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化け狐は空を舞う


 魔神化ゴエティアしたアスタロトと鎧闘衣マナギア<マナ・レムール>へと変身した俺とトリーシャの戦いは最初からフルスロットルだった。


『死ね、死ね、死ね、死ね……死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』


『こいつ、やかましいんだよっ!!』


 アスタロトが毒霧を噴射すると範囲内の密林がたちまち枯れ果てていく。その威力は先程までとは桁違いだ。

 今の俺は毒を無効化することが可能だが、奴の毒には触れたものを腐食させる効果がある。まともに食らえば、いくら鎧闘衣の装甲でもただでは済まない。


 神薙ぎを振るい魔力を乗せた剣圧で毒霧を消滅させていく中、枯れ果てた木片は余波で空中に舞い上げられて島中に降っていく。


『やばっ、これじゃ皆に木が当たる!』


『これぐらい皆なら大丈夫よ。魔力障壁を張れば何てことないわ。それよりも次が来るわよ、注意して!』


 毒霧に紛れてアスタロトが接近し、禍々しい形に変化したヴェノムで斬りつけて来る。神薙ぎで防御すると刃の接触部から火花が散る。


『レムール……化け狐という意味だったはずだが、まさかレムール祭の元ネタとなった鎧闘衣とはな。中々におもしろいシチュエーションじゃないか。その白い装甲をグチョグチョに溶かして内部のエナジストを引きずり出してやる。クカカカカカカカカカカカ!!』


『そうかよ。だったらこっちは、その薄気味悪い身体を斬り刻んで海にまいてボールデストロイの餌にしてやる。こんな毒ヤロウじゃ腹を壊すだろうけど……な!!』


 剣戟の最中に蹴りを入れ、左腕でぶん殴って大木に吹き飛ばす。アスタロトからうめき声が漏れ赤紫色の目で俺を睨む。


『こいつ……俺をあんな低級魔物の餌にするだと? ふざけるなぁ!!』


『アホか。そんなの冗談に決まってるだろ。お前みたいな歩く有害物質を捨てたら不法投棄になるだろうが。最終的にはルシアの炎で焼却処分が妥当だな』


『……貴様ァァァァァァァァァァ!!!』


 煽ってみるとアスタロトは激怒してなりふり構わず突っ込んでくる。とりあえず口勝負は俺の勝ちみたいだ。

 怒りで動きが単調になったところに一撃食らわせてやる。


『この距離なら……。風の闘技、弐ノ型――穿空せんくう! 貫けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』


 神薙ぎに魔力を集中し研ぎ澄ませた風の突きをアスタロトの腹部に撃ち込んだ。貫通はしなかったものの、直撃した事で敵の動きが一時的に止まる。

 その隙に懐に入って奴を上空に打ち上げる。その際、魔力が干渉し合って再び周囲の木々が粉砕されて空高く舞い上がっていく。


 砕けた木片の群れが<マナ・レムール>の装甲にぶつかっては更に細かく粉砕される。

 大量の枯れた木片が舞う中、戦いは空中戦に移行した。ダメージから回復しきっていないアスタロトに連続斬りを浴びせ蹴りを入れて吹っ飛ばす。


 魔人特有の黒い血液をまき散らしながらもアスタロトは体勢を整えてカウンターを仕掛けようと狙っていたのである。

 一旦距離を取って敵の出方を窺うことにした。


『危ねえなぁ。今、反撃しようとしてただろ』


『ちっ、勘がいい奴だ。本当に虫唾がわく奴だぜ……』


 今のところはこっちが優勢だ。しかし、向こうの毒の腐食攻撃は危険だ。木であれば一瞬で枯れ果ててしまう。

 あれを生身の人間にやられたらどうなるか、あまり考えたくない。


『右側三時の方向に複数の魔力反応……どうやら皆無事みたいよ。それにアンジェ達も合流しているみたい』


 横目でトリーシャの指示した方角を見ると確かに皆の姿があった。

 その近くには毒にやられていた選手たちもいて、まだ動けないみたいだが会話している様子からセレーネの治癒が間に合ったのだろう。


『全員無事よ。頑張った甲斐があったわね』


『……ああ! これで心置きなく戦える。――トリーシャ、ここでアスタロトを倒すぞ。奴が皆の所に行けば今までの努力が無駄になる』


『それだけじゃないわ。戦いが長引いて『ミスカト島』にもつれ込んだら大勢の犠牲者が出る。そうなる前に短期決戦を仕掛ける必要があるわ』


 眼下の『ダウィッチ島』は既に『ミスカト島』の付近にまで移動していた。

 その時、俺は息を呑んだ。


 『ダウィッチ島』を取り囲む様に沢山の何かが海にいる。拡大して見るとそれはディープの大軍だった。

 更に海中には巨大な何かの影が見える。規格外の戦力が『ダウィッチ島』を引っ張って『ミスカト島』に向かっている。


『あの数が一斉に攻撃してきたら『ミスカト島』は……持つのか?』


『ちょっと待って、アンジェから念話が繋がってるわ』


 電話が繋がってるみたいに言われて少しおもしろかったが、状況的にそんな余裕はない。

 念話は魔力を用いてある程度離れた距離でも会話が出来る魔術だ。ハンドフリーで電話をしている感じで超便利。


『アラタ様、トリーシャ、ご無事で良かったです。状況的に加勢は出来ないと考えていますが二人だけでやれそうですか?』


『ああ、問題ない。敵は毒攻撃を得意としてるからアンジェ達の判断は正しいよ。詳細は後で説明するけど俺には毒は効かないから安心してくれ。――それとディープの大軍がこの島を『ミスカト島』にぶつけようとしてる。奴等は混乱に乗じて無差別攻撃を企んでるらしい。皆はそっちの対処を頼む。俺とトリーシャはアスタロトを倒したら皆と合流する』


『……分かりました。ディープの方はお任せください。――アラタ様、トリーシャ、ご武運を』

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