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終わらぬ激戦

 アスタロトが落ちた場所では粉砕された木片が飛び散って煙が舞っており、その姿は視認できない。


『手応えあったわね。でも、十司祭があの程度でやられるとは考えにくいわ。注意して』


「分かってる」


 トリーシャが言っていた魔眼とやらのお陰で周囲の魔力の流れが見えるようになった。さらに感覚面も強化されていて、アスタロトの位置が正確に分かる。

 奴は既に落下した場所から移動し大樹を伝って上へ上へと駆け上がっていく。そして俺がいる枝よりもずっと上方へと移動すると、空中へと飛び出した。


「クカカカカカカカカカカ!!」


 アスタロトの気味の悪い笑い声が上空から降り注ぐ。本当に不快な声だ。

 

『この……! よくもやってくれたね。これで全部消し去ってあげるよ!!』


 膨大な魔力がアスタロトから感じる。その魔力はヴェノムに伝わり禍々しく強力な毒のオーラが広がっていった。

 毒のオーラに触れた木々は一瞬で朽ちて、枯れた木片が俺の近くを通り過ぎ落ちていく。


『来るわっ、向こうはかなりの魔力を次の攻撃に込めてくる。こっちも全力でいくわよ!』


「了解!!」


 白零・闘衣で全能力を引き上げた状態で神薙ぎに魔力を集中する。

 身体から溢れ出るオーラの余波で足場にしている枝に亀裂が入り細かい木片が飛び散っては破裂していく。


「死ねよやあああああああああ!! ヴェノムスレイブ!!!」


 猛毒の巨大な斬撃波がヴェノムから放たれ周りの木々を根絶やしにしながら一直線に俺に向かって来る。


「くたばるのはお前だよ、アスタロト! これでぶっ飛べ――白牙びゃくがァァァァァァァ!!」


 極限まで魔力を高めた白牙を敵の斬撃波に向けて解き放つと空中でぶつかり合う。

 しばらく互角だった二つの斬撃波であったが、次第に白牙が押し始めた。アスタロトの毒の刃は少しずつ分解されていき規模が縮小していく。


「なっ……ヴェノムスレイブが……消えていくだと……!?」


「斬り裂けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 ヴェノムスレイブを消滅させた白牙はそのままアスタロトに直撃した。


「がっああああああああああああああああああああ!!!」


 白牙をまともに食らったアスタロトは絶叫を上げながら、白い斬撃波と共に空の彼方へ飛び去り爆散した。

 その様子を見届けた俺は白零・闘衣を解き深呼吸をしながら息を整える。


『お疲れ様。やったわね……あの状況を覆すなんて今でも信じられないわ』


「はは……そうだね。俺も信じられないよ。でも、トリーシャがあの時駆けつけてくれなかったら確実に終わってた。――ありがとう」


『そ、そんなの当然でしょ! 私はあなたのアルムスなんだし……そ、それに……さっきあなたも言ってたでしょ。そ、その……俺の女……だって……ごにょごにょ……』


 最後の方は声が小さくてよく聞こえなかったのでもう一度聞こうとすると突然大きな地震が起きた。

 島全体が揺れて遠くでは鳥たちが鳴きながら飛んでいく姿が見える。

 その姿を追って空を見てみると雲がもの凄い勢いで流れていくのが見えた。


「これって一体……?」


 依然として島は大きく揺れていて雲は画面を早送りしたかの様に流れ去っていく。この状況は普通じゃない。

 

『……もしかしてこれって島が動いているんじゃない?』


「島が……? そんな、どうやって?」


 その時、本戦が始まる前のミーティングを思い出した。

 ここ『ダウィッチ島』は、大樹の根が海底に根ざして島が固定されている状態だったはずだ。

 もしもその根が断ち切られれば島は海面に浮いた状態になる。そこに何かしらの強い力が働けば島全体が動くかもしれない。


「嫌な予感がする。とにかく皆と合流しよう。本当に島が動いてるとしたら船にいる皆が危険だ」


『そうね。急ぎま――』


 言いかけた時、俺たちの近くに何かが落下し枝の上に着地した。それが何なのかは見ればすぐに分かった。


「本当にしぶとい奴だな。ちくしょう!」


 それはズタボロになり黒い血液を身体中から吹き出しながらも不適な笑みを見せているアスタロトだった。

 ダメージで顔を覆っている包帯がなくなり素顔が露わになっている。その顔を見て俺はぞっとした。


 顔のほとんどは傷だらけで鼻や唇はそげ落ち、口の端は深く裂けている。とてもまともな状態ではなかった。

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