しちしとうのような剣になり、それぞれの刃から氷の刃がせり出し氷の大剣へと変貌した。


「…………」


『…………マジですの?』


 なんだろう。このソシャゲのガチャで狙っている最高レアのキャラではなく、別の最高レアを引いた時のような感覚は。

 嬉しいっちゃ嬉しいんだけど、これじゃない感が強いのだ。俺は無意識にセレーネの竜剣形態をすぐに解除した。


「べへっ!」


 汚い声を出しながらベチャッとした音を立ててセレーネは地面に顔面着地した。それから近くにいたルシアの脚を掴んで大泣きを始める。


「ふ、ふええええええええん! わたくし、あの男にけがされましたわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ぞんざいに扱われ弄ばれて最後はゴミのように捨てられましたわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「よしよし、大変でしたねぇ」


 ギャン鳴きするセレーネの頭をルシアが優しく撫でて慰めている。その間にもボンバーホークによる魔力のミサイル攻撃は続いている。

 これまで経験した中でもトップクラスにカオスな状況だ。

 おまけに俺はトリーシャと契約せずにセレーネと契約をしてしまった。もしかしたらこれでトリーシャと契約するキャパは無くなってしまったかもしれない。

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