名前と容姿
生贄を怪異に与えていたのなら、怪異は神と勘違いされていたのかもしれない。それとも、怪異と神は似て非なるものだけれど、私達からしたら同じように見えるのか。
「怪異から解放されたら、元の場所に戻りたいですか?」
「さあ。灰さんにはまた会いたいとは思うけど、一人で会うのは怖いな」
どこか陰のある人だと思った。表情に陰が見え隠れするから。けれど、その正体がわかった。
自分に自信がないんだ、この人は。大好きな人から一番に求められていると言う自信が。白灰と言う一番大事な人が大事にしていた人がいたから、その人の代わりになれるのか自信がないんだ。
「オレたちは双子で、生まれた場所も、育った環境も、名前も同じだったけど何一つ理解し合えなかった。一番近くにいたのに、全く違う存在だった」
双子は、お互いのことはなんとなく分かっているものかと思っていた。
けれど、生まれた時点で違う人物になる。自分ではない人のことなんて、理解できるか。私ですら、自分のことが良く分からないのだから他人のことなんて理解できる日は来ないだろう。
それより、少し気になることが。
「同じ名前?」
「そうだよ。白灰、墨白は芸名。本名はオレが恭史郎でアイツが恭志郎。読みが同じだけど、漢字が真ん中だけ違うんだ」
地面に名前を書いてくれたことにより、どこが違うのかわかった。
「オレたちを捨てた母親がつけた名前なんだけど、同じ名前つけるなよって思うよ」
苦笑する墨白に、それでも覚えているぐらいには必要なものなのだと感じた。
「オレの話は終わり! キミの話を聞かせて」
パンっと手を叩かれ、墨白の話はここまでとなった。
私の話、と言っても私の話は気分のいい話ではない。そういう点で、話をするのが気後れするが話をしてもらったのだから話さないわけにはいかない。
墨白に自分の話をする。墨白は何も言わず、ただ聞いてくれた。
「そっか。家族はもういないんだ」
「はい。私以外、誰も」
「家族全員かかったら、綾紗ちゃんもかかりそうだけど」
「……私も、かかれるならかかりたかったです」
この体が憎い。
地面に置いていた手を握れば、手の中に土が紛れ込んで来た。
「怪異の話とは別で気になってたんだけどさ」
「はい」
「綾紗ちゃんは外国の人なの?」
「違いますよ。この髪の毛とこの目の色が気になると思いますが、両親とも日本人です」
金色の髪。瑠璃色の目。
外国の人だと勘違いされることも多々あったし、両親が違うんじゃないかと言われたこともあった。けれど、私は確かにあの両親の子供。
「きれいな髪にきれいな目だから、羨ましい」
「いいんですよ、無理に褒めなくても」
この髪色がこの目の色が、好きかと言われたらそうじゃない。
この髪色でなければ、この目の色でなければ、と思ったことは少なくない。
「面白そうな話をしていますね」
話しかけられ、誰だろうと上を向けば美丈夫な人がそこにいた。
男なのか、女なのか、一目見ただけではどちらとも判断がつかないが声で男だとわかった。




