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ケラウノス

『アラタ、ロック、スヴェンの三名はそのまま戦線を維持。その間にわしとシルフィで敵に大打撃を与える』


「結構数がいるけど可能なのか?」


「大丈夫だよ。ボクとクレアならやれる。皆はもう少しその状態で頼むよ。――それじゃあ、いくよ!!」


 クレアとシルフィに考えがあるらしく魔力を高めていく。ミストルティンが雷光を帯び、その光がシルフィを包んでいく。


「凄い魔力だ。一体何を……?」


『これは……多分アレをやるつもりだわ。下手に動くと危ないから可能な限りこの位置で戦って』


 トリーシャは二人がこれから何をするつもりなのか見当がついているみたいだ。

 どうやらレオとルイスも分かっているらしく、それぞれのパートナーに派手に動かないように指示している。

 そしてシルフィは凄まじい魔力を練り上げるとミストルティンを天にかざして射撃体勢に入った。

 上空に巨大な魔方陣が出現し魔力が充填され輝き始める。


『リアクター最大出力。魔方陣形成、魔力充填完了。――シルフィ!』


「了解ッ! これで一網打尽にするよ。ケラウノス……いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 シルフィが雷撃の矢を上空の魔方陣に放つとそれを起爆剤にしたかのように魔方陣が拡大発光しその範囲が数倍にまで膨れ上がる。

 その直後空を覆ように展開された魔方陣から一斉に雷が降り注ぎ、俺たちの周りにいる魔物の群れを焼いていった。

 しばらく続いた雷鳴と閃光による支配が終わり周囲を見渡すと、あれだけいた魔物たちは一匹残らず絶命していた。


「何て威力だ。あんなにいた魔物を全部倒すなんて……」


『今のが聖弓ミストルティン最大の魔術ケラウノスよ。見ての通りえげつない攻撃範囲と火力を誇ってるわ。大量にいる雑魚の殲滅方法としては多分これ以上のものはないでしょうね』


 あまりの威力にトリーシャの説明がほとんど頭に入ってこなかった。とにかく雑魚散らし最強技という認識でいいのだろうか。

 消し炭になった魔物たちを前にロックとスヴェンも驚きを隠せない。


「確かにこいつはえげつない魔術だな。普通に戦ってたらまだまだ時間がかかったはずなのに一撃かよ」


「さすがは魔人戦争でアルムス代表として活躍しただけの事はあるな。しかしこれだけの大技だ、シルフィは大丈夫なのか?」


 そうだ。こんな規格外の攻撃をしたんじゃ相当な負担がシルフィに掛かるはず。

 彼女の安否を確かめると、そこには「一仕事終えた~」と大きく伸びをし馬耳をぴピクピク動かす彼女がいた。


「……シルフィ、全然元気そうだね」


「あはは、さすがに結構魔力を消耗したけどまだまだいけるよ。ケラウノスならもう二、三発は使えるかな」


『ふふん! シルフィはわしがマスターと認めた逸材じゃぞ。そこらへの凡人魔闘士と一緒にされては困るわ。んははははははははははははは!!』


 シルフィ本人はもとよりあんな必殺技を使った直後だというのにクレアも全然平気そうだ。タフだなぁ。


「それにしてもどうしてこんな状況になったんだ? あんなに魔物が集まるなんて普通じゃないぞ」


「ああ、あれか。……くそっ! 思い出しただけで腹が立つ!!」


 スヴェンが左掌に右拳を打ち付けて怒っている。何だ何だ一体なにがあったんだ?


『ダンジョンに入った後、あたし達は運良くすぐに合流できたんです。それでここまで進んできたんですけど他の選手の集団と遭遇して、方法は分からないんですが彼等が魔物をけしかけてきたんです』


 ルイスの説明中スヴェンはその状況を思い出したようで、ますます苛立っている様子だ。相手の策にまんまと嵌められたのが余程悔しかったらしい。


「連中がけしかけた魔物は全部片付けたんだし急いで後を追おうぜ。今ならまだ追いつけるかもしれない」


『ロックの言うとおりだよ。このままやられっぱなしじゃオイラも面白くないし、少しはやり返さないと気が済まないよ!』


 ロックとレオの言うように俺たちは皆に魔物の群れをぶつけた連中の後を追ってゴール目指して急いで移動を開始した。

 道中俺とトリーシャがスヴェンとルイスに化けた選手に襲われた事を話し、彼等はこの本戦で手を組んだチームではないかという結論に至った。


「連中の中には、ここの魔物すら寄せ付けない呪符を作成できる奴がいる。逆に魔物を集める魔道具を作る事だって可能なはずだ。そう考えれば俺たちを襲った奴らは皆仲間だって事になるな」


『その可能性が高いでしょうね。そういえば他の選手の動向ってどうなってるのかしら? 皆は知ってる?』


 トリーシャが質問するとロック達が何とも言えない渋い表情をするのを俺は見逃さなかった。

 何か相当ヤバいものを見てしまった人間の顔だ。するとロックが重い口を開いた。


「俺が遭遇した選手は海辺で用を足していたんだが、その、なんつーか……多分、玉取られたな」


「ボクも同じケースを見たよ。現在進行形で食いつかれてた……」


「俺も見たな。ロックとシルフィの状況とほぼ同じ状況だったぞ」


 あー、ボールデストロイかぁ……。自分がやられるのは絶対に嫌だけど、他人がやられている姿を見るのも嫌だなぁ。

 俺はたまたまそんな状況にはならなかったけど皆は見ちゃったんだね。トラウマもんじゃないか。


 話を聞いていくとどうやら残っているのは俺たちと今追っている連中だけのようだ。

 ここまできたら話はシンプルだ。二つのチームのうち勝った方がレムール祭を制する。

 罠に嵌められた俺たちは怒りを煮えたぎらせながら連中の後を追って枝から枝へと飛び移って行った。

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