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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第三章 風の神刀と氷なる竜剣

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パーティ結成

「わたくし達の真名はこの街の冒険者たちに既に知られています。ですからあなたに話したところで何の問題もないのですわ」


「どうしてそんな事になってんの!? 二人にとって危険な状況じゃないか!」


「実は――」


 セレーネの話によると彼女はアンジェを迎えに行くために『ゴシック』を出発し、先日この『ファルナス』に立ち寄りトリーシャと再会したらしい。

 ちなみにアンジェ、ルシア、トリーシャ、セレーネの四人は千年前の魔人戦争で共に戦った戦友なのだそうだ。

 

 再会したトリーシャから、とある依頼を一緒に引き受けて欲しいと頼まれたセレーネは冒険者登録を済ませ、その依頼を引き受けた。

 その依頼というのがクラン『ブラッドペイン』からのものだった。

 正確には冒険者ギルドからの依頼を引き受けた『ブラッドペイン』がトリーシャに仕事を手伝ってほしいと直々に依頼したものだったらしい。

 依頼内容は魔物が頻出する地域にある砦の防衛というものだ。複数の冒険者の力が必要な難易度〝銀〟に相当する依頼。

 報酬額が良かったので万年金欠のトリーシャは二つ返事でこの話に飛びついた。

 

 こうしてトリーシャとセレーネは砦防衛の仕事を手伝っていたのだが、魔物の襲撃対応をしていた時に彼女たちの担当エリアの防壁が何故か破壊されてしまい魔物が砦内に入り込み大きな被害が出てしまった。

 その責任を負わされた二人は多額の請求をされたのだが、これを『ブラッドペイン』が代わりに支払った。

 その時の代償としてトリーシャとセレーネは自分たちの真名を彼等に公表する羽目になったのだ。

 こうして二人は『ブラッドペイン』に借金をして期日までに返済できなければ彼等のクランに入ることになっている。


 その後、借金返済のために報酬額の高い依頼をこなす二人であったが『ブラッドペイン』に所属する冒険者たちがそれを妨害しているらしい。

 それで言い争いになっていたのが先程の冒険者ギルドでの一件だったわけだ。


「何ていうか、非常に胡散臭い話だね」


「胡散臭いってどこが?」


 トリーシャが納得いかないといった表情でテーブル越しに俺に詰め寄る。彼女は前屈みになっているので胸元が丸見えだ。

 本人は気付いていないようだが、これで何となく分かった気がする。もしかしなくても彼女は隙だらけの性格のようだ。そこを完全に狙われたんだろうな。


「そもそも『ブラッドペイン』はクランとしてその依頼を受けたんだよね? だったらクランの人間だけで挑めばいい話じゃないか。わざわざトリーシャに多額の報酬を出してまで依頼する理由がない。あるとすればそれは最初からトリーシャを狙っていたとしか思えないよ」


「あ……」


「セレーネはそれにたまたま巻き込まれたみたいだけど、君も既にヤツ等に目をつけられているみたいだし逃がす気はないだろうな」


 トリーシャとセレーネは俯いて黙りこくってしまった。しばらくしてトリーシャがポツリとこぼした。


「『ブラッドペイン』のクランマスター、ボーマン・ブラッドはアルムスコレクターとして有名なのよ。特に能力の高い女性の姿をしたアルムスを好んでいて毎晩彼女たちとよろしくやっているらしいわ。連中のクランに入るということは自分もそうなるということよ。だから最後まで諦めるつもりはないわ。せめて借金を半分まで返済すればセレーネは免除されるだろうし」


「トリーシャ、あなた……」


 トリーシャなりにセレーネを巻き込んでしまったことを申し訳なく思っているようだ。でも俺の予想ではそうそう思い通りにはいかないと思う。


「そのボーマンって男がトリーシャの言うような人間なら絶対二人共手に入れようとするはずだ。コレクターってのはそう言う生き物だ」


「それではやはりわたくし達は『ブラッドペイン』の慰み者になるしかないんですの?」


 周りは酒や料理を飲んだり食べたりハイテンションになっているが、俺たちのテーブルだけは世界の終わりのような雰囲気が漂っている。

 そんな中、アンジェがトリーシャに質問した。


「トリーシャ、あなたとセレーネは現在高額報酬の依頼に狙いを絞っているんですよね。つまりそれならば借金を返済することが可能だと考えたからですか?」


「そうよ。期日は今から丁度一ケ月後。私は今銅等級の冒険者なんだけど、それなら難易度銀までの依頼が受けられる。その範囲で私とセレーネの二人で達成できそうな高額報酬の依頼をみっちりやって行けばぎりぎりなんとかなる計算なの」


「そうですか……ちなみに借金はいくら位なのですか?」


「…………五百万ゴールド」


 かなりの額だ。これを二人で、しかもたった一ケ月で稼ぐのは容易なことじゃないだろう。だってこれ五百万円ってことだぞ。

 アンジェは少し考えてからトリーシャにある提案をした。


「冒険者ギルドで依頼書を拝見したのですが、難易度が低くても必要冒険者数が多い依頼は報酬額が高い印象でした。もっと大人数のパーティで挑めるような依頼を狙っていけば、より確実に借金返済が可能になるのではないでしょうか」


「それはそうだけど、『ブラッドペイン』に目をつけられている私たちに手を貸してくれる冒険者なんていないと思うわ。実際断られたし」


「そうだったんですね。でも、もしも手を貸してくれる冒険者がいたらそういった依頼をこなしていけますよね」


 ルシアがそう言うと俺の方を見て微笑んでいる。それに気が付いた他の女性三名も俺に視線を集中させてきた。

 美女四名に一斉に視線を向けられるのは何だか緊張する。


「それじゃそれでやってみよう。パーティ五人なら受けられる依頼の選択肢も増えるからね。明日早めに冒険者登録を済ませたらすぐに依頼を受けて出発しよう」


 予定を立てるとトリーシャとセレーネが慌てふためきながら再び前のめりになる。 

 今度は巨乳な二人のものが目の前で同時にぶるんと揺れたので一瞬目を奪われてしまった。

 おっと危なかった。今は真面目な話の最中だった。


「その提案は私たちとしてはありがたいけど、そんな事をすれば確実に『ブラッドペイン』から目をつけられるわよ!」


「そうですわ。彼等のクランは広い範囲に影響力を持っています。この街はおろか他の街でも冒険者をやりにくくなるはずですわ」


「そうだろうね。でも、俺も既にその『ブラッドペイン』の冒険者をぶっ飛ばしてるんだよね。つまり二人と同じ境遇ってわけ。それなら俺たちでパーティを組んで連中に一泡吹かせるってのも一興じゃない?」


 そう言って笑って見せるとアンジェとルシアも微笑んでいた。トリーシャとセレーネはしばらくポカンとしていたが吹き出すように笑い始める。


「あはははははははは! 確かにそうだったわね。あれは本っ当に見ていて最高の気分だったわ」


「ふふふふふふふふ、そうですわね。あの威張り散らしていた子悪党が空中をすっ飛んでいった様は見ていて溜飲が下がる思いでしたわ」


 こうして俺たちはパーティを組む事になった。目標は一ケ月以内に五百万ゴールドを稼ぐこと。

 食事をしながら今後の予定を立てて今日は解散となった。

 俺とアンジェとルシアは宿屋へ戻り早めの就寝をすることにした。明日は朝早くから活動を始めなければならない。

 それにしばらくは忙しくなりそうだ。

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