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九尾の力、光と風の刃

 念話は切れたが久しぶりにアンジェの声を聞いたような気がしてほっとした気分になる。

 会話の感じからしてアンジェ達も状況をある程度把握しているみたいだった。きっとスムーズに対処してくれるはず。


『敵、攻撃が来るわ!』


『おっと!』


 大量の毒針が俺を狙って飛んできたが、スピードが速い<マナ・レムール>なら余裕で回避できる。

 

『戦いの最中に随分と余裕じゃないか。……ええっ!!』


『あんまり、あーしらを舐めてるかかると死んじゃうよ!』


『それは悪かったな。ちょっと商談中だったもんでね。でも、それも良い方向でまとまったから問題ないよ。――こっからは休憩なしで一気に決めてやる!』


 挑発してくるアスタロトとラアルの二人は相当頭にきている様子だ。卑劣な手段を平気で使ってくる奴等なだけに何をしでかすか分からない。

 それにディープの大軍には十司祭ウェパルや配下の魔人が数名もいる。

 

 アスタロト相手にこれ以上戦いを長引かせるわけにはいかない。


魔神化ゴエティアした俺の攻撃から逃れると思うなよ。ヴェノムスレイブの連撃で沈めやぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 アスタロトは毒剣ヴェノムによる猛毒の斬撃を連発してくる。

 回避に専念し躱し続けるも敵はしつこくヴェノムスレイブを連発してくる。そこに違和感を覚える。


『何だ……あいつ何を企んでる? 無駄な攻撃をいつまでもやるような奴じゃないはずだ』


『ちょっと待って! 周囲にヴェノムスレイブが滞留してるわ!!』


『何だって!?』


 何発も放たれた猛毒の斬撃は消滅せず、<マナ・レムール>を包囲するように空中に留まっている。

 そこから毒の粒子が拡散し装甲に触れるとジュワッという音と共に煙が立つ。


『つっ……これは……装甲が溶けてる?』


『装甲表面が溶解してるわ。連続で受ければ<マナ・レムール>の装甲でも持たない!』


 こいつはまずいと思っているとアスタロトとラアルの高笑いが聞こえてくる。


『キャハハハハハハハハ! だから言ったじゃん。ドロドロに溶かしてやるってね。その猛毒の牢獄は脱出不可能の地獄の空間だよ。鎧闘衣マナギアの装甲でも長くは持たない。――はい、あーしらの勝ち確定。残念でーした! 本気であーしらに勝てると思った? バーカ、バーカ、キャハハハハハハハハ!!』


