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能力

「そう言えば、君の能力ってなんなのか聞いてなかったね。」

そう言うのは小鳥遊有紗。

俺と班を組んでくれた元気な女の子だ。

「俺のもそうだが、お前たちの能力も俺は知らないんでね。できれば教えてもらいたい。」

「言葉使いがとても友達にやるものじゃ無いね。」

(なんか変だったか?)

「まあ私の能力はシンプルで身体能力を強化する能力だよ。」

「大体どれくらい強化されるの?」

「まあ20倍くらいかな?」

(結構強いな…)

だが味方が強いのは頼りになる。

その上単純な戦力だからこそ作戦の幅が広がる。

「綾音はどんな能力を持ってるの?」

「わ、わたしはその…」

その先がなかなか出てこない。

「綾音はね〜すごい能力持ってるんだよ!」

「へぇ〜どんな能力?」

「少し先の未来を見ることができます。」

(思ったよりすごいな…)

「どれくらい先までみえるの?」

この能力はどこまで見えるかによって作戦の幅が広がる。

それに未来が見えるなんて世界にあるどの兵器よりも恐ろしい力と言える。

「全然凄くないです…見えるのは10分先までで全然凄くないです。」

余程自信がないのか2回言った。

(10分か…)

「10分先まで見えるなら奇襲とかの心配はまずないな。それに逃げる際にも非常に役に立つ。お前の能力はおそらくだが、核兵器以上の力を秘めていると言っても過言ではないな。」

「そ、そんな大したことないですよ!」

(どんだけ自分に自信ないんだよ…)

「あらゆる事態に事前に対処出来る時点でチート級だよ」

「わたしよりも命輝君の能力の話をしてください!」

何故か頬が赤くなっている。

怒っているのか、照れているのか。

「あー俺は…」

ガラガラガラ

扉が開く。

そこに立っていたのは幻燈静、このクラスの担任だ。

「まだいたのか?。さっき決めた班だが、無事全員審査は通った。来週に向けて班員との連携や訓練を積んでおくように。それと次の授業は実践形式の演習だろ?そんなのんびりしていては死ぬぞ。」

「死ぬ」そんな非現実的に聞こえる言葉を教師が言った。

いや死ぬ事は非現実的ではなく現実なのだ。

だが、日頃から死と隣り合わせの環境では生きてなく、死なんて自分とは関係ないとそんな気持ちで生きてたからだろうか、それを教師が言った事で初めて自覚する。

自分たちが一体どのような環境にいるのかを。

「早くグラウンド行こっか。」

そんな風に優しく声をかけるのは有紗だ。

恐らく俺ではなく綾音を安心させるためだろう。

「うん…」

綾音は明らかに怯えている。

だが仕方ない。

死ぬなんて言われたらそんな風になるのもおかしなことではない。

俺は重たそうに足を上げながら歩く綾音の後ろをついて行った。



うちの学校は実際の戦闘に向けて訓練を日々行うらしい。

そのため演習場は広いと聞いていたが…

「今から実践形式の演習を行う。貴様らにはここで3時間の間過ごしてもらう。中へはテレポートの能力で飛ばす。言っておくが故意的でなければ死んでも事故と済まされるからな。ここの演習場は53250坪もある。くれぐれも迷子になるなよ。」

広すぎだろ…

側にいる細身の男性がテレポート使いか…

「ここには相当腹を空かした猛獣を百匹程放った。くれぐれも死ぬなよ。」

(死なせない気ないだろ…)

30人に対して100匹はアンバランスにも程がある。

(まあこれぐらいで死ぬなら元より要らないということか。)

綾音は未来視があるから3時間くらい余裕で逃げられるだろう。

有紗は勝てなかったとしても走って逃げればそうそう捕まらない。

(まあ気にする必要はないか。)

次から次へと中へ入れられていく。

「後はお前だ」

「はいはい」

「楽しみにしてるぞ」

「あんたが思っているような事は起きねェーよ」

そうして命輝も演習場の中に入った。



「たく、演習場って言ってるがなんかジャングルっぽいな。めんどくせぇ。なによりもみんなバラバラの位置に飛ばされているからフォローし合えないのは痛いな。」

53250坪に30名。

3時間以内で会えるかはわからないが、確率が低いことだけはわかる。

(まあこれなら能力使っても大丈夫か…)

そう思っていた瞬間

右横からいきなり何かが飛びかかってきた。

(チッいきなり来やがったか!)

「な!?」

そこにいたのは体長は7mを超えるのではないかという大きさのライオンの様な化け物だった。

(なんだあいつ見たことないぞ!?いやそもそもあれはこの世の生き物か?)

