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友か信頼か①


 アラタとアスタロトが一騎打ちを始めた頃、ロック達は毒に冒された負傷者をセレーネの所へと連れて行く為『ダウィッチ島』内を大急ぎで移動していた。


「くそっ! 船着き場まで大した距離はないってのに、次から次へと魔物が邪魔しやがる!」

 

 ロックが悪態をついているとアーガムトレントの集団が行く手を阻むように展開し、枝を鞭の様にして攻撃してきた。

 ロックはビュンと音を立ててしなる枝を躱し間合いを詰めると両腕に装備した魔甲拳グレイプルに魔力を送り込み、渾身の打撃を放つ。


「だらああああああああああ!!」


『グギャアアアアアアアア!!』


 ロックのパンチはたった一発でアーガムトレントの胴体を砕き絶命させる。

 しかし、まだ魔物は沢山いてロック達の進むべき道を閉ざしていた。


『アラタ達と別れてから間もなく十分が経過するよ。船着き場まではまだ距離がある。このままじゃ――』


「分かってる! 敵はご丁寧に一直線に並んでる。レオ、一気になぎ倒すぞ!!」


 ロックは全身に魔力を纏わせ魔物の群れに突っ込んでいくと、敵の眼前で加速した。


「邪魔する奴は粉々にぶっ飛ばす! 獅子王武神流、鉄鋼てっこう獅弾しだんッ!!」


 鋼の弾丸と化したロックは猛スピードで突っ込み、複数いたアーガムトレントを次々に打ち砕き全滅させた。

 粉々になったアーガムトレントは物言わぬ木片となって大きな音を立てながら倒れ、周囲の木々の風景に溶け込んでいく。


「はぁ……はぁ……ざまぁ見ろ……」


『ロック、息が荒いけど大丈夫? 何か調子が悪そうだけど変な物でも拾って食べた?』


「そんな事する訳ないだろうが! 何かさっきから身体の調子が悪いんだよ。妙に身体が重いし身体が熱い。こんな大事な時にどうしたってんだ……」


 不調を訴えるロックであったが、それは彼だけに限った事ではなかった。

 負傷者を重力魔術で運んでいるスヴェンと護衛をしているシルフィもまたロックと同じ症状を訴えていた。


「一体どういう事だ? なぜ三人共同じ状態に?」


「この感覚って症状こそ軽いけど毒を食らった時に似てる様な気がする。けど、ボク達は敵から毒攻撃を受けていないはずだよね」


 三人は不調を感じつつも船着き場を目指して先を急ぐ。その間、クレアは魔力感知で彼等の状態を調べていた。


『……ふむ。三人共どうやら毒に当てられている様じゃの』


「「「はあっ!?」」」


『ちょっと待ってください。スヴェン達は敵から毒攻撃を受けていなかったはずです。それに、あたし達アルムスは毒状態になっていません。一体いつ毒なんかに?』


 スヴェン達が毒状態になった経緯が分からずルイスはクレアに質問すると彼女は答えた。


『あのアスタロトという男は毒を得意としていた。レムール祭出場者はアルムスと契約している事から奴のパートナーも毒攻撃を得意とするアルムスの可能性が高い。そういう連中の戦術の一つに大気中に毒系統の魔力を散布し徐々に相手を弱らせるというものがあったはず。奴と相対した時にそれを仕掛けられていた可能性が高い』


『――そうか! オイラ達は武器化していたから濃度の薄い毒は効かなかったんだ。でもロック達は呼吸や皮膚から少しずつ毒を吸収していたんだね』


 そこに再び魔物の集団が出現する。ロックとシルフィはスヴェンを守るように前後から襲い来る魔物を迎撃した。

 シルフィは雷撃の矢を連射し次々と魔物の頭部を撃ち抜いていく。しかし、次第に精度が落ちていき一撃で仕留められなくなっていく。


『シルフィ、大丈夫か?』


「……大丈夫、大した事ないよ。少し指先が痺れてきただけ。敵に当てるだけなら問題なくやれる」


 敵を打ちのめす中、ロックはある事に気が付き大樹の方に視線を向けた。戦闘中に集中力を乱すロックに対しレオは注意する。


『どうしたのロック。敵が目の前にいるんだよ!』


「おい……レオ。俺たちがアスタロトの所にいたのって二、三分くらいだったよな」


『――え? それぐらいだったと思うけど、それがどうしたのさ?』


「それじゃあ、今もあそこに残って戦っているアラタはどうなるんだ? 大気中に毒が満ちてるんだろ、防ぎようがない。毒を吸収し続けたらこんなダメージじゃ済まないはずだよな?」


『――っ!!』


 目の前にいた魔物を全て倒したロックは踵を返し大樹に向かって走り出そうとする。それをクレアが制止した。


『待て、ロック、レオ! こやつらを放って戻るつもりか!!』


「ああ、そうだよ! こんな毒への対策なんてアラタもしてなかった。あいつは今、毒に冒されながら十司祭と戦ってるんだぞ。そんなんで勝てる訳がない!! 船着き場はもう近いはずだ。後はお前等に任せる!!」


『お主等がいなければ進行速度が一気に落ちる。それどころか守りが手薄になったところを魔物にやられる可能性がある。わしらは問題ないじゃろうが、毒で動くこともままならない選手たちは確実に死ぬ。それでもいいのか?』


「そいつらは元々、俺たちを罠に嵌めた連中なんだぞ。あいつの――アラタの命と引き換えになんか出来る訳がないだろうが! そいつらには悪いが俺には仲間の命の方がはるかに大事なんだよ!!」

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