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撃て! ドラゴニックアイシクルランチャー

 俺の言葉を聞いて絶望に打ちひしがれていたセレーネの心に火が灯る。途端にやる気スイッチが入って反撃の準備を始める。


『合点承知! ドラグネス、砲撃形態に移行します』


 ドラグネスの形状が七支刀から大砲の形態に変化した。それを右脇に抱え右手でグリップを握る。


氷結アイシクル砲身バレル展開! 照準回します』


『了解……照準来た!』


 ドラグネスに氷で生成された砲身が装着されると、左手でフォアグリップを握り砲口をウェパルに向ける。

 <マナ・ドラグーン>の片方の目に照準型魔法陣が展開され、ドラグネスの砲口とリンクしウェパルをロックオンする。


『リアクター出力全開、バイパス解放……ドラグネスへ魔力充填(チャージ)開始。充填率、五十……六十……七十……八十……発射可能域に到達。対ショック準備開始』


 <マナ・ドラグーン>の両腰と両翼の先端から地面にワイヤーアンカーが打ち込まれ、さらに足底部からは滑り止め用の爪が地中に食い込み身体を固定させた。


固定具クリートロック完了、魔力充填率九十……九十五……百パーセント! 臨界点に到達――撃てますわ!』


 照準型魔法陣に表示されるウェパルもまた攻撃準備が整い奴の魔法陣も輝きだした。その直後、魔法陣から膨大な水の砲撃が俺に向かって発射された。

 そして――。


『これならっ! ドラゴニックアイシクルランチャー――ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 ほぼ同時に発射されたハイドロブレスとドラゴニックアイシクルランチャーは空中で衝突した。

 一般の上級魔術をも遙かに凌ぐ大量殺戮級の魔力レーザー砲。

 そんな膨大なエネルギー同士のぶつかり合いは凄まじく、大気を大きく震わせ生じた衝撃波が大地を割り波を逆流させ雲を吹き飛ばしていく。

 最初は互角かに思えた魔力レーザー砲の衝突だったが、徐々に俺たちの方が押され始めた。


『うっ……ぐ……くぅ、くそ……パワー負けしてるのか』


『うふふふふ、残念でしたわね。大した出力ですけれど、このサイズ差による魔力量の差は埋めようがありません。このままジリジリ追い詰められて恐怖の中で消えなさい!!』


 ウェパルのハイドロブレスに押されて魔力衝突の衝撃波が<マナ・ドラグーン>を襲ってくる。

 装甲表面が削れていき身体を固定しているワイヤーがきしむ音が聞こえ射撃体勢を維持するだけで精一杯だ。

 ふと回りを見るとアイシクルビットの力場で守られている皆の姿が視界に入った。


『このままやられれば俺たちだけじゃなく、皆も一緒に死んじまう。……そんな事をされてたまるか! ――セレーネ、ランチャーの出力をさらに上げるぞ。ありったけの魔力を送り込むからドラグネスに回せ!!』


『そんな事をしたら砲身が持ちませんわ! そうなったら、少なくともこの戦闘ではランチャーは使用不可能になりますわよ!!』


『どの道このままじゃ全員やられる! 奴のハイドロブレスを押し返す間だけ持ってくれればいい!! ――やるぞっ!!』


『もうこうなったら一か八かのヤケクソですわ!! リアクター出力オーバーフロー! ドラグネスへ魔力伝達……魔力出力……百五十パーセント!!』


『いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 ドラグネスから大幅に出力が上昇した氷の砲撃が発射され始める。その衝撃でドラグネスの氷結砲身に亀裂が入り始めた。


『砲身に亀裂発生! 長くは持ちませんわ!!』


『頼む……もう少しだけ持ってくれ!!』


 砲撃の出力が上がった際に片足の固定具が地面から抜けてしまうが、<マナ・ドラグーン>をその場に固定するワイヤーアンカーのお陰で何とか踏みとどまる事が出来た。


 出力が増したドラゴニックアイシクルランチャーはハイドロブレスを一気に押し返しウェパル目がけて飛んでいく。

 ウェパルは必死にハイドロブレスのパワーを上げ抵抗を試みるが、押し返すことは出来ず巨大な海蛇の身体へと直撃した。


『そんな……こんな事ありえな……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』


 ハイドロブレスとドラゴニックアイシクルランチャーという二つの砲撃をまとめて受ける形となったウェパルは身体がズタズタになる。

 着弾時の爆発で彼女の足場である湖が巨大な水柱を上げ、中にウェパルを閉じ込めた状態で一瞬で氷結した。

 ウェパルも急速冷凍されて氷漬けになり、断末魔の叫びが木霊し聞こえなくなると静寂が訪れた。


『はぁ……はぁ……、やった……やったぞ……!!』


 ドラグネスの氷結砲身が砕け落ち、砲撃形態から元の七支刀の形状に戻った。


『何とかギリギリ持ちましたわね。これで砲撃形態はしばらく使えなくなりましたわ』


『問題ない。砲撃は威力がある分チャージに時間が掛かるし発射直前は動けなくなるからな。そもそもこんな一騎打ちで使えたこと自体がまれだ』


 <マナ・ドラグーン>の身体を固定していたワイヤーアンカーと足底部の固定具を収納し、自由に動けるようになる。

 俺たちの前方には巨大な氷柱の中で氷漬けになった巨大海蛇の姿があった。

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