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マナギア~異世界で契約した銀髪メイドが魔剣だった件。魔人と戦う俺は生きた鎧へと変身し無双する~  作者: 河原 机宏
第三章 風の神刀と氷なる竜剣

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冒険者ギルド

 この亜人族の少女コンビが口喧嘩をしているのはチンピラのようなガラの悪い男たちだ。


「ちょっと! その依頼は私たちが先に受けようとしていたのよ。どうしてあなた達が割り込んで来るのよ。こっちはあなた達の〝クラン〟に一日でも早く借金を返そうとしているのに邪魔しないでくれる!?」


「そんなの知らねーな。それはお前等の都合だろうが。俺たちもこの依頼には目をつけてたんだ。譲れねぇな!」


「そんな事を言って先日も私たちが高額報酬の依頼を受けるのを邪魔したじゃない!」


「だから知らねーつってんだろ! いい加減諦めて大人しくうちのクランの一員になりな。あの金は言うなりゃ、お前等の身受けの金だったんだからよ」


 男たちが彼女たちを挑発するように面白がりながら話していく。詳しい事情は分からないが、周囲の冒険者の反応を見る限り男たちは煙たがられている印象だ。


 ちなみに〝クラン〟とは十名以上のパーティメンバーから成るチームの呼称だ。

 どうやら男たちが所属しているクランがあの少女たちを取り込もうとしているみたいだな。

 その亜人族の少女二人は悔しそうに男たちを睨み続けており膠着状態のままだ。

 その時、受付嬢の一人が申し訳なさそうな顔で両者の間に入って来た。


「あの~、申し訳ないのですがこの依頼はたった今取り下げになりました。実は旅人の方がこの依頼書の盗賊五人を掴まえて門番に引き渡したらしいのです」


「なんですって!?」


「なんだと!?」


 争いの元になっていた依頼がキャンセルになったことで双方は驚き少女二人は黄昏ていた。


「そんな……盗賊を掴まえるだけでこの報酬の依頼なんてそうそう出ないのに。これじゃ借金返済どころか今月の家賃すら払えないわ……」


「ちょっ……どうするんですの、トリーシャ! このままではわたくし達は本当に彼等のクランの一員にされてしまいますわ。そんなことになったらどんな目に遭わされるか」


「分かってるわよ、セレーネ。とにかく今は他の依頼を受けましょう。出来るだけ報酬額の高いのを……それにしてもいったい誰よその旅人っていうのは! 余計な事をしてくれて、もう本当に最悪だわ!」


 嫌な予感がしてくだんの依頼書を見てみると案の定、そこに描かれていた似顔絵は山道で俺たちを襲って来た盗賊だった。

 これはタイミング的にまずい。とにかくこの件には触れずにそっとしておこう。

 

「ああっ、あなたはさっき盗賊を掴まえた方ではないですか?」


「え!?」


 いきなり声をかけられて振り向くと、そこにいたのは門番の男性だった。

 どうしてあなたがここにいるんですか? いや、それよりもこの状況でその話を振られるのは非常に良くない。

 話を逸らそうと思ったが既に遅し。


「いやー、見つかって良かった。あの連中は報奨金が掛けられている盗賊だったのですが、それに気が付いたのはあなた方を通した後だったんです。冒険者の方のようだったのでこちらに伺ったのですが見つかって本当に良かった。はい、これをどうぞ」


「あ……ども」


 全てを暴露しながら門番は俺の手を取ると、その上にずっしりと重い何かが詰まった革袋を置いて帰って行った。

 周囲の視線が俺に刺さっているのが分かる。恐る恐る顔を上げるとトリーシャと言われた金髪ケモミミ少女がキョトンとした表情で俺を見ていた。

 その隣ではセレーネと呼ばれていたエルフメイドが同じように俺を見ている。


「てめーか、盗賊どもを門番に引き渡したのは! あの依頼は俺たちが目をつけていたのに余計な事をしくさりやがって! クラン『ブラッドペイン』の獲物を横取りするとはいい度胸じゃねーか。この街で無事にやっていきたかったら自分が取るべき行動は分かるよなぁ?」


 少女二人と言い争いをしていた男が今度は俺を恫喝してきた。何だこいつは。これじゃまるで盗賊と大差ないぞ。こんなヤツが本当に冒険者なのか。


「俺はこの街に来たばかりで、そのブラッドなんたらとかいうのは知らないよ。それにこのお金は俺が盗賊を掴まえて正当な報酬としてもらったものだ。それを恫喝して奪おうなんて、あんたはそれでも冒険者なのか? それともあんたが所属している、そのブラなんとかっていうクランにはあんたみたいな盗賊紛いの連中しかいないのか?」


「なっ……なん……だと、てめぇ!!」


 俺を睨む男の顔がどんどん醜く赤くなっていき、顔の至る所に青筋が立っている。これは相当頭にきているようだ。


「いい度胸だ。この街で俺たちに喧嘩を吹っかけてタダじゃ済まねぇって事を教えてやるぜ。 ――おい!」


 男が大声を出すと近くにいた仲間の男が前に出た。するとその胸部の辺りに紋章が浮かぶ。


「マテリアライズ!」


 仲間の男は一振りのロングソードへと姿を変えて恫喝男の手に収まった。その刀身を見せびらかすようにしてニタニタと笑っている。

 どうやら仲間の男はアルムスだったようだ。何気に男性のアルムスって初めて見たな。

 そう思っていると金髪ケモミミ少女とエルフメイド少女が俺に忠告してくる。


「何をぼうっとしてんのよ! あいつは本気であなたを傷つける気よ。アルムスを装備した魔闘士は盗賊なんかとは実力が違うんだから、丸腰でいたらあっという間にズタズタにされるわよ。早くに逃げなさい!!」


「そうですわ! あなたの言うように『ブラッドペイン』の方々は危険人物ばかりです。彼等に目をつけられたらひとたまりもありませんわよ! ここは逃げた方が賢明ですわ」


 二人共本気で俺を心配してくれているようだ。意外といい人達なのかもしれない。


「もう遅いぜ。それに丁度良い。トリーシャ、セレーネ、俺たちに逆らったバカがどういう目に遭うかその目をひん剥いてよーく見ておくんだな!!」


「ここは冒険者ギルドの建物の中だろ? どうせやるんなら外でやろう」


「うるせー! 俺に指図するんじゃねえ!!」


 恫喝男が剣に魔力を伝わらせていく。だがその量は微量で大したことは無い。俺の出方を見るためにまずは力を抑えめにしているのだろうか。そうだとしても弱すぎる気がする。

 

「アラタさん、私がいきましょうか?」


「今のところ大丈夫だよ。まずは向こうの動きを見てみる」


「分かりました」


 ルシアが自分を装備するように促してきたが正直言ってそんな必要は無さそうだ。盗賊とそんなに変わりない。

 向こうはここで戦いを始める気のようだ。それなら出来るだけ周囲に被害が出ないように済ませるだけだ。


「オラオラオラオラ!」


 雄叫びを上げながらロングソードを力任せに振ってくる。一応刀身には魔力を乗せてはいるがやっぱり大したことは無い。

 何回か攻撃を避けたところで相手の力量はだいたい分かった。ここから反撃する。


「ちっ、ちょこまかと……死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺の頭目がけて刃が振り下ろされる。俺はそれを真剣白刃取りで受け止めた。


「な…なんだとぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「悪いけどこのまま終わらせる!」


 両手に力を入れてそのまま刀身をへし折った。するとアルムスの男の武器化が強制解除され、ぼろぼろの状態で床に倒れ込んだ。

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