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マナ・ドラグーンの本領発揮

 ウェパルは氷漬けの状態から自由になると、巨大な海蛇の身体をしならせ海中に忍ばせていた尻尾を鞭のように振るって襲ってきた。

 さっきまでの遠距離戦一辺倒とは打って変わって接近戦を仕掛けてきた。

 予想外の動きに反応が遅れ、巨大な尻尾が<マナ・ドラグーン>の身体をかすめるとその勢いで吹き飛ばされてしまう。


『ちぃっ、何てパワーだ! 体勢が立て直せない……』


『アイシクルビット展開、飛行サポートに回しますわ!』


 セレーネの機転でアイシクルビットの力場作用で体勢を立て直す。すると再び海蛇の尻尾が勢いよくこっちに向かってくるのが見えた。


『今度こそ当てる! 沈みなさい、異世界人ッ!!』


『やられるか! 肉弾戦はこっちの得意分野なんだよ!』


 左腕に破壊の魔力を集中し、人差し指と中指、薬指と小指をそれぞれ密着させる。それに親指を加えて竜の爪を連想させる白い三本爪のオーラを放出した。


『ああっ! それは、わたくしがさっき使って不発に終わった闘技――』


『その通り! 名付けて白零・竜爪だ!!』


 俺に向かってきたウェパルの尻尾を巨大化させた白零・竜爪で掴み受け止める。


『このマスター、わたくしの技を堂々とパクりやがりましたわ!!』


『いいものは覚えて使う。それが俺のやり方です!!』


 アイシクルビットの力場を利用して飛行状態を保ち尻尾打撃を完全に受けきる。すかさず右腕も白零・竜爪を展開し、両手でウェパルの尻尾をしっかりと把持した。


『な……何をする気ですの!?』


 まさかの展開に海蛇の顔が引きつった。やっぱりこいつは接近戦には不慣れの様子。それならば近接戦闘の洗礼をとことん味わわせてやるまでだ。


『何をするって……こうするんだよ!!』


 巨大海蛇の尻尾を両手で掴んだまま、身体全体の動きを利用して敵をぶん回し始める。ウェパルの全身を海中から引きずり出し徐々に回転速度を上げていく。


『なんっ!? そんなバカな……魔神化ゴエティアしたあたくしを振り回すなんてぇ……!?』


『全身の動きを上手く使って魔力でパワーを底上げすればこういう事も出来るんだよ!! 今のお前の見た目は怪獣みたいだからな。怪獣映画っぽく、とりあえずこれで吹っ飛べ! どおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 限界まで回転速度を上げて大海原に向けてウェパルを投げ飛ばす。


『キャアアアアアアアアアアアアッ!!!』


 生まれて初めてであろう回転投げ飛ばしの刑に遭って、ウェパルは悲鳴を上げながら派手に水しぶきを上げて海に叩き込まれた。


『ふぅー、スッキリしたな』


『どこがですの! こんな無茶をして……<マナ・ドラグーン>の腕がもげるかと思いましたわよ!』


 セレーネは激怒していた。確かにちょっとばかり頑張りすぎたかもしれない。

 それにしても今更だが、敵味方でお嬢様口調で喋られているせいか、時々セレーネかウェパル、どっちの台詞なのか分からなくなる時がある。


『あー、紛らわしい』


『紛らわしいですって!? この男、言うに事欠いてわたくしをディスりやがりましたわ! うちのマスターはDV男でした。……うう、ぐすん……』


『泣くな泣くな、泣くんなら戦いが終わってからにしろ。――そろそろ来るぞ!』


 激しい水しぶきを上げながら海中からウェパルが顔を出す。海を割るように出現した巨大海蛇の身体から大量の海水が流れ落ちていった。


『よくも……よくも、あたくしを投げ飛ばしてくれましたわね! こんな恥辱を味わわされたのは生まれて初めてですわ!!』


『へー、そいつは悪かったね。尻尾をぶつけてきたからてっきりそれを掴んで投げ飛ばして欲しいのかと思ったわ』


『そんな訳ないでしょう。その人を小馬鹿にした態度……後悔させてあげますわ!!』


 憤るウェパルの全身を覆うように魔力のオーラが放出され海に巨大な魔法陣が展開された。

 その規格外サイズの魔法陣に魔力が注入され海ごと輝き出す。ハイドロブレス以上に強大な魔力が集中し、海が震え津波が巻き起こった。


『これは水系統魔術の最高峰メイルシュトロームですわ。この大渦に呑み込まれた物は粉々に粉砕され海底に沈み二度と浮上する事はない。例えそれが島であってもね。恨むのなら、あたくしを本気にさせた自分を恨むことですわね!』


 荒れ狂う海は凄まじい勢いで渦状になっていき、巨大な瓦礫が呑まれて渦の中心部に向かっていくと途中で粉々になって海の中に消えていった。


『アカン……これマジでアカンやつや』


『いきなり聞き慣れない喋り方を始めましたわ! 正気を保ってくださいご主人様!』


 失礼な、俺は正気だ。

 それよりもウェパルが放ったメイルシュトロームは海上に浮かんでいた物だけでなく『ミスカト島』や『ダウィッチ島』の外縁部を急速に削り、破砕した大地を粉々にしながら海底に沈めていく。

 このままじゃ本当に付近の島ごとそこにいる人々が海の藻屑と化してしまう。

 どうすれば――。


『ご主人様、エグゼキューション形態フォームを使いましょう。それならばメイルシュトロームを止めることが出来るはずですわ』


『本当にあれを止める事が出来るのか? 一体どうやって……』


 セレーネからメイルシュトロームを止める戦術のイメージが流れ込んでくる。その大胆不敵な内容に笑えてくる。


『あはははは!! なるほどな、確かにそれならいけるかもしれない!』


『そうでしょう。相手が水ならばこちらは氷。やってやれない事はないはずですわ!』


『――よし、やってみよう! これが上手くいけば一気に戦いを終わらせられる!!』


 眼下では今も大渦による侵食が進んでいる。すぐに何とかしないと『アーガム諸島』が『ソルシエル』の地図から消えることになる。

 焦る気持ちを落ちつかせながら戦いに終止符を打つべく行動を開始する。


『リミッター解除、リアクター出力最大! 執行形態――ドラゴニックドライブ発動しますわ!』


 <マナ・ドラグーン>の頭、胸、肩、前腕、下肢部に氷の増加装甲アイシクルアーマーが着装され防御力が大幅に向上した。

 それと同時にドラグネスから追加のアイシクルビット七基を射出した。これで合計十四基のアイシクルビットが<マナ・ドラグーン>の周囲に展開された事になる。


 ドラゴニックドライブを発動させた事で攻撃力と防御力が大幅に強化された<マナ・ドラグーン>は、拠点防衛用の鎧闘衣マナギアとしての本領が発揮されるのだ。

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