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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第三章 風の神刀と氷なる竜剣

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魔石を売って借金返済

 魔石の鑑定をしてもらっている間、トリーシャが話題を振って来た。それは例のイビルプラントの話だ。


「そう言えば、数日前に『試練の森』でイビルプラントが出現したっていう話を聞いたんだけど本当なの? あれは周囲のマナを吸って成長し続ける怪物だから、自然豊かな環境の中では無敵に近いはず。たまたま居合わせた冒険者がイビルプラントを倒したらしいけどにわかには信じがたいのよね。報告を受けた冒険者ギルドが飛竜を手配して上級の冒険者を送り出したらしいけど、結局デマだったって言われてるし」


「あー、それはだね……」


 どう答えるべきか悩んでいる頃、魔石の鑑定も終盤に差し掛かっていた。その時、魔石の山から顔を出した一つを視界に入れるとドワーフ鑑定士の顔色が一気に変わった。

 手を震わせながらその魔石を静かに手に取ると目を血走らせて眺め始める。その様子は今までの物とは全く違っていた。

 あらゆる角度から見ては「おお」と感嘆の声を出している。さらに拡大鏡を使って確認していた。相当念入りに調べているようだ。


 何事かと思い、俺たちも付き添いの受付嬢も見守る中、その魔石をゆっくりと置いてドワーフ鑑定士は語り始めた。


「長年魔石の鑑定を行ってきたがイビルプラントの魔石を鑑定したのは初めてだよ。しかもこれはかなり熟成が進んだ質の高い物だ。状態もいいし最高級品なのは間違いない! もしかしてお前さん達が噂の――」


 トリーシャ達の視線が俺とアンジェ、それにルシアを何度も行ったり来たりしている。はぐらかすのもなんだし、あの時の出来事を素直に話すことにした。

 

「なるほどね。イビルプラントを倒したのはあなた達だったのね。それなら納得だわ」


「そうですわね。アンジェとルシアと同時に契約を果たす程のマスターと彼女たちの力が合わされば可能だと思いますわ」


 俺がアンジェとルシアの二人と契約をしている事、それにかつての彼女たちのマスターと同じく異世界人であることは昨日のうちに説明していた。

 二人は多少驚きつつもすぐに納得していた。俺がアンジェ達のマスターである事に異論はないみたいだった。

 トリーシャとセレーネはその時と同じ反応をしている。意外と俺を認めてくれているという事なのかもしれない。


 居合わせた冒険者ギルドの職員二名は終始驚いてはいたが、こうして目の前に魔石という形で証拠があるため俺が本当のことを言っていると信じてくれたようだ。

 その事実をどのように処理するかは職員さんの判断に委ねることにした。

 

 ――そして話は戻りイビルプラントの魔石の件だ。ドワーフ鑑定士の反応から察するにそれなりの高額が期待される。


「あの……やっぱりこの魔石って相当価値があるんですよね。もしかして五百万ゴールドぐらいはしちゃったりしますかね?」


「五百万ゴールド? 馬鹿を言うんじゃない!!」


 ドワーフ鑑定士は肩を震わせながら大声で否定する。やはり高望みだったというわけか。ちょっと……いや割と落ち込んでいるとドワーフ鑑定士が話を続けた。


「お前さん達はこの魔石の価値が全然分かっていないようだ。――いいか、イビルプラントの魔石はただでさえ市場には出回らない希少価値が高い物なんだ。この魔石はそれに加えて熟成度が高く状態もいい。恐らくもう二度とお目にかかれない代物だ。五百万ゴールドどころか、その倍以上……少なくとも一千万ゴールド以上の価値はある!!」


 それを聞いて俺たち五人の思考がストップした。ごひゃくまんどころかいっせんまん? いっせんまんってなんまんだっけ?


 退化した頭脳を奮い立たせて、俺たちは計算を始める。小学生レベルの話なので大したことは無かったが。

 とにかく金額がどえらい事になっているので皆で相談することにした。

 その際トリーシャとセレーネは魔石の件に関わっていないからと言って俺たち三人の判断に任せることにした。


 俺とアンジェとルシアの相談は数秒で終了した。確かにイビルプラントの魔石は価値があるのかもしれないが、それより大切なものが俺たちにはある。


「「「売却でお願いします!!」」」


 俺たちは『試練の森』で手に入れた魔石を全て売却した。すぐに売却を決定したこともあってドワーフ鑑定士が金額に色を付けてくれた。

 それによって売却値は合計千五百万ゴールドになり俺たちは小金持ちになったのである。

 その内の五百万ゴールドは『ブラッドペイン』への借金返済にあてがわれた。この手続きは冒険者ギルドがやってくれるので安心だ。


 諸々の手続きが終わり奥の部屋から出て来るとトリーシャとセレーネは放心状態になっていた。

 そりゃそうだろう。これから期日までの一ケ月間を馬車馬のように働こうと思っていた矢先、借金が全て無くなったのだから。


 我に返ったトリーシャとセレーネは、俺たちの前に来て膝を折り床に座った。そして上半身を前に倒していく。

 それは土下座だった。周囲にいる冒険者たちは何事かと遠巻きに見ている。

 そんな視線を気にする事も無くトリーシャとセレーネは感謝の気持ちを述べるのであった。


「ありがとう。あなた達がいてくれなかったら私もセレーネも最悪な状況になっていたと思う。こんな事をしても大した意味はないと思うけど、この恩は必ず返すわ。――まだ方法は思いつかないけど、いざとなれば身体で返すのもやぶさかではないわ!!」


「わたくしも同じですわ。必ず――必ず身体で返しますわ!!」


 その瞬間俺は吹き出した。多分「働いて返す」という意味なのだろうが、俺たちの状況を知らない人々からすれば公衆の面前で二人のこの発言はまずい。

 特にセレーネは色々と端折りまくって内容がえらいことになっている。急いで二人を黙らせようとしたが遅かった。


「おい……あいつは確か昨日の変態冒険者だろ? こんな朝っぱらから女二人に変なポーズをさせて何をやっているんだ?」


「まさか、あれが例の調教ってやつじゃないのか? 自分の女だけじゃなくトリーシャとセレーネも一晩で調教したって言うのか。――あいつ、キレてるな」


「あいつはまさか『ファルナス』中の女たちを自分の手込めにしようとしているんじゃないだろうな」


 朝の冒険者ギルド内がざわざわし始める。俺が顔を向けると女性冒険者たちが胸元をガードして逃げて行くのが見える。

 受付の方を見ると受付嬢たちの笑顔が明らかに引きつっていた。俺の目からは一滴ひとしずくの涙がこぼれ落ちた。


 トリーシャとセレーネは非常に真剣な様子なのでそれを咎めることも出来ない。近くではルシアが苦笑いしているのが見える。

 そして、あのアンジェですらルシアと同じ表情をしていた。それがまた俺の不安を一層煽る。


 終わった……俺の冒険者生活は依頼を一つも受けることなく終わった……十分なお金が手に入ったし、しばらく引きこもり生活でもしようかな。

 その時冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれた。建物に入ってきたのは血だらけの男だ。

 その男は真っすぐに受け付けに行くと大声で要件を話し始めた。


「た、大変だ! 『ファルナス』の北側から大量の魔物が押し寄せてきている。――ダンジョンブレイクだっ!!」

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