『クカカカカカカカカカカカ! まだまだこの程度じゃ終わらねーぜ。お前は危険だからな。念には念を入れさせてもらうぜ』


 アスタロトはヴェノムスレイブを放ち続け、猛毒の牢獄の層を厚くしていく。

 それに比例して猛毒の粒子の量も増えていき<マナ・レムール>の身体の至る所に付着し徐々に溶かしていく。


『このままやられるかよ! はああああああああああああっ!!』


 魔力を解放し猛毒の粒子を消滅させるが、幾重ものヴェノムスレイブからすぐに粒子が放たれ振り出しに戻ってしまう。

 脱出しようと猛毒の檻と化したヴェノムスレイブに接近すると、粒子が濃くなり装甲へのダメージが一気に上がる。

 結局牢獄の中心部に戻り魔力障壁を張ってダメージを最小限に抑える。しかし、これも長くは続かないだろう。


『ムダ、ムダ、ムダ、ムダァァァァァァァァァァァ!! どのみちテメーは溶けて消える。いいねぇ、実にいい……クカカカカカカカカカカカカカカカ!!』


『本当にサイッコーだね、アスタロト。キャハハハハハハハハハハハハ!!』


 二人の笑い声が響く中、苛つきつつも俺とトリーシャは冷静だった。あの高笑いコンビを倒すための準備は着々と進み、それも完了しようとしていた。


『トリーシャ、準備はできたか?』


『ええ、丁度今終わったわ。リアクター最大出力、リミッター解除――エグゼキューション形態フォーム、ストライクナインテール発動!!』


 <マナ・レムール>の腰回りに九基のボード状のテールユニットが出現すると風の力場を発生させる。

 敵の猛毒の粒子は風の力場にかき消され継続ダメージはストップした。だが、ストライクナインテールの真骨頂はここからだ。


『この出力ならいける。トリーシャ、一気にここを突破するぞ!』


『了解よ、マスター。リアクター及び各駆動部は正常に稼働、思い切りぶん回して大丈夫よ!』


 魔力を最大に高め身体を覆う風のオーラを巨大な鳥の形へと変えていく。執行形態でのこの技のパワーなら猛毒の牢獄を破壊できるはずだ。


『<マナ・レムール>が執行形態を発動させた? あいつ、まだそんな魔力が残ってたの!?』


『そうこなくちゃおもしろくねぇ。ラアル、出し惜しみはなしだ。あいつがヴェノムジェイルから出てきたらヴェノムスレイブを最大で叩き込むぞ!』


 アスタロト達にはもう俺たちを軽んじる様子はない。ここからはお互いに本気の攻防戦になる。その手始めに、まずは猛毒の牢獄を破壊する。


『こいつで突っ切る。風の闘技、伍ノ型――花鳥かちょう風月ふうげつッ!!』


 風の大鳥となって周囲を覆うヴェノムスレイブに突撃する。

 猛毒の粒子は風のオーラに阻まれ俺たちには届かず、逆に消滅し猛毒の牢獄から脱出する事ができた。


『やった……脱出できたわ!』


『よっしゃあ、この調子で全部破壊する!!』


 花鳥風月を維持したまま空中に滞留している残りのヴェノムスレイブに突っ込んでいき全て消滅させた。

 あんな猛毒をばらまく危険物がいつまでも残っていたらさすがに嫌なのでこれでさっぱりした。


 花鳥風月が終了すると間髪入れずにアスタロトが急接近してくる。毒剣ヴェノムにありったけの魔力が込められていた。


『死ねぇぇぇぇぇぇ!! 異世界人ッ!!』


『神刀神薙ぎでもあーしの全力の一撃を食らえば持たないよ!! これで終わり!!』


 全力のヴェノムスレイブを神薙ぎで受け止める。

 猛毒の斬撃は神薙ぎ本体には届かず刀身を覆っていた魔力のオーラに阻まれていた。予想外の事態に魔神化したアスタロトの目が見開かれる。


『何だと……何だそれは!?』


『あーしの毒刃が壊されて……!』


 神薙ぎの刃は光と風の魔力が合わさったオーラに包まれ、侵食しようとしてくる猛毒のオーラを破壊し押し返している。

 これは『ファルナス』を旅立った後の訓練で編み出した光と風の複合闘技だ。


『光の魔力に風の魔力を合わせた閃光の刃――天零てんれい白牙びゃくが。もうお前等の卑劣な毒は俺たちには届かない。消え失せろ!!』


 神薙ぎの刀身は光の風を纏い猛毒の刃を圧倒消滅させる。

 天零白牙は斬光白牙などの大技に比べれば一撃の威力は低いが、刀身に魔力を宿らせ連続使用ができる。

 これならアスタロトが放つ猛毒の魔力を破壊しつつ効果的なダメージを与えられる。


『そんなもので俺がやられる訳がないだろうが!!』


『いいや、やれるね! 常時発動する天零白牙ならお前等の毒ごとその禍々しい装甲も斬れる!!』


 正面から接近し袈裟懸けを放つとヴェノムの防御の上からアスタロトの身体に斬撃が入る。

 そこから間髪入れず横薙ぎにすると黒い血を噴き出しながら敵は後方に吹っ飛んでいった。

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