衝撃のお仕置き内容
この先の旅の計画を脳内で立てていると、アンジェ、ルシア、トリーシャ、セレーネの四人が申し訳なさそうな顔をしているのに気がついた。
「ん……? 四人ともどうしたの、深刻そうな顔をして」
「アラタ様、申し訳ありませんでした。本来ならば最初に説明しようと思っていたのですが、私としてもどう話せばいいのか分からず今日という日になってしまいました」
「アンジェだけに非がある訳ではありませんわ。わたくし達も同罪ですわ」
「そうね。これだけの重要な案件をずっと黙っていたのはアルムスとしてあるまじき行為だものね。契約破棄されても文句は言えないわ」
三人がまるで世界の終わりのような顔をしている。本人たちも説明できない訳分からん状況だったんだし、しょうがないのでは?
「別に気にしてないから大丈夫だよ。それに魔術都市に行けば分かるかもしれないんだしさ。皆が気にする事なんてないよ」
「ありがとうございます、アラタさん。でも今回の場合、私たち四人が共謀してマスターに重要な話を伏せていたというのが問題なんです。これがまかり通ればマスターとアルムスの信頼関係に亀裂が生じます。ですから何かしらのお仕置きを頂かなければいけないんです。……お願いします」
「えぇっ!? ……そんな、どうしよう……いきなりお仕置きって言われてもなぁ」
俺は大して気にしていないのだが彼女たちにとっては大問題らしい。
ルシアは頭を下げたままの状態だし、ここは希望通りに何かペナルティを与えなければ事態は収まらないようだ。
そこで色々と考えてみるが思いつかない。出来れば彼女たちが傷ついたり嫌がったりする事はしたくない。
でもそうしないと当人たちは納得できないのだ。
お仕置きっていうと……痛いこと……辛いこと……悲しいこと……不安なこと……恥ずかしいこと…………ん? 恥ずかしいこと? あれ? これなら何だかいけそうな気がする。というか様々なアイディアが浮かんできたぞ!!
「……あのさ、ルシア。そのお仕置きってさ、こういうのもアリかな?」
本人だけに聞こえるように耳元でお仕置きの内容を小声で伝えると、瞬時に彼女の顔が真っ赤になる。
そしてその内容はアンジェ達にも伝えられ、四人全員が顔を赤くしながら頷いた。
これってオッケーって事だよね? そうだよね? いやー、言ってみるもんだな。
不思議な玉を七個集めなくても、クッソ怪しい変な生物と魔法少○になる契約をしなくても、願いは叶うんだ!!
お仕置きの重要アイテムになるアレは防具屋に売っているはずだ。この作戦会議が終わったら早速買いに行こう。
「それじゃ明日のレムール祭本戦に向けての作戦会議をしようか。クレアは何か策があるみたいだけど説明してくれないか?」
「お主……とっととこの件を終わらせようとしていないか?」
クレアがジト目で俺を睨んできたので口笛を吹いてはぐらかそうとしたが、俺は口笛が吹けないので唇からは「ふぅ~ふぅ~」と息の音が漏れるだけだった。
周囲から俺の意味不明な行動を怪しむ視線が集中する。
その中で一際険しい表情をしているルイスが俺の壮大な計画に探りを入れてきた。
「あなたはお姉様たちに一体何をする気なの? 事と次第によっては出るとこ出るわよ!」
怒るルイスをなだめようとルシアが仲介に入ってくれた。しかし、それでは騙されないと言わんばかりに俺が考えたお仕置きの内容についてしつこく訊いてくる。
俺が口を割らずにいるとその矛先はルシアに向けられた。まずい、ルシアは押しに弱い性格だから問い詰められたら話してしまう可能性が高い。
「お姉さま、言いにくいとは思いますがあの男は一体何をするつもりなのですか? 内容がアレでしたら、あたしがあいつをアレしますので教えていただけませんか? これは決して興味本位とかそういうのではありませんから心配しないでください。いや、本当によこしまな気持ちなんて微塵もないので!!」
どことなくルイスの必死な様子に既視感を覚えていると何故か自分の姿と重なった。
それは以前今回のお仕置きの内容と同じ事をリクエストした時の話だ。アンジェ以外は恥ずかしいと言って何度頼み込んでも駄目だった。
その時の必死だった自分とルイスがどことなく似ている気がした。
「ちょっとルイスどうしたのよ。何もそんなにムキにならなくたっていいでしょ」
必死な態度のルイスを前にトリーシャは呆れた顔をしている。スヴェンはパートナーの一生懸命な姿を見て目が潤んでいた。やっぱりこいついい奴だな。
ルイスに完全に感情移入してしまった俺の視界も歪む。
ルシアがお仕置き内容を言ってしまえば俺は皆に軽蔑されるだろうと思いながらもルイスを応援する気持ちの方が勝っていた。
頑張れ……頑張れルイス! 後もう少しだ。ルシアはもうちょっとで口を割るぞ。
そして、必死に食い下がる妹に対して姉はとうとう観念し小声で真実を口にした。
「その……アラタさんが所望していたのは……その……女性冒険者用の防具でして……」
「防具……? それが一体どういう繋がりがあるというのですか!?」
「その防具は、非常に布面積が少ないというか、デザイン的に防具になっていないというか……その……端的に言うと、それは……ビキニアーマーなんですぅ……。それを着てご奉仕して欲しいというのがお仕置きの内容らしいです……」
恥ずかしさのあまりルシアは目に涙を溜め口元を両手で押さえて俯いてしまう。姉のそのような恥じらう姿を見たルイスは膝から崩れ落ちてしまった。
「あの変態マスター、何て素晴ら……最低な事を考えつくの!? これはあたしが直接交渉して激レア画像をゲットするチャンスじゃない!!」
九割ほど本音が漏れ出す中、俺の卑猥な計画を知ったルイスは何かを思いついたようだ。その時の彼女の目は俺と同じ濁りきったものだった。
この場の雰囲気が混沌とする中、本戦に関する作戦会議は早々に終了しこの場は解散となった。
作戦と言っても内容は俺たち全員で協力しようというものであり、スヴェンとルイスも力を貸してくれる事となった。
いずれかの組が優勝すれば『インスマース島』に行けるのでかなり気が楽になった。