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スケベ大魔王と言われて

「はぁ~あ、ふあぁぁぁぁぁ」


「盛大な欠伸をしているが、お前ちゃんと寝たんだろうな?」


 レムール祭本戦が行われる『ダウィッチ島』には船で向かう。その船が停泊している船着き場に向かっていると寝不足の為か欠伸が出てしまう。

 そんな俺に気がついたロックが訝しむように訊いてきた。その通りです。君が考えているように俺はあんまり寝ていません。すんません。


「いや……その……昨晩はその……かつて無い程に盛り上がりまして……」


「……また朝まで貫徹したのか。お前バカなの? これから本戦なんだぞ、これに負けたら旅に支障が出るだろう。スケベなのもいい加減にしろよ。お前等もだぞ!!」


 ロックに叱られて俺、ルシア、トリーシャ、セレーネの四人は恥ずかしさのあまりに俯く。


「「「「すみませんでした……」」」」


 謝罪する俺たちと打って変わってアンジェだけは胸を張って堂々としている。その自信を少しでいいから今の俺たちに分けて欲しい。


「盛り上がってしまったのですから仕方がないでしょう。それに私たちは戦う為に生きているわけではありません! イチャイチャする為に生きているのです!! 違いますか!?」


「ええっ!? 何その無茶苦茶な逆ギレ……嘘だろ……」


 この光景を今まで何度見たことだろうか。夜間ハッスルして寝不足な俺たちを叱るロック。そして無茶な持論でロックを説き伏せるアンジェの図。

 ロックが言っている事が至極全うなのだが毎回彼は口喧嘩で負けている、すまんロック……。


「ロック、アンジェ姉ちゃんと口で勝負したって勝てっこないよ。放っておきなよ。それにアラタは睡眠より姉ちゃんズとスケベしてる方が通常運転なんだしさ。この方が実力が発揮できるはずだよ」


「うーん、確かにそうだな。あれがあいつらの日常だったな。三大欲求のうち性欲だけで生きているような連中だもんな」


 ロックとレオに散々な事を言われアンジェ以外は顔が真っ赤になる。

 事実なだけに全く言い返せないのが情けない。ふと気がつくとこのやり取りを聞いていた町のご婦人たちが汚物を見るような視線を俺に向けていた。


「あの男性、毎晩女性を寝かさず夜通しハッスルしているみたいですよ」


「んまぁ、何ていやらしいのかしら。スケベ大魔王だわ」


 見ず知らずの人にスケベ大魔王などと言われ胸が少し痛む。でもやっぱり事実だからしょうがない。


「大丈夫ですか、スケベ大魔王様? どこか気分が優れませんか?」


 アンジェが俺を気遣ってくれる。早速一般の人からの蔑称を採用しているあたり、この状況を心底楽しんでいる様子。

 この際、名前をスケベ大魔王に変えるのもアリかな……。だって俺スケベですし。




 そうこうしているうちに船着き場に到着した。既にほとんどの本戦出場者が集合している。

 あの地獄絵図と化した予選を勝ち抜いた連中なだけあってどいつもこいつも強そうだ。それに自信にあふれた表情をしている。

 中にはフードで顔を隠している者もいるみたいだけど何か訳ありか? それとも強者感を出す為の演出なのだろうか。


 まあ、とにかく本戦はダンジョンと化した島を駆け巡って島中央にあるゴールに到着すれば終了だ。

 彼等と戦う必要はそんなにないはず。あまり関わる事もないだろう。


「先生、おはようございます」


 俺をこう呼ぶのは一人しかいない。振り返ると目を赤くしたルイスが駆け寄ってきた。その後ろにはスヴェンが遅れて歩いてくる。


「おはようルイス、スヴェン。ところでルイスどうしたんだその目は?」


「どうやら本戦を前にして緊張であまり眠れなかったらしい」


 スヴェンはそのように考えているようだけど、それ違うよね。

 ビキニアーマーを着たルシア達の事が気になって、そんでもって俺がちゃんとその姿を撮って来れるか心配とワクワクで興奮して眠れなかったんだよね。


 俺はそわそわしているルイスに預かっていたカメラを手渡した。彼女は震える手でカメラを大事に持ち俺の顔色を窺う。


「それが俺の精一杯だ。ルイスがその内容に満足してくれるといいんだけど」


「……確認してみてもいいですか?」


 頷き肯定するとルイスはゴクリと喉を鳴らしながらカメラに魔力を送り起動させる。そして画像データを確認すると膝から崩れ落ち身体が震え始めた。


「え、ちょ、ルイス大丈夫?」


「……ます」


 小声でルイスが何かを言っているみたいだけどよく聞こえない。


「何だって? 何て言ったの」


「あ……ありがとうございますっ!! これ……ヤバ……あたしの予想を遙かに上回って……家宝にしますぅぅぅぅ! 生まれてきて良かったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ええっ、そんなに!?」


 昨晩ビキニアーマーに着替えたアンジェ達をカメラで撮ろうとしたのだが、相手は四人……とても隠し撮りできる環境ではないし黙って撮るのもどうかと考えた俺は最初から皆に事情を説明した。

 とにかく粘って何枚か撮らせてもらおうと考えていたが、皆はルイスの為ならばと前向きな姿勢で一肌脱いでくれた。


 それからは彼女たちの撮影会の場となり非常に盛り上がる事となる。

 写真を撮る俺も次第にテンションが上がりアングルを色々と変えたりポーズを要求したりして結果数十枚の大作となった。

 申し訳程度の布面積から今にもこぼれ落ちそうなムチムチボディの彼女たちの画像。

 それが大量にあるのを確認したルイスは非常に満足した様子で何度もお礼を言っていた。


「ありがとうございます、先生! 報酬に関してなのですが、あたしに出来ることがあれば何でもしますので仰ってください」


「報酬かぁ。それじゃあ、その画像を焼き増ししたのを後でもらえるかな?」


「え……? それでいいんですか? お金とかは?」


「俺たちも楽しんでやっていたしお金なんてもらえないよ。今後も皆と仲良くしてくれたらそれで十分だよ」


「先生……ありがとうございます。今後もよろしくお願いします」


 こうしてスヴェン、ルイスと合流し喋っているとクレアとシルフィも到着し全員が集合した。

 他の本戦出場者も全て集結し、俺たちは本戦の場となるダンジョン『ダウィッチ島』に向う為用意されていた船へと乗り込むのであった。

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