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獅子とサメ

 ウェパル率いる魔人たちとアンジェ達の戦いが始まりそれぞれが激戦を繰り広げる中、その中でも特に熱い肉弾戦をしているのはロックとフォルネウスの組み合わせであった。

 ロックとフォルネウスの拳や蹴りがぶつかり合い互角の攻防戦が続いていた。


「ちっ、こいつ何てタフネスだ! 破砕掌を何発も食らわせたのに平然としていやがる!」


『身体が頑丈なだけじゃないよ。こっちと同じ格闘戦を得意としてる上に攻撃力もかなり高い。連続で攻撃を受けたらこっちが先にやられる!』


 武器化したレオは魔甲拳グレイプルとなってロックの両腕に装着されている。

 左腕は防御力が高く盾の役割を果たしており、フォルネウスの攻撃を防いできたがレオはその威力が危険なレベルだと認めていた。


 一方のロックもフォルネウスと何度も拳を交わしたことでその実力の高さを理解していた。


「ああ、そうだな。奴の打撃は非常にキレがある。それに殴り合って分かったが、奴はまだ本気を出していねぇ。……そうだろう、フォルネウス?」


 ロックの問いに対しフォルネウスは不敵な笑みを見せ、サメを思わせる鋭い歯がちらっと見える。

 その外見は一般のディープのオスとは大きく違いヒューマの美丈夫びじょうふの如き姿をしている。黄緑色の髪はさらさらで優雅に風になびいている。

 さらに武闘家である彼は普段細身でありながらも、いざ戦闘が始まると魔力の高まりによって筋骨隆々の猛者へと変わるのであった。


「ふっ……脳みそまで筋肉で出来ているような馬鹿かと思ったが、どうやら多少はまともな思考が可能なようだな。中々良い読みをしている」


「うるせーよ!! 初対面の人間に単細胞呼ばわりされる筋合いはないっつーの!」


『相手のペースに乗せられてるよ、注意して。それにしても少し戦っただけでロックの特徴を掴むなんてかなりの洞察力だね』


「……戦いが終わったら覚えてろよ、レオォォォォ……!」


 ロックとレオの軽快なやり取りを見ていたフォルネウスは品良く笑っていた。それに気が付いたロックはばつが悪そうな顔をしながら構える。


「随分と余裕だな。まさかこれまでの打ち合いで自分の方が優勢などと思っているのではないだろうな?」


「そう思いたいのは山々だけどよ。戦ってる相手がそんなに平然としてたら、悠長にしちゃいられねぇよ。――いくぜっ!!」


 ロックはその場から跳びだし全身に鉄壁のオーラを纏って突撃攻撃を繰り出した。


「これでもくらいな! 獅子王武神流、鉄鋼てっこう獅弾しだんッ!!」


 ロックの弾丸体当たりが直撃し、フォルネウスに衝突したまま押し込んでいく。

 だが、その攻撃はフォルネウスに届いてはいなかった。

 フォルネウスは左腕にサメの頭部の形状をしたオーラを展開し鉄鋼獅弾を防いでいた。


「鉄鋼獅弾を防いだ……だと!?」


「……良い一撃ではあるが、私のシャークバイトを崩すには――弱すぎる!」


 フォルネウスはサメのオーラを纏った左腕を振るってロックを吹き飛ばすと、彼が体勢を立て直す前に懐に入った。

 

「戦いは一瞬で状況が変わる。これはその答えだ、ロック・オーガン。――噛み砕け、シャークバイト!!」


 サメのオーラの口が大きく開き鋭い歯が出現すると、そのままロックに噛みつこうと襲いかかって来る。

 咄嗟に左腕の盾を展開しシャークバイトを受け止めると、フォルネウスはそのまま魔甲拳グレイプルの盾を噛み砕こうと左腕の歯を突き立てる。


『いだだだだだだっ!! こいつ、オイラをこのまま噛み砕く気!? 自慢じゃないけど、このオリハルコン製の身体はそう簡単には壊せないよ!』


「それはどうかな? 現存する金属の中で最も硬度が高いオリハルコンであったとしても無敵ではない。その剛性を超える衝撃をピンポイントで受ければ破壊するのは難しいことではない」


 するとシャークバイトの歯先が徐々にグレイプルの盾に食い込んでいく様子がロックの目に入った。


「なっ……グレイプルが! レオ、大丈夫か!?」


『……っ! オイラは大丈夫、この程度問題ない……よ!』


 言葉では強がっていても武器化し意識がリンクしているレオの痛みがロックに流れ込んでくる。


「くっ、この野郎! 離れろぉぉぉぉぉ!!」


 相棒の痛みを感じ取ったロックは激昂し右腕に魔力を集中するとフォルネウスの顔面にパンチを叩き込み引き剥がす。

 バックステップして距離を取り、左腕の状態を確認するとグレイプルに噛み痕がいくつも残っていた。


「すまねぇ、レオ。俺が防御でやり過ごそうとしたから……!」


『何言ってんのさ。盾で防御するのなんて当たり前でしょ? 驚くべきは敵の攻撃力だよ。さっきのシャークバイトとかいう闘技……オリハルコン製のボディにも簡単に穴を開けた。生身であんなのに食らいつかれたら、どれほどのダメージになるか分かったもんじゃない。まともに受けるのは危険すぎる!』


「分かった。あれには要注意だな」


 ロックが警戒し身構えると、視線の先にいるフォルネウスは口端からにじみ出た血を指で拭い感心していた。


「ほう、今のはいいパンチだったな。これまで打ち込んできた技よりも優れていたぞ。アルムスの危機に反応してより強い力が発揮されたという訳か……」


「そんなの当たり前だろ。相棒がヤバけりゃ必死にもなるだろうが! それの何処がおかしい!?」


 ロックは怒りを露わにしながらフォルネウスに攻撃を再開する。二人は拳や蹴りを連続で繰り出し、激しい攻防戦に突入した。


「人間がアルムスを心配するという状況に今まで出くわした事がなかったのでな。私が知っている彼等の在り方は、アルムスが奴隷のように契約者に従うというものだ。アルムスがどんなに傷つこうがそんな事はお構いなしだった。だが、それは当たり前だとも言える。なぜならアルムスの本質は武器だからだ。武器は戦では消耗品に過ぎない。そんな消耗品を気に掛けること自体がナンセンスなのだからな」


 フォルネウスの拳がロックの頬の皮膚を裂き血しぶきが舞う。すかさず蹴りが追加で入るが両腕をクロスして防御するとそのまま後方に蹴り飛ばされる。


「……上手いな。蹴りが入る直前で後ろに跳んで威力を殺したか」


「お前に褒められても嬉しくねぇよ。それにアルムスは消耗品なんかじゃない。俺たち人間と共に歩み戦う仲間だ! それにレオは俺にとってかけがえのない家族だ。家族が傷ついて黙っていられるかよ!!」


『……ロック』


「家族……か、アルムスをそのように考える者もいるのだな。もしも、人間全てがお前のような考え方であったなら『アビス』がここまで力を付けることも無かっただろう」


「どういう意味だ?」


 フォルネウスの意味深な発現にロックは思わず聞き返す。レオは思い当たるところがあったのか口をつぐむ。

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