第十七話
「あー面倒臭えぇー……。説明するのも面倒臭えぇー……」
次の瞬間、こちらに背を向け、とても面倒臭そうにへの字にした足で逆の足を掻き、横になっている子供の前に、私は正座していた。
「……あ、あの……」
私は、理由も解らず目の前にいる子供に話かける。
すると、子供は愚痴を言いながらもこちらを振り向いてくれた。
「あー、何で失神したかを説明するのも面倒臭えぇー……」
……その美麗さに一瞬で目を奪われる私……
何て綺麗な幼女なんだろ……
「いや……もおー……自分が神様で、男だって事を説明するのも面倒臭えぇー……」
な……なんだろ、この娘……さっきから、息をするのも面倒臭そうに喋って……は!? 神様!? しかも、男の子!?
「何かもー……絡むのも面倒臭いから、さっさと目の前の門通って、帰ってくんない?」
ショタ神さんは、起き上がることもなく、私の真ん前にある大きな門を指を差す。
……こ、こんな門……さっきまであったかな……?
「……あ、あの……」
私は正座を崩さないように、門の端っこから向こう側を覗き込み、扉の陰にいるショタ神さんに話かけてみる。
「……こ、ここはどこ何ですか……? それに、元の世界って……もしかして、私、死ん……」
「嬉失神しただけだあぁ……このリア充があぁ……」
床にうつ伏せになりながら、とても面倒臭そうに答えてくれるショタ神さん……
え? 嬉失神? 嬉しくて失神? それってどういう事だろ……?
「まだ思い出せないか、このやろう……お前はな、ここに来る前、彼氏に合鍵を渡されて、同棲しないかって言われたんだよ……もう、死ねば良いのに……」
……ああ……
…………ああああ…………
…………ひあああっっ!!…………
私は、あまりの嬉しい出来事に、赤面させた顔を両手で覆い、そのまま地面に踞ってしまう。
「ショタ神さん、何でそんな事知ってるんですかあぁーー!?」
「どうでも良いよ……そんな事……」
「良く無いですよー!!」
とても面倒臭そうに受け答えするショタ神さん。今まで寝そべっていた身体を嫌々起こすと、重い腰を上げる様に立ち上がる。
「もうね、面倒臭いの。色々と。さっさとあっちに帰って彼氏とよろしくやってくれ」
私は恥ずかしさのあまり、こちらにゆっくりと歩んで来るショタ神さんに、泣き叫ぶ様に当たり散らす。
「よろしくやってくれって何ですかあぁーー!?」
「よろしくやってくれは、よろしくやってくれだよ。何だ? 一言一句、正確に言って欲しいのか? 子作りの事とか」
「そ、そういう意味じゃ無くってえぇーー!!」
辺り一面に響き渡る私の叫び声。だけど、泣き叫ぶ私を荷物を扱う様に片手一本で軽々と持ち上げる。
「せえぇーのー……」
「え!? あの!? ショタ神さん!?」
そして遠心力を利用し、目の前の大きな門めがけて私の身体を放り投げる。
「もうちょっと説明をーーー!!!」
私の思いは置き去りに、放り投げられた身体は、白く輝く門の内側に吸い込まれていく……
……なんだか……とても心地好い……
扉をくぐり抜けると、門は摩擦音を立てて、ゆっくりと閉まり出す……
足下に目をやると……そこはどこまでも白く輝く未知の世界……。
それでも……ずうっと下を見ていると、見覚えのある姿が目に飛び込んでくる……
言ちゃんだ!!
床に倒れている私の事を心配してくれている!!
ごめんね、言ちゃん!! 今帰るからね!!
「……お幸せにー」
……第四節、おしまい。
第五節へ続く……




