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本当の力

「まさかホントにあの化け物を倒せるなんて…」

そう驚愕しているのは有紗だ。

「安心しているところ悪いが気を抜くなよ。」

「どういうこと?」

そう問いかけるのは小動物を彷彿させる見た目をしている綾音だ。

「ずっと疑問に思ってたことがあるんだ。」

そう。この演習が始まってからおかしなところが一つ確かにあった。

だが、皆冷静な思考が取れず忘れていた。

「何を疑問に思ってたの?」

そう問いかける有紗。

「演習の説明を受けていたときにずっと気になっていることがあった。何故グループ演習のはずなのにバラバラに演習場に送り込まれたのか。」

先週グループを決めさせていたのにも関わらずまるで意味のないような演習内容になっている。

「確かに…でもなんでじゃあグループを組ませたんだろう?」

結局皆バラバラに送り込まれたのならグループを決めた意味がない。明らかな矛盾。

「ここからは俺の憶測だが、この演習は本来グループで行うはずの演習だった。」

「え?どういうこと?」

意味がわからんと言いたげに有紗が疑問を投げかける。

「ずっとおかしいと思っていたんだが、俺たちよりも上の学年は入学以降人数は1割程度しか減ってないんだよ。」

ここで新たな疑問が生じる。

「この様な演習を一年の間で何回もしているはずの上の学年の人達がその程度しか減ってないのはおかしいんだよ。明らかに8割は減っていてもおかしくないし、戦闘向きの人間じゃなきゃまず生き残れない。」

それなりに強い能力者が揃いも揃って手も足もでない様な化け物を何百体も相手しているとしたら生きている方が奇跡だ。

「たまたま非常に強い能力者ばかりがいるって可能性もあるが現実的ではない。そしてグループではない演習…」

有紗は置いておき、ここまでいくと何を言いたいか分かる綾音。

「まさか…」

「あぁ…恐らくこのサバイバル演習は今までと全く違う内容になっている。」

そこでやっと理解した有紗。

「で、でもそれならなんでグループを組ませたの?」

わざわざ内容変更するならグループ決めをする必要はない。

「考えられる可能性は一つだけある。」

このような矛盾を学校側がただのミスで取ってしまうわけがない。

能力者の能力を制御し、教師が仮に生徒に反逆されても対抗できるように能力者の教師ばかりを集めるような徹底した学校がこんな初歩的なミスをするとは到底考えられない。

だとしたら…可能性は…

「急遽内容変更を必要とする問題が発生した。問題に関してはまだわからないが。」

「それなら確かに今の状況の説明がつくね。」

納得した綾音となんとなく納得した有紗。

(まぁ問題の検討はついている。だがまさかこんなクソみてェーな方法を使ってくるとはな。)

「取り敢えず安全を保つために拠点を作り、みんなの手を借りて鉄壁の砦を作ろう。戦っても勝つのは無理でもこれだけの能力者がいれば食い止めるくらいはできるかも知れない。そのためにも…」

言葉が詰まった。出した案がダメだった訳ではない。ただ思考が停止した。見てしまったから…

炎を生み出し操る能力を持つ中島の顔を。

顔を見ただけで思考が停止してしまうほど命輝は中島と仲は深くない。

では何故思考が停止したのか…

理由は簡単だ。無いのだ。首から下が。

そして、見えてしまったその頭をボールのようにして遊ぶ小さな犬の姿が。

「ま、まずい!今すぐ逃げるぞ!」

咄嗟の事に動きが遅れた綾音の右腕が肘からごっそり消えてしまっている。

「あっ…」

痛みが遅れてやってくる。

「うっ…!!」

あまりの痛みに声もでない。

「綾音ちゃん!!!!」

能力を使い綾音を担ぎ全速力で逃げようとする有紗。

しかし…

「えっ…?」

何故か綾音ではなく地面に向かって倒れてしまった。

そして下半身を恐る恐る見てみると…

失くなっている。腰から下が!

見間違えではない。

「うそ…」

「チッこのクソイヌとんでもねェ速さだ!」

「ィ…タ…ィ…イ…タィよぉ…」

(今まで見てきた化け物の中でも間違いなく一番強い!)

犬は可愛い顔をしてこちらを見てくる。

しかし、そこに一切の愛着なんて持てない。

むしろ恐ろしく見えてくる。

(やるしかないのか?瀕死とは言えど見られているこの状況で…)

その瞬間犬が消えた。

(まずい!)

咄嗟に体を動かす。

かろうじて致命傷は避けたものの左腕の骨が折れてしまった。

「クソ!なりふり構っていられねェだろ!」

能力を使う。

異能の力なら触れただけで消せる力。

だがこの能力は猪の様な化け物に使ったとき動きを触れて止めた後に消している。

異能の力だけを消すならそんな芸当はできない。

「チッ!やってやるよォ!かかってこい!」

そういい放ち、折れた左腕を能力を使って治す。

そして…

犬の様な化け物を跡形をなく消した。

「はぁ…はぁ…」

(綾音、有紗。)

綾音はまだかろうじて生きているが有紗は出血がひどくもう冷たくなっている。

(有紗…)

「め、命輝君は助かったんだね…」

「綾音!」

「おねがい…生きて…生きて幸せな人生を掴んで…私たち見たいな人が幸せになれる希望を作って…これは私の夢でもあるから…命輝君ならできる気がするから…だかr」

命輝が腕を伸ばし言葉を制す。

「悪いが綾音の夢は俺は叶えない。」

少しだけショック受けたかのように体が動く綾音。

「その夢は綾音自信が叶えるべきだ。」

「でも!」

そこで気づく。

何故か急に体が軽くなっていることに。

「あれ?」

右腕がある。

消えたはずの右腕が!

「どういうこと?」

理解が追い付かない。

「言っただろ?それは綾音が叶えろって。」

「命輝君はいったい…いやそう言うことね。」

「バレたか。まぁ俺が今からすることが見えてるんだもんな。そりゃバレるか。」

そう言い有紗の方に近づく。

「有紗…まだお前を終わらせるつもりはないよ。」

そして有紗に触れる。

その瞬間失くなってるはずの下半身がまるで何事も無かったかのように元通りになった。

そして…

「ん…あれ?」

「有紗ちゃん!」

復活した有紗に思いっきり抱きつく綾音。

「もうダメかと思った!もう会えないと思った!うわぁぁぁ!」




「面白いものが見れたな」

「彼の能力は本当に素晴らしいね!」

「この演習をやった価値は十分にあったな。」

「そうだね!で?どうするの?」

「演習はこれで終わりにするか。これだけの成果が集まれば十分だ。」

「了解!じゃあ私の可愛いペットは消しておくね。」

「あぁ…」

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