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狙われたアラタ②

「……変態で悪かったな。その変態に変装を見破られてカウンターを受けた気分はどうだこのヤロウ!」


『何だかんだで変態って呼ばれたの気にしてるでしょ』


 言っておくけど変態扱いされたの俺だけじゃないからね。トリーシャ、君も一緒だからねそこ忘れないでね。 

 傷ついたガラスのハートを必死で修繕していると忍者男が小刀を構えて立ち上がった。


「俺の変化の術を見破るとはな。甘く見すぎていたようだ。こうなったら正々堂々と真正面からぶつかってやる!!」


「騙し討ちをしようとした時点で既に正々堂々じゃないけどな。とにかく時間が惜しい。一瞬で終わらせてやる」


「言わせておけば……死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 忍者男が殺気をみなぎらせながら突っ込んでくる。相手は全力のようだがはっきり言って遅い。

 小刀を逆手に持ってすれ違いざまに斬り掛かってくるが神薙ぎで受け流すと忍者男はよろめいて隙だらけになる。

 

『はっきり言って弱いわね。私たちの敵じゃないわ。さっさと決めちゃいましょ』


「了解……はぁっ!」


 再び忍者男が接近してきた時、小刀を切り払うと同時に神薙ぎの峰打ちを腹にたたき込む。

 思ったよりも上手く入り忍者男は「ぎゃっ」と声を漏らすとその場で倒れて動かなくなった。


「安心せい、峰打ちじゃ……一回言ってみたかったんだよねこれ」


『満足してるとこ悪いけど相手気絶してるから聞こえてないわよ』


 本当に一瞬で決着がついた。気を失っている忍者男に近づいていくと小刀が忍び装束姿の少女に変身し自分のマスターを守るように壁になる。

 よく見ると相手は二人ともお揃いの格好をしているのでペアルックっぽい。


「お願いです、マスターを殺さないで! 何でも言うことを聞きますから!!」


「いや、必死なとこ悪いけど俺はそもそも命を取ろうなんて――」


『ちょっと待って。ここは私に任せて』


 トリーシャは人の姿に戻ると両腕を組み小刀のアルムスの前で仁王立ちになった。わざわざ魔力を高めて相手に圧をかけている。


「交換条件よ。マスターの命を救いたければ私たちを襲った経緯を話しなさい!」


「え……でも、それは……」


「大体の予想はついてるわ。こっちはその予想が正しいか裏付けがしたいだけよ。それに、あなたがいくら義理立てしたところでお仲間はそれに応えてくれるのかしら? 多分昨日今日あたりでこの本戦限定で結成したチームでしょ? そんなうっすい信頼関係をあなたは信じられるの? 今、マスターを助けられるのはあなただけよ」


 トリーシャが言葉巧みに相手を追い詰めていく。そして――。


「――話します。ですからマスターの命だけは助けてください!」




 ――こうして相手から俺たちを襲った連中の情報を聞き出したトリーシャと俺はゴール目指して再び動き出した。

 

 小刀少女のアルムスの話によれば、彼女たちのチームは八組の出場者で構成されているらしい。

 何でも昨日の予選で大暴れをした俺、ロック、シルフィ、スヴェンが手を組んだのを見て自分たちもチームを作って対抗しようと考えたようだ。

 忍者男たちは一目見た相手に化ける事ができる為、その能力を買われて俺を襲うために待機していたらしい。

 

 おまけにその八組の出場者の中には魔道具作りを生業とする者がおり、その人物が密かに用意した魔物よけの呪符を使って魔物と戦うことなくダンジョン内を進んできたようだ。

 忍者男と一緒に行動している間、魔物と戦わずに済んだのはそのお陰だ。

 魔物よけの魔道具といえば効果が期待できるのはせいぜい難度銀等級のダンジョンまでなのだが、金等級の『ダウィッチ島』でも通じる物を作ってしまうあたりその作成者は相当な技術の持ち主なのだろう。


 忍者男が気絶している間、彼のアルムスが呪符で魔物よけをしつつ監視用スフィアを通して救助要請を出しているので無事に脱出できるはずだ。


「トリーシャのお陰で貴重な情報が手に入った。ありがとな」


『どういたしまして。戦場において敵の情報はとても重要だから入手できるチャンスがあるなら逃す手は無いと思ったの』


「なるほど。勉強になったよ」


『まあ、これもクレアの受け売りなんだけどね。普段はちゃらんぽらんなのに、こういう部分はしっかりしてるのよね、あのエルフ』


 さすがクレア。魔人戦争でアルムスの代表をやっていただけの事はある。


 『ゴシック』のメイド長に対し感心していると前方から轟音がして何かが吹き飛んでいくのが見えた。

 見間違えでなければ、今吹き飛んでいったのはバラバラになったローバークラブだ。それも一体二体どころじゃない。十体分くらいの残骸だった。


「誰かが戦っているのか? この魔力はもしかして――」


 戦闘が起きている現場に到着すると、案の定そこではロック、シルフィ、スヴェンの三人がおびただしい数の魔物と戦っている最中だった。


「皆無事だったか!」


「これをどう見れば無事だって言えるんだ!? アラタも手伝ってくれ。魔物が一斉に襲ってきて大変なんだ!」


 魔物を拳で黙らせながらロックが言ってきた。あいつがそう言うのも無理はない。

 まるで島中の魔物が集まっているんじゃないかと思うぐらい、この辺りは魔物で溢れかえっている。

 すぐに俺も参戦しアーガムトレントを斬り伏せていく。

 

 四方八方から襲いかかってくる魔物に対し、こっちは遠距離主体のシルフィを中心にして俺、ロック、スヴェンが三方向に分かれて迎撃するフォーメーションを取る。

 俺たちが接近戦で魔物の群れを倒している間、シルフィが聖弓ミストルティンの雷の矢で遠方の敵をヘッドショットで潰していく。


「凄い……これだけの数に囲まれているのに安定して戦えている」


『当然よ。ここには魔剣クラスのアルムスと契約した魔闘士が四人も揃っているわ。あなただけの時とは負担が全然違うはずよ』


 トリーシャの言うとおりだ。

 パーティにロックが加わっただけでも戦いがかなり楽になったのだが、その上スヴェンという強力なアタッカーと優秀な遠距離支援役のシルフィが一緒になった事で世界が変わった。

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