新たな目覚め
2階の作業場では、ユウが弓矢を黙々と作っている。
鏃には、中級黒鉄を使い固い皮でも貫通するよう工夫している。
シャフトの部分は下級黒鉄を使って製作している。
始めの1時間は、失敗作を作っていたがコツを覚えたようで完成させた。
順調に作り続け製作した弓矢の売却金額は、20%が生産拠点の収益。
残りの80%は、ユウの取り分だと言うと黙々と作っている。
俺は予定していた弓を30程、すでに作り終えている。
弓士が使う、弓や矢は強力な物がなかった。
弓士は仕方なく、通常の弓と矢で魔物の眼や皮の薄い部分を狙うしかなく。
その為、時間が掛かり攻撃の手数が少なく、魔物を仕留める事も少なかった。
攻撃力が弱いと、パーティー内でも言われていた。
しかし今回作った、俺達の弓と矢で汚名返上ができる事を期待している。
次に取り掛かったのは、毒矢の製作。
俺が作った矢を取り出して、鏃を外す。
下級で作った鏃を、ミカワグモの猛毒に長いピンセットで漬け込む。
30分が経ったので、取り出すと赤い鏃になっていた。
錬金術で空中に浮かせて、矢の先に取り付ける。
亜空間の中に、大量にある石を使って鏃の周りに薄くコーティング。
それを50本作っていく。この毒矢のアイデアは偶然の出来事から閃いた。
猛毒を取り出す為に、器が必要だった。
その為に下級黒鉄で器を作って、猛毒を入れて置いた。
中級黒鉄で作ったナイフを、その猛毒に漬け込んだ。
猛毒のナイフが、できるかもと期待していたがナイフには、なんの効果もなかった。
しかし、器が赤くなった事に気がついた。
鑑定では、猛毒の効果が付いた器になっていた。
中級と下級の差は、何なのかと考えて俺なりの結論をだした。
下級は弾力性があった、つまり黒鉄内に微細な空間があり、
それが弾力になり、猛毒がしみ込んだと解釈。
その時に、弓矢に使えると閃いた。
「すいません、事務職の募集を見てきました。ここでよろしいですか?」
「あ!ここでいいですよ。事務所の方に行きましょう」
事務所の椅子に座り、向き合って経歴書を見る。
「那須明美30歳、事務経験ありですか。給料は募集に書いていた金額で良かったですか」
「はい、それでよろしいです」
「分かりました、採用します。今日からお願いします。これが規約になります」
事務所のドアが急に開き、顔をだして大きな声で。
「師匠、600本できました」
「そうか、ギルドに行くか。それじゃ、那須さんこれが鍵です。一週間帰ってこないので後のことは頼みます、仕事内容は次のページに書いてます」
ギルドで弓と矢を国際オークションに出品するか、日本オークションにするか悩んでいた。
あまり実績のない弓と矢、下手をすると安く落札される可能性もある。
職員からは、妥協案として大盾の製作者の次なる出品として情報を流す。
製作者の名は出さない、ルールであったが作品の関連性としてOK。
そして日本オークションには、弓2張と矢40本と毒矢10本。
国際オークションに、弓28張と矢560本と毒矢40本の出品が決まった。
ユウは、全部国際オークションにするべきと大声で言っているが。
職員から、国内にコネを作る意味で日本オークションを進められた結果である。
毒矢は、1回使用の使い捨てと断っておく。再利用も出来なくないが毒の部分に触れて、死んだと訴えられるのは御免だ。
ちなみに俺達の弓と矢の鑑定結果は。
下・中級黒鉄の弓
物理攻撃★★★
下・中級黒鉄の矢
物理攻撃★
下級黒鉄の毒矢
物理攻撃★
毒攻撃★★
弓+矢の合計が攻撃力になり耐久性も表している。一方が星なしだと攻撃力はだいぶ下がる。
それでギルドには一週間潜ると報告して、早速ダンジョンに向かう。
今回はユウのレベルアップを考えている。
ステータスが見られるなら良いのだが、そんな便利な表示はされない。
恩恵の職業取得も、初回だけ曖昧に見えるだけなのだ。
取得した職業知識も、曖昧的に感じるだけであった。
俺の錬金術師の鑑定は、作ったり亜空間に収納した物だけが鑑定できた。
なので、人のレベルアップの1回目は初級ランクで。
6階層で活躍していれば、初級ランクと呼ばれている。
15階層で活躍していれば、中級ランク。
25階層で上級ランクに認定されている。
俺は5年間で、初級ランクになっている。しかし、ここのダンジョンで体の痛みを2回感じている。
探索者カードには、初級ランクと書かれているが。本当は上級ランクである。
ユニークダンジョンが、強くさせているようだ。
なのでユウを中級まで上げれば、錬金術の方も良くなると見込んでいる。
俺自身が、レベルアップした事で、錬金術の扱いが良くなった事を実感している。
6階層の岩ガメの足を切断、後に隠れていたユウが止めを刺す。
前回より落ち着いて、行動できるようになって頼もしい。
レベルアップが目的なので、探索していない通路へ入っていく。
しばらくして残りわずかな、通路の最後に広いフロアがあった。
そのフロアの中央には、いままでの岩ガメを2倍にした赤黒い岩ガメいた。
甲羅には角が生えている、そして俺を睨みつけている。
「ユウ、気をつけろ。いつもの魔物ではなさそうだ」
「分かりました、何時でも逃げる用意をしています」
ここは、励ましの一言だろうと考えてしまう。
ユウは大盾を構えて、だいぶ後の方に隠れている。
黒刀に持ち替えて、左方向に回り込もうと走り出したら。
赤岩ガメは、甲羅の角を2本発射させてきた。
1本は斬り捨てて、もう1本もかろうじて斬る事ができた。
そのまま走り込み、左後足を斬り落とした。
「ウッギャーガ」と鳴き3本の足で、向きを変えようとするも。
俺は死角から飛び跳ね赤岩ガメの頭部を突き刺していた。
それが止めになり、赤岩ガメは収納された。
すると、赤岩ガメが居た所に宝箱があった。
宝箱は、御伽噺かゲームしか見た事がなかった。
黒刀で突くも、何も変化がなかった。
鍵穴もなさそうだ。隙間に黒刀を差込み、一気に空けた。
何の仕掛けも無かった、中を覗き込むとスクロールがあった。
取り出しスクロールの内容を見ると、変な文字が書かれている。
そしてその文字が光りだし、手の中のスクロールは消える。
そして頭の中に、イメージが入り込んできた。
小さな結界が張れるイメージが、それと一緒に物に結界機能を付けれるイメージも浮かんできた。
それは幻の夢を見ているようでも在った。
自分の中でも整理する為、ユウを連れて5階層へ急ぎ戻った。
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