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ショタ神の説明するのも面倒臭い  作者: ネオ・ブリザード
第一章 第五節 異世界転生特別措置法 (三人称)
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第二十二話


「では……私はそろそろ失礼させて頂きますよ。伝える事も伝えましたしね」


「……ま……待て……」




 右腕を押さえ、両ひざをつきながらも、力強く上体を起こすショタ神。弱々しくも、懸命に声を発する。




「いちど生を終えた人間が……業を背負った生命が……それを断ち切らず新世界に旅立つ……それがその生命において……どんな結果を招くか……お前でも分かってるだろう……」



 その言葉に赭神あかがみは、背を向けたまま、振り向く事なく両腕を広げ、言葉を返す。



「……本当にあなたは頭が固いですねぇ……。前世の記憶がどうとか言ったかと思えば、今度は業だの言い出して……古いんですよ。そういうの」


「……古い……だと……!?」



 驚きの表情を見せるショタ神に、赭神は覗き込むようにその顔を振り向かせる。



「それよりも、良いんですか? あなたが待っているという次の死者が、もうすぐここにやって来ますよ?」


「なん……だと……?」


「精々、面倒臭い仕事に精を出して下さいね……」



 赭神はそう言うと、頭の黒帽子に手を添え、ショタ神から遠退くように歩き始める。



「ま……待て……赭神……! まだ話は終わって無いぞ……!」



 離れていくその黒い背中に、必死に叫び続けるショタ神。



「赭神……赭神いいぃぃーー!!」



 だが、その叫びもむなしく、赭神は黒ずくめの身体を粒子状に変え、その場から消え去った。



「……くそ……」



 地面に両手を突き、四つん這いになりながら悔しそうに声を出すショタ神……。そこに……どこか申し訳なさそうな声が聞こえてくる。



「……あんのぉ」



 咄嗟に顔を上げ、声のする方へ振り向くショタ神。そこには、50代位の男性が一人、ぽつんと正座していた。



「だ……大丈夫だか……? なんか、あったんだか……?」



 とても心配そうにショタ神に話かけてくる男性……ショタ神は、乱れた髪と衣服を両手で軽く整えると、ゆっくりと立ち上がる。



「あ……ああ……大丈夫だ。それよりもあなたは……そうか……本来は、奴のあとにくるはずだった『運天うんてん擦造するぞう』か……」


「奴のあと……?」


「いや、何でもない……」



 赭神の事を胸の内にしまいながら、なんとか本来の仕事に戻ろうとするショタ神。いつもの様にいつもの言葉を発しようと口を開いたその時だった。



「……あ……あのぉ……」



 運天擦造は、作業着の胸ポケットに手をいれると、ふたつ折の白い紙を取り出し、それをおずおずとショタ神の前に差し出した。



「……なんだ、それ?」


「おらも良くわかんねぇけども、なんか、ここに来たらこれを出さなきゃいけねぇような気がしたんだぁ……」


「……なんだと……?」




 ショタ神は、運天擦造が出したその白いふたつ折の紙を、おそるおそる手に取る。



「……これは一体……?」



 少しの間、白い紙をまじまじと見つめるショタ神。警戒心を強めながらゆっくりと中を開き、内容を確認する。



 ……次の瞬間……ショタ神の顔は、驚愕のあまり硬直してしまう。



「……赭神の……やろう……!!」



 その豹変ぶりに、運天擦造は思わず声をかける。



「……あ……あのぉ……どうかしただか……?」


「……安心しろ……お前は天国行きだ……次の生まれ変わり期間も大幅に短縮される……」



 言葉の意味がいまいち理解出来ない運天擦造は、怒りで肩が打ち震えるショタ神に説明を求める。



「……あ……あのぉ……それって、どういう意味だか? それにおら、すごい罪悪感があるんだけども……天国行きって……」


「五月蝿ぇ! お前は天国行きが確定したんだよ!! 四の五の言わず、黙ってこの門を通りやがれ!!」



 ショタ神はそう言うと、目の前に手をかざし、乱暴に大きな門を出現させる。



「……ええ……でも……」


「五月蝿ぇって言ってんだろ!! 後がつかえてんだ!! さっさと門を通りやがれ!!」



 訳も分からず大きな門の前で二の足を踏む運天擦造を、ショタ神は大声で叫びながら背中を押す。



「……はあ……なんか……申し訳ないけんど……ありがとうごぜぇましたぁ……」



 門の内側……白く輝く世界に押し込まれた運天擦造は、申し訳なさそうお礼を述べる。……だが、その言葉は、今のショタ神にとっては、神経を逆撫でさせるものでしかなかった。



 大きな門は、軋む音を立て扉を閉め始めると、摩擦音を立てながら運天擦造を天国へと導く。一仕事終えた大きな門はまた次の出番まで、その姿を消す。




「……くそが……」




 その場に一人残ったショタ神は、手に持った白い紙をぐしゃりと握り潰すと、今まで溜め込んでいた感情を吐き出す様に、白い紙を一気に破り始める。



「くそが! くそが!!」



 そして細切れになった紙を、怒りを爆発させる様に空中に霧散させた。



「くそがあああぁぁぁあああぁぁぁ!!!」



 あとには、ショタ神が散らせた細切れの紙が、雪のように舞うばかりであった……………………



 ……第五節……おしまい……



 ……きっと、多分……このお話を面白いと思って頂けたなら、ストレートな評価をお願いします。


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