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大空の覇者マナ・ファルコン

「乙女の腹にフルスイングで鈍器をぶち当てるなんて、優しい瞳のわりにバイオレンスな事をするでやんすなぁ。一瞬意識が飛んだでやんすよ」


 フォカロルは口端から滴る黒い血を翼で拭うと目を細めてスヴェンを睨む。そして彼女の魔力が増幅していくのをスヴェン達は感じ取っていた。


『これは……魔神化ゴエティアする気!?』


「本気という訳か。今まで色々と茶化してくれたが……ルイス、準備を頼む。魔神化に対抗するにはアレしかないからな」


『分かったわ、マスター!』


「どうやらあんたらを甘く見過ぎていた様でやんす。このまま負けたらフォルネウスに笑われてしまうでやんすからね。……この姿には出来ればなりたくはなかったでやんすが、背に腹はかえられない。――魔神化!」


 増大する魔力のオーラに包まれてフォカロルの身体は膨れ上がり一回りも二回りも巨大化していく。

 それと同時に人間の女性的な部分は羽毛に覆われていき、彼女は巨大で獰猛な凶鳥へと変貌した。


『この姿になったからには確実に仕留めさせてもらうでやんすよ!』


 魔神化したフォカロルが巨大な翼を羽ばたかせると周囲に突風が吹きあらゆる物を吹き飛ばしていく。

 そんな嵐の如き状況の中でスヴェンは魔力障壁を張り大地に立っていた。そして彼もまた魔神に対抗すべく魔力を高めていく。


『こっちの準備は完了。いつでもいけるわよ!』


「了解した。――イクシード! 飛翔、<マナ・ファルコン>!!」


 足元に展開された魔法陣の光に包まれスヴェンとルイスはマナの粒子となって融合し、二メートルを超える人型へと姿を変えた。


 その人型は灰色を基調とした装甲を纏い、背中には金属製の翼を装備し、猛禽類の意匠が施された頭部では紫色のデュアルアイが光を灯し始める。

 獰猛な大空のハンターを模した鎧闘衣マナギア――<マナ・ファルコン>が稼働を開始した。

 翼から力場を発生させ飛翔するとフォカロルと同じ高度まで上昇する。


『リアクター出力安定。各駆動部動作問題なし。グラビティエール力場固定、出力三十パーセントで飛行開始。――<マナ・ファルコン>、正常に起動したわ』


『ああ、これで決着をつけるぞ。状況によってはエグゼキューション形態フォームも使うかもしれん。ルイス、いつでもいけるように準備を頼む』


『分かったわ。それじゃあ、あのエロハーピーに止めを刺しにいきましょう!』


 <マナ・ファルコン>はブリューナクを装備すると魔神化したフォカロルへと突っ込んでいく。

 するとフォカロルも<マナ・ファルコン>に向けて飛び込む。


 猛禽類を思わせる二体は空中で激突した。

 フォカロルは魔力で硬化させた翼を剣の様にして斬り込み、<マナ・ファルコン>はそれをブリューナクで受け止める。


『いい鎧闘衣でやんすなぁ。奇しくも翼を持った者同士、激しい空中戦ができそうでやんす!』


『そう言って余裕でいられるのも今のうちだ!』


 スヴェンは槍でフォカロルの翼を弾くと急上昇して上空から落下速度を合わせた刺突攻撃を敢行する。

 しかし、その槍は鋼の様に硬くなった翼によって防がれてしまう。


『なんて硬さなの!? あたしの刃が通らないなんて……!』


『ふふふっ、わっちの翼は攻撃、飛行、防御といった機能を併せ持っているでやんすよ。例えオリハルコン製の武器でも魔力を集中したわっちの翼を傷つけるのは難しいでやんす』


 何度も攻撃を繰り返してもブリューナクの刃はフォカロルの翼にダメージを与えられない。

 自らの切れ味に自信を持っていたルイスはこの事実に少なからずショックを受けていた。


『魔人戦争の時だって、あたしの刃が効かなかった事なんてなかったのに! うぅぅぅ~!!』


『あらあら、獣のような唸り声を上げるなんてはしたないでやんすよ。そういうのは殿方と仲良しする時に出すものでやんす』


『な、仲良しって何よ……仲良しって……!!』


『うん? 分からないでやんすか。単刀直入に言うとセッ――』


 その瞬間、ブリューナクの刃がフォカロルの翼にダメージを与え羽根が数枚舞い散る。驚いたフォカロルは大きな体躯をひるがえすと後方に飛んで距離を取った。


『――っつぅ、今のはどうやったでやんすか!?』


 傷つけられた翼を労るようにしながら飛ぶフォカロルは、どうして翼がダメージを受けたのか理由が分からず怪訝な様子で<マナ・ファルコン>を見つめる。

 一方のスヴェンはブリューナクを構え直し穂先をフォカロルに向けた。


『何度か攻撃をしてみて分かった事がある。貴様の翼は確かに生半可な攻撃ではダメージを受けない特別製だ。しかし、だからといってオリハルコン製であるブリューナクの攻撃を何度も受けて無傷なのはいささか不可解だった。その理由がやっと分かった。――その翼とそれを構成する羽根は強靱な防御力を持ちながら、そのしなやかさも失われてはいなかった。その柔軟性のある羽根でブリューナクの攻撃を吸収分散させていたんだ』


『えーと、それってつまり軟体生物に打撃攻撃をやって無力化されるのと同じ感じ?』


『ああ、その通りだ。それで刃に魔力を集中して攻撃の際に引力が働くようにした。その結果、奴の羽根を逃がさず斬り込める様になった訳だ。――それと、ルイス。奴の言動に惑わされるな。ああやって相手の戦意をくじくのが奴のやり方だ。集中力を乱した瞬間にやられるぞ!』


『あう……ごめんなさい』


 説明中もスヴェンはフォカロルの一挙手一投足を逃すまいと、いつでも対応できるように攻撃の姿勢を崩さない。

 その集中力にフォカロルは感心していた。


『ふーん、どうやら会話を楽しみつつ……という訳にはいかなくなった様でやんすね。それならそろそろ大技を使うでやんすよ。わっちの風の魔術……堪能するでやんす!』


 フォカロルは翼を羽ばたかせ魔法陣を複数展開する。魔力が充填され全ての魔法陣が発光し発動準備が整う。


『直撃を受ければいくら鎧闘衣といっても只じゃすまないでやんすよ。――ストームトルネード!!』


 それらの魔法陣から竜巻が一斉に放たれ<マナ・ファルコン>目がけて突き進んでいく。

 スヴェンは自分を狙ってくる複数の竜巻を次々と躱すが、それらは執拗に目標を追いかけて彼を追い詰めていき紙一重で何とか回避する。

 その瞬間スヴェンは痛みを感じ、確認すると回避したはずの部分、その装甲に鋭利な刃物で斬りつけられた様な痕があった。

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