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死別

木の影に隠れうずくまった状態で今にも泣き出しそうな女の子がいた。

大体誰か予想はつくが綾音だ。

「ど、どうしよう!?未来視で見ちゃったけど猛獣ってライオンとか熊とかじゃないんだ…」

そう、演習場にいるのは体長7mはある化け物だ。

(見つかったら死ぬ…)

あまりの恐怖に体が動かない。

(だれか助けて!)

その時だった。

「綾音か?」

その声の主は…

「有紗ちゃん!」

有紗の顔を見るなり、思いっきり飛びかかった。

「うわぁぁぁん!怖かったよー!」

綾音の頭を右手で撫でながら、左手で体を抱き締める。

「よかった…本当によかった…」

有紗も綾音が心配だったのだ。

「取り敢えず綾音と合流できた。あとは、命輝君を見つけないと。」

直ぐに動こうとする有紗はこれっぽっちも恐怖なんて感じてなかった。

(すごいな有紗ちゃん。私には真似できないや。)

勇気を振り絞り立ち上がろうとしていた時だった。

背筋が凍るような寒気を感じた。

後ろに何かいる。

わからないけどこれはやばいと咄嗟に判断し後ろを恐る恐る振り返った。

そこにいたのは体長が10mはある猪の様な化け物だった。

「あ…あり…あ…さ…」

声が上手くでない。

便りの有紗に助けを乞おうとするが恐怖で支配された体は自分の思うようには動かない。

そして視点だけを有紗へ向ける。

そして思いしる羽目になった。

有紗は恐怖のあまりに動けなくなっていた。

綾音は忘れていた。

有紗が猛獣の存在をまだ知らなかったことに。

だからあれほど勇気のあるような行動が取れていたことに。

そして自分の能力を恐怖のあまりに使うことを忘れていたことに。

(私のせいだ…私が有紗ちゃんになんでも頼って、自分の事を自分でやらなかったから…)

後悔してももう遅い。

猛獣は彼女達に襲いかかる。





そして………





なすすべもなく無惨に殺されてしまった。




「チッ!なんださっきの音?確かこっち方向だよな?」

音のした方に向かう。

命輝はまだ何も知らない。

彼女等がもう殺されていることに。

(恐らく猛獣とやりあったのだろう。だが、一回で終わったってことは恐らく生徒が殺されたな。)

「あいつらじゃなければいいが…」

そして音のしたところにたどり着く。

周りの木が薙ぎ倒されており、地面もえぐれている。

恐らくここで戦いがあったのだろう。

「これじゃあ誰がやられたかわかりづらいな。」

しかしあるものに目が止まった。

有紗と綾音が倒れている。

それもあるものの近くで。

それは体長が10mはある猪の様な化け物だった。

「綾音!有紗!」

返事はない。

あるはずがない。

彼女等はもうとっくに死んでしまっているのだから。

猪の様な化け物は有紗の右腕に噛みついた。

そして教師の言葉を思い出す。

『ここには相当腹を空かした猛獣を百匹程放った。くれぐれも死ぬなよ。』

(食べるきなのか!?)

怒りがわいてくる。

いや、怒りよりも遥かに恐ろしい感情がわいてきている。

「おい…」

小さな声だが力はこもっている。

「お前がやったのか?」

化け物を睨み付けるその目は猛獣よりも獰猛で鋭い怪物の様な目付きだった。

化け物は気圧され少し身を小さくするがすぐに体を向きかえ戦闘体制に入る。

「こいよォ。ぶっ殺してやる!!!」

「フガァァァァ!」

勢いよく突進してくる。

見た目通り猪の様な戦い方だ。

だが、その突進は命輝によって止められた。

それも指先1つで。

「フンガァァ!?」

「なんだよォ…そのふざけた攻撃は?なめてェんのか?」

化け物は全力で押し続けている。しかし、動かない。

たったの指一本で完全に止められている。

「覚悟しろよォ?こいつを作った能力者ァ…必ず見つけ出し…殺してやるよォ!」

そして化け物は跡形もなく消え去った。



「おい!起きろ!おい!」

聞き覚えのある声が聞こえる。

(だ…れ…?)

「おい!有紗!」

「ん……!」

そこにいたのは命輝だった。

「えっ!命輝君!?」

「あぁ、命輝君ですよー。」

(あれ?私はなんで…確か綾音に会ってそれで…化け物に…)

「ハッ!綾音は?綾音は無事なの?」

「無事だよ。そこで寝ている。」

指を指された方を見るとそこには無傷の綾音の姿があった。

(助かったの?)

「何があったのかわからないが取り敢えず無事でよかったよ。」

「猪は!?猪はどうしたの!?」

あいつが近くにいればやばい。

はやく逃げなければ命に関わる。

「あぁーそいつならさっきどっかに行ったぞ?」

「え?」

「てか、そんな事より綾音を起こすぞ。」

まだサバイバル演習が始まって30分。

ここから先が本当の地獄の始まりだった。



「オラァ!!」

手と口を使い肉の壁を引きちぎる。そんなことをしているのは中村一。

体長が20mもあるゴリラのような化け物に食われ、絶体絶命の中能力が覚醒し、胃袋から出ようと抗っていた。

「流石に俺の力じゃこの分厚い壁はなんともできないな。」

化け物の体は丈夫で、体内でも普通の人間の力では全力を出したところで大して引きちぎれない。

(くそ…どうしたらいいんだ?)

いくら死なないとは言え、戦闘能力があるわけではない。仮に脱出で来たとは言え再度食われるのがオチだ。

(てか、このままじゃ俺こいつの糞と一緒に外に出ることになるんじゃないのか?)

嫌な想像をしたせいか胃液の中なのにも関わらず背筋が凍る。

(てか、慣れてしまったからか身体中が痛かったのが嘘かのようになんも感じない。別に感覚が失くなってるわけでもないのに。それどころかあれから体が溶けない。何故だ?)

一の能力は死んだときにしか発動しない。ならばなぜ今胃液の影響を受けないのか?

(消化活動が止まったのか?)

消化は常にされているわけではない。だが、胃液自体は強酸物質。触れていれば勝手に溶けてくるはずだ。

(こんなことなら消化について勉強しておけば良かった。)

何故溶けないのか一には知識がないためわからない。だが、これはチャンスだ。ここから脱出する方法を探る。

(確か胃液って心臓とかと結構近いところにあるんじゃなかったっけ?)

ゴリラの体の構造は人間と似ている。それならば心臓の位置はある程度予想がつく。だが、これはゴリラのような化け物であってゴリラではない。だがやらないよりかはマシだ。上手く心臓にダメージを与えられたらこんな化け物とは言えど殺せるはず。

(やるだけやってみるか。まぁ胃袋から出られなかったらどのみち無理な話だが。)

一はまず胃袋の出方を探った。

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