初めての強敵
三河製作所へ戻り、事務所のPCで検索してようやく目的の項目に。
近場に支店があったので、電話をしてみる。
「食肉の件で電話しました、はい・・・はい・・・そうです、わたしが代表の三河です・・・はい、その住所で間違いありません」
3時間後に、冷蔵トラック5台と車1台がやって来た。
車から、2人の男性と1人の女性が降りてきて俺の方にやってくる。
「三河さんでしょうか、わたしは[トール会社]海部支部長の綾部と申します」
名刺を出してきたので、俺も作りたての名刺を出し。名刺交換を初めて経験。
「わたしが、代表を務める三河です。中で話しましょうか」
「いえ、忙しいと存じますが。取引きをして急いで、本社に送る必要がありまして」
「そうですか、分かりましたカメ肉から出しましょうか」
「三上、準備をしろ」
あわただしく運転手達が、1台を用意。荷台のドアを開け、2人が乗り込んだ。
俺が近づき、その荷台にカメ肉を出してゆくと。次々と奥へ積み上げてゆく。
ドア横で、メガネを掛けた神経質な女性が、荷物の数をチェックしている。
ドアが閉められ、トラックは走り出した。
その空いた所に、別のトラックが入ってくる。
同じようにドアが開けられ、運転手も慣れた手つきだ。
合計3台には、カメ肉が積まれ。残り2台にクモ肉が積まれた。
「これが、仮契約書になります」
俺が受け取り、読んで那須さんに渡すと。那須さんは細かいところまで読みうなずいた。
俺はその仮契約書に、サインをして渡す。
「それではこの滝川が残り、詳しく説明します。滝川、頼むぞ」
「支部長、お任せ下さい」
支部長と女性が乗り込むと、車は走り出した。
事務所に戻ると、滝川さんを座らせて対面に那須さんが座る。
「滝川さん、ウチの那須が話を聞きますのでよろしく」
そこに、那須さんの娘さん中学1年生のシズちゃんがお茶を持ってきた。
那須さんは、若い頃に出産してシングルマザーとして、苦労をしてきたらしい。
娘さんは学校帰りに、ここに来て18時に一緒に帰ってゆくのが日課。
なので色々と、ここの事業にも参加させて給料もアップしている。
明日には、2名の女性と1名の男性が部下として入ってくる。
なので肩書きは、取引きを総括する部長。
探索クランになると、指定された会社と直接取引ができる。
魔物の肉も多くが、市場に流れてゆく。
俺のカメ肉とクモ肉は、珍味として人気が急上昇。
市場で高く取引きがされている。
肉の珍味が良い程、鮮度が大事で亜空間内ではその時間が止まる。
魔物の肉を扱っている会社は、本当は魔術士(亜空間魔法)を雇いたいがそれは禁止されている。
ダンジョンから大量の素材を確保する為にも、政府とギルドがそれを許さなかった。
冷凍は駄目で、味が落ちてしまう。なので冷蔵で運ばれるが3日以降、味が落ちてゆき価格も下がる。
それは、珍味と言われている物だけであり。
普通に上手い魔物の肉は、牛肉や豚肉と同じように運搬され消費されている。
今では魔物の肉は、日本の消費の半分を占めるようになり。
安い肉として、2階層のキラーラビットの肉が市場に出ている。
脂肪が少なく、美味しいと女性からの好評価である。
2階層なら、恩恵を受けれなかった人でも、注意していれば討伐できる。
そんな人達はエスと呼ばれ、もちろん探索カードを所持している。
なぜそう呼ばれるのか、今では分からなくなっている。
ここ土海ダンジョンでも、3階層までなら頻繁にエスを見かける。
俺はシャワーを浴びた後に、再度ダンジョン挑んだ。
9階層の階段の前で、深呼吸をして慎重に階段を下りてゆく。
10階層の魔物は1体しか居ない。
レア魔物で、強い魔物で有名である。通路も1本道でゆっくりと進む。
遠くに見える奥に、それは居た。
大きな人型で頭に2本の角を生やし、肌は赤く昔話に出てくる赤鬼である。
その赤鬼が俺を睨んだ、俺は恐怖を感じ瞬間移動を発動。
それは、1秒にもみたない時間で赤鬼はすぐそこまで来ていた。
拳で殴られる瞬間に、移動することができた。
5階層のいつもの場所に俺は居た。足は震え、全身に汗がふきだしている。
俺は緊張感が解けて、座り込んでしまった。
「師匠、いつ来たんですか」
そこにはユウが、弓矢を作っている最中であった。
「お前、ここで何をしている」
「何を変な事を聞くんですか、弓矢を作っているでしょ」
「作業場で作れば良いだろう」
「ここで作ると、集中できるから来てたんです。師匠、顔が青いですよ」
「そうか、俺は地上に戻るから頑張れよ」
「はい、頑張ります」
俺は重い足取りで、歩き出した。
屋上の風呂に入り、ゆっくりと浸かっている。
その間、俺は考え続けた。冷静に考えれば、反撃らしい事もせずただ逃げていた。
それは恐怖が俺にそうさせたが、その恐怖は今はない。
それが不思議で仕方がなかった。赤鬼に睨まれるまで恐くなかった。
もしかすると赤鬼の、スキルか魔法かもしれない。
それが赤鬼の、最大の武器なのかもしれない。その恐怖で動きを鈍らせる。
瞬間移動がなければ、動けない俺は格好の的でしかなかった。
今の俺は、その事に怒りを感じている。
自分自身の弱い精神に、同じ事は繰り返したくない。
じっくりと対策を、ここで考え続けた。
もどかしく、着替え終わった俺は準備万端で9階層の階段前へ瞬間移動をする。
階段を下りてゆき、進んでゆくとかすかに見えてきた。
俺は眼に力を入れてゆく、暗黒騎士の魔眼の発動。
これで相手の、スキルや魔法の発動がいち早く分かる。
右手の黒刀にも、魔力を溜め込む。
じわじわと進み、赤鬼がこちらに気が付き顔を向ける。
赤鬼の全身に魔力が駆け巡る、そして睨んだ。
その動作に合わせて、俺も動いていた。
左に持った平ザル、前方にぶちまける。沢山の赤玉が通路に広がり。
右手の黒刀が振られ、一つの黒い斬撃となって通路を走る。
爆発が5メートル先で、連続的に爆発。
その爆発を斬り裂く、黒い斬撃。
そこで俺は凄い痛みが2度、体を駆け巡った。
「ランクが2度も上がったのか」
爆発跡にゆくと、宝箱があった。そこからスクロールを取り出し開いた。
頭にイメージが入ってきた。
1つは相手に恐怖を与え、動けなくする能力で1ランク上にも通じるものであった。
もう1つは、体の身体能力を一時的に2倍にする能力である。
2倍にする能力だけが、付与できるみたいだ。
そのまま、屋上の風呂場へ瞬間移動する。
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