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レムール祭本戦開始

――ダンジョン『ダウィッチ島』。


 この島は『アーガム諸島』内にある島の一つで島自体がダンジョンと化している。島は円形でサイズは直径三キロメートル程。

 元々は海底に根を下ろした一つの大樹が増殖し島サイズになった場所で、マングローブの様な植物が生い茂る密林になっている。ダンジョンとしての難易度は金等級。

 海に囲まれ行き来し辛い面から普段は封鎖されていて、魔物が溢れ出すダンジョンブレイクの防止対策と催しを兼ねてレムール祭が発案されたらしい。


 そんな現在の『ダウィッチ島』は魔物がウジャウジャいる訳で予選以上の激戦が期待されている。

 まあ、それはあくまで大会開催側の考えであり、実際に戦う俺たちは初めてのダンジョンと島で独自に進化した魔物という慣れない状況に試行錯誤している。


 その為『ダウィッチ島』に到着するまで船の甲板でダンジョンや魔物の特徴について照らし合わせをする。


「昨晩話したように『ダウィッチ島』において陸地ではアーガムトレントを中心とした植物系魔物が多量に生息しており、水辺では水棲系の魔物もうじゃうじゃしておる。その中でも特に注意しなければならないのはボールデストロイじゃな」


「ボールデストロイ? 何だその物騒な名前は……」


 不安がる俺を横目で見てクレアはふふっと笑った。


「こいつは見た目こそやや大柄な魚なのじゃが、四角く頑丈な歯が生え揃っておっての。海辺で用を足そうとする者の男性器を海中から飛び出し噛み千切る習性がある。うっかり海に落ちようものなら群れで襲われ終了じゃ。男子諸君は十分に注意するんじゃぞ」


 だからボールデストロイなんて名前が付いてんのか。

 その時の様子を想像し、俺、ロック、レオ、スヴェンの四人は静かに自分のボールを押さえて青ざめる。

 嫌だ……そんなのに襲われるのは絶対嫌だ。海辺には極力近づかないでおこう。


 一通り魔物に関して情報整理が終わり後は現地に到着するのを待つばかりとなった。

 これから船は『ダウィッチ島』を周回し、設けられた二十ヶ所のポイントに一組ずつ出場者を配置する。

 そして競技場からの合図によって一斉にスタートする手筈になっている。

 それまでは短い船旅を楽しもうじゃないか……と思っていたのだが、そんな状況ではなさそうだ。


「アラタ様、気が付いていますか?」


 隣にいるアンジェが小声で話しかけてくる。

 船には本戦出場者の関係者も乗船可能で船内に設置されているスフィア――モニターみたいな魔道具で観戦してもらう。

 万が一に備えてアンジェ、ルシア、セレーネには船内で観戦しつつ待機してもらう事にした。


「俺たちが大会中チームを組んだ様に他の出場者もチームを組んだ者がいるみたいだな。俺たちに気付かれないようにしてるみたいだけどアイコンタクトでやり取りしてるな。あー、なんか嫌な予感がするなぁ……」


「レムール祭は競技の特徴上、集団戦に持ち込む事も可能ですからね。我々と同様にチームを作って対抗するつもりでしょう。予選ではアラタ様たち四組はかなり目立ちましたから、他の選手が焦るのも無理はありません。特に禁止事項がない以上、競技中に何かしら仕掛けてくる可能性は高いと思います。注意をするに越したことはないでしょう」


「ありがとう、アンジェ。気をつけるよ……って見えてきたな」


 前方に島が見えてきた。島を囲むように何本か柱が立っており、その先端には大きな宝石が設置されている。


「あれは結界用のエナジストですね。あれで『ダウィッチ島』を結界で包んで魔物が外に出られないようにしているみたいですね」


「何という用心深さよ。島の中はどれだけ魔物で溢れかえってんのか不安になるわ」


「今なら棄権することも可能ですがどうします?」


 アンジェが一応逃げ道を提示してくれるが別に逃げ腰になったわけじゃない。それは彼女も分かってくれている。


「冗談だろ。せっかくここまで来たんだ。一暴れさせてもらうさ」


「ふふっ、アラタ様ならそう言うと思っていました。――それではご武運を」




 船は『ダウィッチ島』を一周し、一組また一組と下船してスタート位置につく。皆と別れて俺とトリーシャは十組目で下船した。

 最後の二十組目がスタート位置につくまでまだ時間があるのでトリーシャと状況確認をする事にした。

 まず下船時に渡された水晶型のスフィア端末を手に取って魔力を流し起動させる。すると実況音声が聞こえてきた。

 本戦出場者全員にこれと同じ物が手渡せされており実況の内容から本戦がどういう状況になっているのか知ることが出来る。


「それにしてもあんなのにずっと見張られているのは気分が良くないわね」


 トリーシャが腰に手を当てて頭上を憎らしげに見上げる。

 今俺たちは大会運営が用意したコウモリ型の使い魔に見張られている。いや、正確には使い魔が持っているスフィアになのだが。

 あのスフィアは一種の監視カメラみたいな物であれに撮影された映像はリアルタイムに競技場のスクリーン型スフィアに映し出される。

 観客はそれを鑑賞しているらしい。監視スフィアは出場者一組辺り一つ用意されていて常に動向がチェックされている。

 

「まるでドローンに監視されているみたいな感じだな。あまり気分がいい訳じゃないし、とっとと済ませたいところだな」


「そうね、それじゃあ私はそろそろ武器化するわね」


「分かった。マテリアライズ――神刀神薙ぎ!」


 トリーシャは刀型の武器へと姿を変え鞘に納刀されたまま俺の腰に装備される。するとスフィア端末から実況が聞こえてきた。


『たった今二十組の猛者たちがスタート位置につきました。果たして今回のレムール祭を制するのは誰なのか? 結果は神のみぞ知るといったところでしょうか! ――それでは競魔闘士レムール祭本戦開始ですっ!!』


 スタートの号令が掛かり俺はゴールである島の中心を目指して走り出した。

 この時、この大会の裏でうごめく計画やそれによって今までに無い激戦が起こる事など今の俺が知るよしは無かった。

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