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迫る魔人たち


「そっか……そりゃ……凄い偶然……。俺の親父と……お袋の名前と同じだったから……ぐぅ……」


 そう言うとアラタは深い眠りの中に落ちていった。

 

「レイジとホタルが両親と同じ名じゃと……? ちょっと待て、アラタよ。その話をもっと詳しく聞かせい!」


 クレアが大声で語りかけても身体を揺すってもアラタは寝息を立てて起きなかった。

 「ぐぬぬ」と声を出してもどかしそうにするクレアをアンジェが引き剥がし、熟睡しているアラタをソファに運んで横にする。


「これを飲んだら最低三十分は起きないのはクレアも知っているでしょう? 元々はあなたが開発したゴシック秘伝のレシピの一つなのですから。――それにアラタ様のご両親に関しては目を覚ましてからでも遅くはないはずです」


「う……そう……じゃな。すまん、わしとした事が取り乱してしまった。あの二人が関わっているかもしれんと思ったらつい……」


「あなたはホタル教官とは親友の間柄でしたからね。焦る気持ちも分かります。私だって本当は今すぐにでも真相をアラタ様に聞きたい。――もしも、アラタ様がレイジ殿とホタル教官の間にできた子であったなら、こんなに嬉しい事はないですから」


「……そうじゃな。アンジェの言う通りじゃ」


 しんみりした様子でアラタの寝顔を見守る二人。そこにスヴェンとロックが入ってくる。


「……もしもアラタが魔人戦争で活躍した二人の子供であったなら、こいつが『ソルシエル』にやって来たのも只の偶然とは思えなくなってきたな」


「それって運命だって言いたいのか? へぇー、スヴェンって案外ロマンチストなところがあるのな」


「……! う、うるさいっ!! そういうお前こそどうなんだ、ロック。アラタがこの世界にやってきた事をどう説明する?」


「そんなの話したって結局は予想に過ぎないだろ? 偶然だろうが運命ゆえの必然だろうが、こいつは今こうして俺たちと一緒に戦ってる。それで十分じゃねえか」


「ロックもたまには良いこと言うね」


 ロックの締めに皆が頷いているとレオが笑いながら茶々をいれる。

 ロックは「一言余計だ」と言い、レオを捕まえて頭をグリグリしていると周りで笑いが起きるのであった。

 そんな時、一人の魔闘士が血相を変えてVIPルーム改め作戦会議室に入ってきた。


「た、大変だ! 海岸の方からとてつもなく強い連中が現れた! 既に何人もやられてる。救援を……救援を頼む!!」


 報告を終えた魔闘士も身体中傷だらけで、強敵出現を告げるとその場で力尽き倒れてしまう。

 セレーネが容態を確かめると安堵の表情を見せヒールを掛ける。


「命に別状はありませんわ。怪我を治して休ませてあげれば大丈夫です」


 治癒術によって傷が癒えた魔闘士を休ませるとアンジェ達は先程までの和やかなムードから一変して戦闘態勢に切り替えた。


「魔人が出てきたと考えるのが妥当でしょう。クレア、作戦はどうします?」


「うむ。トリーシャはアラタ同様アスタロトとの戦いで消耗しきっているからここで休んでおれ。セレーネはアラタとトリーシャの護衛として待機。残りの者は魔人との戦いに打って出る。――皆、覚悟は出来ておるか?」


 クレアの言葉に全員が勇ましい表情で頷く。部屋から出て行こうとするとケン達が激励の声を掛け送り出す。


「よろしくお願いします。こちらも増援を出して周囲の魔物に対処します」


「分かりました。よろしくお願います――セレーネ、我々がいない間アラタ様とトリーシャをお願いします」


「分かりましたわ。ご主人様たちは任せてください。アンジェ達も気をつけて」


 アンジェ達がいなくなると作戦会議室は慌ただしくなる。傷ついた魔闘士への救援や各所への連絡のために人々が忙しなく動き出していた。

 そのような中、セレーネは眠り続けるアラタの前髪をそっと撫で彼が目覚めるのを待つのであった。

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