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氷竜の閃光

『俺は本気だ!』


『ご主人様……本当にマジ……なのですね』


 意識がシンクロしているセレーネは俺の意志がダイレクトに伝わり分かってくれたようだった。

 ウェパルは動揺し動きが硬直している。俺とセレーネはウェパルの返答を待ち彼女から視線を逸らさずその場に留まる。

 そして、睨み合いがしばらく続くとウェパルが口を開いた。


『……例えあなたが本気であったとしても、この問題には多くの障害があります。それらを退ける力が無ければ何の意味もありませんわ』


『ちなみにその障害っていうのは何なのか教えてもらえるか?』


『……我々ディープは現在『アビス』の傘下に入っています。もしそこから抜けようとすれば報復されるのは間違いないでしょう。必ず十司祭が刺客として動き出します。それらを退ける力がなければ何も始まりません。――故に少なくともあたくしを倒せる実力が必要です。あたくしを認めさせたいのならば、まずはその実力を見せて欲しいですわね』


 ここがきっと俺たちとウェパル達ディープとのターニングポイントだ。ここで失敗すればディープと折り合いをつける機を失う。


『なるほどね、つまり実力テストって訳か。よく分かったよ。――それじゃあ悪いけど、足腰立たなくなるほどヒイヒイ言うことになるが恨むなよ!』


『ご主人様……言い方がお下品ですわよ』


『悪かったな下品で。――セレーネ、ウェパルを戦闘不能に追い込む。最大火力の魔術を使いたいがいけそうか?』


『……あと一回だけなら何とか。ですが恐らくそれで<マナ・ドラグーン>は稼働限界を迎えます。その後はどうしますか?』


 <マナ・ドラグーン>になって、初っぱなから限界を超える出力でドラゴニックアイシクルランチャーを撃った。

 そしてエグゼキューション形態フォームによるアブソリュートゼロを広域に放ったことで相当負荷が掛かってしまった。

 しかしウェパルに勝つ為にはもう一撃とっておきの魔術を食らわせる必要がある。


 その後の戦術を念話でアンジェとルシアとも共有し、俺とセレーネは動き出した。


『頼む、持ってくれよ<マナ・ドラグーン>! ――アイシクルビット全基射出、セルシウスフォーメーション!!』


 ウェパルの周囲に十四基のアイシクルビットを展開し包囲網を敷く。既に一回見せていた為、向こうに慌てる様子はない。

 実際ウェパルは全身に魔力による障壁を展開している。中途半端な威力の攻撃では効果は薄いだろう。


『これで――っ!?』


 ウェパルを戦闘不能に追い込むべく攻撃に転じようとした時、敵の口が大きく開き魔法陣が展開された。

 それは先程ウェパルが放ったハイドロブレスのものだった。一瞬で魔法陣に魔力が充填され発射態勢が整う。


『あたくしが黙って攻撃を受ける訳がないでしょう。さっきより威力は落ちますが、それでも鎧闘衣マナギア一体を倒すには十分なはず。――ハイドロブレス!!』


 間髪入れず超水圧の砲撃が発射され<マナ・ドラグーン>に直撃した。


『逃げだそうとしても無駄ですわ! ハイドロブレスの水圧からは逃れる事は不可能。一度巻き込まれれば砲撃が止むまで食らい続けるしかないのです!』


『――そうみたいだな』


『なっ!?』


 得意げに語るウェパルに話しかけると驚きであヤツの声が詰まる。思いのほかこっちが平気そうなので驚いたんだろう。


『アイシクルアーマー損耗率六十パーセントを超えますわ。あと十秒ほどで完全破損します!』


『よし! その瞬間が勝負だ。脱出後即座に反撃に出るぞ!!』


 ハイドロブレスの直撃を受けて増加装甲であるアイシクルアーマーに亀裂が入っていき間もなく破壊された。

 その瞬間、粉々になったアイシクルアーマーのかけらが防御魔法陣を展開し一時的にハイドロブレスから<マナ・ドラグーン>を守ってくれる。

 その隙に一気に浮上し俺はハイドロブレスの射線上から抜け出した。間もなく防御魔法陣は消滅したが、<マナ・ドラグーン>には大したダメージはない。


『ハイドロブレスから抜け出した……それもほとんど無傷で……? そんなバカな!?』


『そう思うだろ? そんなお前の常識を覆す力が世の中にはたくさんあるんだよ! ――今度はこっちのターンだ!!』


 既にウェパルの周囲に配置して置いた全てのアイシクルビットに魔力をチャージし、<マナ・ドラグーン>最後の攻撃を実行する。


『全アイシクルビット魔力フルチャージ完了! マスター!!』


『ああ、いくぞっ!! 光と氷の合体魔術――ドラゴニックレイで沈めぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 包囲網の中心にいるウェパルに向けて、全アイシクルビットから光と氷の特性を併せ持った閃光を一斉に発射した。

 閃光は魔神化ゴエティアした彼女の魔力障壁を削り切り堅牢な身体に撃ち込まれていく。

 攻撃が外れた閃光は他のアイシクルビットに命中すると乱反射して再びウェパルに降り注ぎ、容赦なくその巨体に突き刺さって身体の内外から凍らせていった。


『なっ、これは……あたくしの身体が……内と外から……凍ってい……く……!?』


『そうだ……これが俺とセレーネ、二人の魔力で繰り出す魔術ドラゴニックレイだ。水の加護を持つお前でも身体の内側から広がっていく氷結を止める事は出来ない』


『くっ……確かにその通りです……わね。でも、これではあたくしを倒した事には……なりませんわ。すぐに動くことは出来ませんが、時間が経てば……』


 ウェパルはかなりダメージを受け身体が氷結したが致命傷には至っていない。身体がでかいからか耐久力が異常だ。

 けど、そんな事は全部織り込み済みの作戦なので問題ない。


『ご主人様、今の攻撃で<マナ・ドラグーン>は限界……ですわ。わたくしも……』


『ああ、分かってる。セレーネ、ありがとうな。あとは――』


「――私たちに任せてください!」


 氷原に下りて鎧闘衣形態を解除するとセレーネはその場でぺたんと座り込んで動けなくなってしまった。

 そんな彼女の近くにルシアとアンジェが到着し労いの声を掛ける。


「セレーネちゃん、お疲れ様でした。次は私の番ですね」


「それでは私はセレーネを連れていったん後退します。ルシア、アラタ様をよろしくね」


「ええ、任せて!」


 ルシアがサムズアップして答えるとアンジェは微笑みグロッキー状態のセレーネを連れてこの場から離れた。

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