第十四話
声が消えると、言ちゃんは呻き声を上げ、ゆっくりと瞼を開ける。まるで何処かから戻って来たかのように。
「うわああぁぁん!! 良かったよおぉ! 言ちゃん!! 死んだかと思ったあああぁぁぁぁ!!!!」
私は嬉しさのあまり、泣きじゃくりながら、言ちゃんの身体を感情の赴くままに振り回してしまう。
「ちょっ……揺らさないで……ゆら……ゆ……吐きそ……」
「……ああ! ご、ごめんなさい!!」
い……いけない、いけない。感情が高ぶりすぎて、言ちゃんを振り回しすぎちゃった……
私は右手で涙を拭い、ぐしぐし言いながら、言ちゃんを静かに床に寝かしつける。
「ね、ねぇ……何かあったの? そんなに泣きじゃくって。俺、全然記憶が無いんだけど」
「だってだって! 言ちゃんってば、私がビンタしたら物凄く身体を捻りながら吹っ飛んで、そこの本棚に頭をぶつけて、死んだように倒れちゃうんだもん!!」
驚きながら後頭部を擦る言ちゃん。とっても痛かったのか、一瞬びくっと身体を震わせる。
「私、ものすっごく心配したんだからあああぁぁぁぁ!!!!」
駄目だと分かっていても、私は込み上げてくる感情を抑えきれずに、言ちゃんの胸元を掴み、再び激しく身体を前に後ろに揺さぶってしまう。
「……ちょっ……だか……揺らさないで……中身が……おう……」
「……ご、ごめんなさい……!!」
い……いけない、いけない! 私ってば、また……言ちゃんは頭を打ってるんだから、そっとしてあげないと……
私は、高ぶる感情を懸命に抑えながら、慎重に床に寝せて上げる。
すると、言ちゃんは私の事を心配してくれたのか、目尻をそっと拭い、もう大丈夫だよ、と言ってくれた……
ごめんね……ごめんね、言ちゃん……逆に気を使わせちゃったね……
私の、過呼吸気味だった息も……少しずつ落ちついてきたみたい……
……えへへ
「だからさ……」
「……なに?」
どうしたの? 言ちゃん……?
「早く退いてくれない? 重いから」
次の瞬間、私の神の一手が、言ちゃんの左頬目掛け、飛んでいった。




