再開
『覚悟しろよォ?こいつを作った能力者ァ…必ず見つけ出し…殺してやるよ!』
「おーおー怖いねぇー。」
命輝の様子を楽しそうに伺っている奴がいた。
「これは私殺されちゃうかも!テヘッ!」
「うるさいぞ高峰。だが良いものが見れたな。」
不適な笑みを浮かべる。
「それにしても酷いよねー。本来サバイバル演習は命に関わるほど危険な演習じゃあ無いはずだよー。まさか神藤の能力見たさにこんな危険な演習を用意するなんてサイコパスだね!」
「あいつが能力を使う場を無理矢理にでも作る必要があっただけさ。それに神藤以外の新入生は使い捨ての駒でしかない。ここで死のうが構わない。」
「やっぱサイコパスじゃん!静なんて人畜無害そうな名前しときながら中身はまっくろ!」
「なんとでも言え。われわれが生き残るためには必要なことだ。」
「綾音!…綾音!」
聞き覚えのある声が聞こえる。
それはどこか安心してしまう声。
「起きろ!綾音!」
(おきる…?私は死んだはずじゃ…)
いまいち状況がつかめない。
なにが起こっているのか?そんな疑問が浮かんでいるが上手く頭が回らない。
「わ…た…し…は?」
「綾音。」
声の主の方向を見る。
そこにいたのは目付きの悪い男の子だった。
「大丈夫か?」
「命輝君…?」
「あぁー命輝君ですよー。これ何回やるんだ?」
「うっ…うわぁぁぁん。」
声の主が命輝だとわかった瞬間、何かがこみ上げてきた。これは安堵の気持ちなのか感謝の気持ちなのか。
「死んだと思った…もう会えないと思った。」
「綾音ちゃん大丈夫?」
この声はあの時自分と一緒に死んだと思った大切な友達の声だ。
「有紗ちゃん!無事だったの?」
「それはこっちの台詞よ。よかったよー!」
思いっきり抱きつく。もう離れないように強く。
「感動の再開の所悪いが、演習はまだ始まったばかりだ。気持ちを切り替えないとこの先生き残れないぞ。」
まだ安心はできない。
演習が始まってまだ40分ほどしか経ってない。感動の再開に浸っている余裕はないのだ。
「そうだね。ここで生き残らないと。」
「う、うん!」
二人とも現実を思いだし、気を引き締め直す。
「ここから先は3人で行動する。化け物とは戦闘を避けたい。綾音の能力が頼りだ。」
「頼りにしてるよ綾音ちゃん。」
二人とも本気で綾音を頼っている。それが伝わったのか綾音は不安そうな顔つきになる。
「大丈夫。」
その綾音の頭をポンと叩き命輝は言った。
「綾音ならできるさ。俺たちを助けてくれ。」
不安がどこかへ吹き飛ぶ。
「うん!任せて!」
ここからが本番だ。
「ふん!猛獣なんて俺様にかかれば一撃だぜ!なんなら大量にぶっ殺してみんなをビビらせてやるか!」
威勢のいいこのバカ野郎は中島だ。
「さてと…おーい!出てきやがれ!!俺様が相手になってやるからよ!」
ザザッと後ろから音が聞こえる。
「フッお出ましか。さぁやろうz…」
言葉を失った。
そこにいたのは…
「なんだこのちっこい犬は?」
体長が50cm程度の小さい犬だった。
「迷い混んだのか?」
犬はこちらをじっと見てくる。
「ほらほら、ここは危ないから出ていった。」
「ワン!」
「ワンじゃねーよ。全く仕方ねぇー。」
そう言いながら犬を抱き抱えようと両手を伸ばした瞬間だった。
届かない。肘から先がごっそりなくなっている。
「は…?」
犬の方を見るとそこにはなくなった腕と思われるグロテスクな物を咥えていた。
「アァァァァァァァ!!!」
(まさかこのちっこい犬がやったって言うのか?)
立ち上がろうとするが両手がないため上手く立ち上がれない。
「冗談じゃねぇーぞ!こんな!こんなやつに俺は…」
「ワン!」
ぐちゃぐちゃとグロテスクな音が響く。
そして、帰り血まみれの犬は何処かえ消えていった。