現実にこんな奴がいたらニュースとかにでも取り上げられているはずだ。

ならば…

(人工猛獣か…)

自然上の生き物ではないなら恐らく誰かの能力によって作られたものだろう。

その上このような大きさなのにも関わらず命輝に気づかれることなく近づいてきた。狩りの性能が非常に高いと言うことなのだろう。

猛獣は勢いよくこちらに襲いかかってくる。

それもとてつもない速度で。

「チッ」

突進をかろうじて避けて体勢を立て直す。

「舐めてんじャねェー!」

拳を勢いよくぶつける。

その瞬間7mもの巨体を持つ猛獣は跡形もなく消え去った。

「危ねぇーだろうが。だがまあなんとかなったな。」

しかし落ち着いてはいられない。

(あんな化け物がいるなら他の奴らは大丈夫なのか?)

さっきの突進の跡を見る。


地面が抉れていた。


(当たっていたら死んでたな。)

恐らく時速500km/hはでていた。

見つかるかはわからないが綾音と有紗を探す。そうしなければ死んでしまう。

俺はどこにいるかもわからない2人を探して走り出した。



「く、くるな!」

そこには命輝のクラスメイトである1人の男がいた。

彼の名は中村一なかむらはじめ

見た目はどこにでもいる普通の高校生の様な見た目をしており、非常に影が薄い。

(なんなんだよあれは!)

中村は演習開始直後に化け物の前に転送されてしまい、今は逃走中だ。

(あいつ体が大きいせいで俺を見失いやすいから今までなんとか逃げ切れたけどもう無理だ。)

演習が始まり10分が経過。その間ずっと全力で逃げ回っているが故に体力の限界が来てしまう。

だが、走ってるうちに大きな茂みを見つけた。

(あそこの茂みで身を隠そう!)

そう思い、方向転換したときだった。

「あ…あ…あぁぁぁぁぁぁ!」

目の前に体長が8mはある熊のような化け物が道をふさいだ。

(嘘だろ…あいつ別の…!)

ドンっと後ろから大きな足音が聞こえた。

(追いつかれた…!)

そこには体長が20mもあるゴリラの様な化け物が立っていた

絶体絶命。

理不尽な死の一歩手前に立たされた人間はいったいどういう行動をとるのか、答えは簡単だ。無駄とわかっていても抗う。

「い、嫌だ!し゛に゛た゛く゛な゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」

必死に逃げる。化け物の速度は優に車を越える。逃げられるわけがない。呆気なくゴリラの様な化け物に捕まえられる。

「うわぁぁぁぁ!くそったれぇぇぇぇぇ!」

その瞬間頭に今までの記憶が流れてくる。

(これは走馬灯か?そっか…やっぱり死ぬんだ俺…なんもできないまま無駄に。)

見える記憶の中身は一つ一つが自分の思い通りに進まなかった出来事ばかりだ。

(そう言えばそうだったな、良く良く考えてみれば理不尽な目にしかあってないのか俺…)

絶望する。最後に見る走馬灯でさえ地獄を見るはめになる。

(能力は持っていても何の能力かもわからないし、スキャンした結果も能力者がもつ特殊な周波数は持つみたいだが結局何もわからずしまい。そのくせ能力があるから無理やり入学。ほんと…なんで死ななきゃいけないんだ…俺…)

化け物の口に運ばれる。死の時間が来たようだ。

「くそつまんねぇ人生だったぜ。」

そして、そのまま体を噛み砕かれてしまった。

人生の終わり…その瞬間まで理不尽を突きつけられた。忌々しい運命だ。



「あ゛ぁ゛!」

声が出る。息もしている。心臓が動いてる。

(なんで俺生きて…)

「…!」

腕がある。足もある。それも傷一つない。

「いったい何が…」

だが急に体が熱くなる。

「あつ!」

それもそうだ。中村は食べられた。つまり今いるところは化け物の胃袋だ。

(折角無事なのにこのままだとまた死んでしまう!)

だが周りを見渡しても何もない。助かる方法は何かないのか。

何かないかと手を伸ばそうとしてみるその時だった。

右腕の3割りほどが溶けている。

(う、腕が!溶けるにしても早すぎじゃないか!?)

少し前に食べられた上に普通の胃液なら人間の腕を溶かすのにかかる時間は1時間以上はいる。

本来胃の消化速度は平均2~3時間程かけて消化しきる。

だが、それは普通ならばだ。

相手は人工生物そんな常識は通用しない。

意識が遠くなる。

(くそ…結局死ぬのかよ…)



「…!」

飛び起きるどうやらまだ生きていたみたいだ。

(いったい何が?)

そう思い自分の体を確認する。

「あれ?右腕がある?」

溶けてしまったはずの腕が治っている。

「ハハっ…そうか…そう言うことか…」

男は1人胃袋の中だと言うのに笑っていた。

(これが俺の能力か!)

「じゃあ早速確認がてら試してみるか!」

そう言い男は自分の舌を噛み千切った。




「…!」

だがまた中村は起き上がる。

(やはりな…俺の能力は死んだときに発動する復活能力!)

復活能力…自分が死んだときにしか効果を発揮しないため今までの気づくことの出来なかった能力。

「これならなんとかなる!演習は3時間耐えきってやるよ!」

もう一度言うがこの男はどこにでもいる普通の高校生だ。

だが、その男は胃袋の中だと言うのに笑っていた。

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