俺ってクビなのか
仰向けになって、感動に思いを巡らせて居る中。
「やっぱり、ここに居たか」
「なんだ仁志か」
「サブマスターと呼べと、あれ程言っただろう」
「ここに、何しに来たんだ。そうだ言っておきたい事が出来たんだが」
「その前に、サブマスターとして重要な知らせを言っておく」
「なんだ、その重要な知らせは」
「お前に、クランを辞めてもらいたい」
「え!何を言っているんだ」
「長い付き合いだから、以前から忠告はしていたはずだ。・・・お前は好き勝手し過ぎた、クランの示しがつかないからクビだ」
「忠告って・・・無理やり20階層へ連れて行く事か?俺が弱い事は知っているよな、そんな命令は聞けるか!俺は死にたくないんだ!それにあれだけ武器を作ってクランへ貢献してきた俺にそんな事をさせる気か?初級武器だがそれなりの値段だ、どう考えても俺が手にした報酬では赤字だ。それにな……俺は知っているぞ、下級・中級黒鉄の素材を横流しをしている事がバレルのが恐いのだろー」
「うるさい、黒鉄で作った初級武器は今でも倉庫に山積みだ。これは、幹部会で決まった事だ誰も止められないぞ」
「黒鉄武器を全部初級武器と呼んでバカにするが、銀鉄より強いという鑑定結果も信じないお前達のバカにも呆れた・・・・もううんざりだ。今から手続きをすればいいんだな」
浅見ダンジョンを出て、ギルドクラン用受付に並ぶも、2人は一言も話さなかった。
俺達の番になって「どんな、ご用件でしょうか」
「明けの明星です、クラン退団手続きをお願いします」
「探索者カードの提出をお願いします」
俺は、探索者カードを渡すと何度も顔確認されながら承認された。
新たな探索カードを受取ると。
「たかし、クランにお前の席は無くなった。二度と来るな」
そんな捨てセリフを言って、ここから立ち去ってしまった。
雨宮仁志はせっかちであったが、まだ直っていなかった。
俺は黒鉄武器しか作らない約束で、無理やり引き込まれてクランに入ってしまった。
俺は人とあまり係わり合いたくなかった、ギルドに行って売る事も億劫な人間である。
武器を作って、武器と余った素材をクランに置いて、1人コツコツしているだけで好かったのだ。
そして、無理やりクビにさせられた。やはりアイツはせっかちだ・・・
しばらく考えて、金が必要だと感じ買取専用の列に並んだ。
ようやく俺の番、亜空間から中級2本と上級1本の剣を3本取り出した。
中級の黒剣は通常買取りでお願いして、上級の黒剣はオークションの手続きをお願いした。
「通常買取りは2本で500万円です、オークションは週末の土曜日が一番近いですがどうしますか」
「それでお願いします」
探索カードに500万円が、振り込まれた事を確認してその場を後にした。
近場のPCで観覧していると、明けの明星が出てきた。
明けの明星は、中堅クランで今20階層にアタックをしていた。
そのメンバーに、俺の知らない亜空間魔法の魔術士が同行していた。
銀鉄を大量に持ち帰る予定のようだ。
明けの明星のメンバー表には、知らない錬金術師2人が表示されている。
俺は、亜空間魔法と錬金魔法の2つを持っているから、異常に熟練度の上がりが早かった。
それは相乗効果であるようで、他者と比べてもハッキリした効果であった。
なので錬金術師2人の年齢から、逆算しても熟練度は低いはずだ。
どうも俺が異常な存在である事を、今でも嘘だと信じているようだ。
どうもクビになった事で、俺の中にも不思議な変化があったようで最低限頑張るようになった。
明けの明星が探索活動をしていない、ダンジョンを探していると良いダンジョンが見つかった。
早速新幹線の予約をして、駅に向かう事する。
亜空間魔法はこんな時は便利で、何でも亜空間に収納しているから手軽に移動ができる。
土海ダンジョンの近場で、ギルドご用達のホテルで取り合えず1ヶ月間の長期宿泊を頼んだ。
早速ダンジョンに入りソロ活動を始める。
5階層に来るまで、黒刀の威力を試して見たが凄いの一言である。
自分の強さが上がった事も驚いたが、斬った時の切れ味にも驚いた。
ここまでは地図で確認できたが、6階層の地図は白紙に近かった。
6階層に居る岩ガメが、魔法や武器があまり通じない魔物である事が原因。
周囲の壁に溶け込んで、保護色の甲羅で存在を隠していた。
見えない倒せないが不人気になった原因のダンジョンである。
俺は黒刀に、少し魔力を流すと赤い模様が現れ、岩ガメの存在を知らせる。
そこに向かって振り抜くと、岩が斬られその岩はすぐに消えてなくなった。
亜空間に岩ガメが、収納された瞬間でもあった。
岩ガメの魔石は、赤い魔石で大きく高く売れる魔石であった。
1個100万円で買い取ってくれるのだ。これはギルドが決めた買取価格で、これ以上で買取すると闇取引きしかなく違法になってしまう。
遠い昔に、クランで剣の訓練をした事があったが、皆から笑われたものであった。
今の俺は、足さばきが鋭く相手の動きがよく見えていた。
振り抜く黒刀に、迷いはなかった。
振り抜いた後には、空間をも斬り開いていた。
多分剣士の熟練者を凌ぐ、力を授かったような気持ちである。
次々と岩ガメを討伐していき、7階層への階段まで来た。
しかし、時間を見ればそろそろ帰らないと、ダンジョン内で泊まる必要がある。
食料をあまり用意していなかった事に気付き帰る事にした。
ギルド受付で、6階層の地図・魔石122個・岩カメの肉を提出。
手に入った金額は1億2千6百万円、地図報酬も加算された金額でギルド貢献度も上がる。
探索者になってから、稼いだ合計金額でも届かない金額になっている。
俺の5年間はなんだったのだろう、嫌、今からその報酬を貰えるのだ。
受付担当者も驚いていたが、俺自身も驚いている。
ホテルに戻ると、岩ガメの甲羅を使って何か作れないかしばらく考えた。
鑑定して分かった事は、甲羅の裏に細かく張り巡らされた神経に魔力を通すと。
甲羅の年輪模様から、小さな結界の集合体が現れる仕組みになっていた。
それが魔法攻撃や物理攻撃を跳ね返していたのだ。
割れないように魔力でおおい、神経を傷つけないように甲羅を広げてゆく。
盾として使えるよう、慎重に整えながら広げた甲羅は完成手前だ。
甲羅の内側には、岩ガメの腹を付けて神経が痛まないよう工夫。
神経の束を持ち手に付けた後に、盾に取り付けてようやく大盾の完成。
持ち手に魔力を流すと、小さな結界が大盾を包んでバリアを形成している。
次に破損した甲羅を使って、自分用の手甲も作る。
何度も試行錯誤しながら完成した手甲を装備する。
両手に魔力を流すと、大盾と同様に小さな結界が発生。
素晴らしい手甲ができ、握り拳で甲羅を打ち抜くも手に痛さは感じなかった。
これで、ぐっすり眠れそうだ・・・。
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